インドの列車事故の事例紹介|列車の問題点や乗車する際の注意点も解説

インドでは、国民の交通手段として列車を利用するのが一般的です。都市部では渋滞が酷いため、時間通りに行動するためには列車での移動が必要になるためです。

しかし、インドではたびたび大きな列車事故が発生しているため、観光で訪れる際に利用するのを躊躇してしまう人もいるでしょう。
今回は、インドの列車事故の事例、問題点、列車に乗車する際の注意点について解説します。これからインドを訪れようと考えている人は、参考にしてみてください。

インドで2023年に起きた世界最悪の列車事故

インドの線路

インドの列車事故として一番有名なのは、2023年に起きた列車事故です。世界最悪とまで言われたこの列車事故の詳細と原因について、詳しく解説していきます。

列車脱線事故で295人が死亡

2023年、インド東部オディシャ州バラソール地区で発生した列車事故は、世界中の注目を集める悲惨な出来事となりました。この事故では、295人(当局発表)が命を落とし、さらに1,000人以上の負傷者が出ています。

この事故をきっかけに、インドの鉄道安全基準に対する国内外からの批判が一層高まりました。この事故を受け、インド政府と鉄道当局は安全基準の見直しと、事故防止のための具体的な対策の強化を迫られています。

列車が誤った線路に進入したことが衝突の原因

この世界最悪の列車事故は、特急列車が本線ではないレールに侵入してしまい、止まっていた貨物列車に衝突したことが原因です。脱線した列車は前方から来た列車とも衝突し、被害が拡大しました。

列車が誤ったレールに侵入する理由には、運行管理システムの欠陥、人為的ミス、通信システムの不備などが考えられます。インドでは、鉄道インフラが急速に発展する一方で、安全基準の徹底が追いついていないのが現状です。

補償が受けられない遺族が多いのも問題に

多くの犠牲者を出した世界最悪の列車事故では、遺族が補償の対象外となるケースが問題になっています。その理由は、遺体の損傷や発見ができない場合、本人確認ができないためです。

身元が分かっていない遺体は50体以上あり、残された遺族は深い悲しみと厳しい現実を突きつけられる結果となりました。インドでは、2023年の列車事故の他にもたびたび大きな列車事故が発生しているため、国内外からの非難が大きくなっています。

インドで起きた過去の列車事故の事例

インドの駅

過去にインドで起きた列車事故の事例の中から、以下の事例をピックアップしました。

  • 1981年のアジア史上最悪の列車事故
  • 1995年フィロザバード列車事故
  • 1999年西ベンガル州ガイサルの駅の衝突事故
  • 2016年ウッタルプラデシュ州の特急列車脱線事故

それぞれの列車事故の詳細について解説していきます。

1981年のアジア史上最悪の列車事故

1981年6月6日、インドでアジア史上最悪の列車事故が発生しました。事故が起きたのはビハール州東部、鉄橋を走行中だった列車がサイクロンに煽られて脱線してしまいます。

この事故で列車が橋から川に脱線し、800人〜1,000人が亡くなるという悲惨な結果となりました。遺体の多くは川に流されてしまって発見できず、詳しい人数は公表されていません。

この列車脱線事故は、鉄道の安全性を確保するために定期的な橋梁の点検と保守、運行管理システムの強化が不可欠であることを認識させました。

1995年フィロザバード列車事故

1995年8月20日、ウッタル・プラデーシュ州フィロザバードでも列車の衝突事故が発生しています。この事故では305人が亡くなり、344人が負傷しました。

この列車衝突事故の原因は、線路に侵入した牛です。牛と衝突してブレーキが破損した特急列車が、停車中の列車に追突してしまいました。

この事故はフィロザバード列車事故として国内外に広がり、今でも語られています。

1999年西ベンガル州ガイサルの駅の衝突事故

1999年8月2日、西ベンガル州ガイサルの駅で列車同士の衝突事故が発生しました。この事故では285人が死亡し、312人が負傷しています。

この事故は信号システムの誤作動が主な原因とされています。この事故は、国境地域に向かう兵士や公安警察を乗せ満員だったことと、列車の衝突時の衝撃で爆発が起きたことも報じられました。

信号システムの近代化と鉄道職員の適切な教育不足が、悲惨な列車事故の背景にあります。

2016年ウッタルプラデシュ州の特急列車脱線事故

2016年11月20日、ウッタルプラデシュ州で特急列車の脱線事故が発生しました。地元当局の発表では、およそ150人が亡くなり、負傷者も数百人にのぼっています。

初期調査によると、レールの破損が事故の直接的な原因と見られており、インフラの老朽化と保守管理不足が原因だと見られていました。

また、事故当時、切符を購入して乗車した約1,200人の乗客の他に、無賃乗車した人が約500人いた可能性があるとも報道されています。本来の定員を遥かにオーバーした乗客によって、事故の被害は拡大したとも言えるでしょう。

インド鉄道の安全性向上のためには、インフラの継続的な投資と保守、運用管理体制の根本的な見直しと強化が必要です。

インドの列車が抱える問題点

インドの貨物列車

インドの鉄道システムは、国民の生活になくてはならない交通手段ですが、その一方で多くの問題点も抱えています。

  • 牛の線路内への侵入
  • 安全意識の低さ
  • 老朽化するシステム
  • ドアを閉めずに走る列車

特に、ドアを閉めずに列車が走るので毎日落下する乗客がいるのが大きな問題になっています。

牛の線路内への侵入

インドでは、牛やその他の動物が線路内に侵入して列車の運行に深刻な障害をもたらすケースがあります。これは列車の遅延や中断だけでなく、場合によってはフィロザバード列車事故のように脱線事故を引き起こす重大なリスクとなります。

インドでは牛は聖なる存在とされているヒンドゥー教の思想があり、これらの動物を保護するため、また共存するための解決策を見つけることは非常に難しい課題です。線路周辺のフェンスの設置や動物が侵入しにくい設計の考案など、技術的な対策と地域社会との連携が求められています。

安全意識の低さ

インドの列車事故の多くは、乗務員や鉄道会社の安全に対する意識の低さに起因しています。安全な速度維持や信号システムの適切な運用を守るためには、鉄道会社による安全教育の強化や、乗客への意識改革キャンペーンが必要です。

インドでは線路を横断する人が後を絶たず、駅でも駅員が適切な注意をしないという風景も見かけます。日常的に列車と障害物が接触するリスクが高いのも、インドの列車事故が頻発する原因の1つです。

安全な鉄道利用のためのガイドラインの普及や安全に関する情報の提供を積極的に行うことで、事故のリスクを減少させることが急務です。

ドアを開けっ放しで走る列車

インドの列車と言えば、ドアを開けっ放しで走る列車を思い浮かべる人も多いでしょう。ドアを開けっ放しで走る列車は、インドの鉄道システムで安全上の大きな課題です。

列車のドアを開ける理由は、女性の衣類巻き込み防止と定刻発車を優先しているためです。インドでは女性が長いストールや布を身につけるので巻き込み防止は大切ですが、乗客の転落事故や不慮の怪我が発生しています。

地下鉄の整備や列車の近代化が進んでいる現在では、乗客の安全対策をいかに取り入れるかが重要です。

参照:インドの電車はドアが開けっぱなし?チケットの予約方法と注意点も解説

インドの列車を安全に楽しむコツ

インドのプラットフォーム

インドでは、列車を使って全土を観光するのが一般的です。国内外の旅行者にとって列車は、魅力的な建物や文化遺産の多いインドの各地を訪れるために魅力的な移動手段です。

ここでは、インドの長距離列車、中〜短距離列車、そして地下鉄を安全に楽しむためのコツを紹介します。これらのポイントを実践することで、インドの列車旅行をより安全に、そして快適に過ごせるでしょう。

インドの長距離列車編

インドの長距離列車での旅行は、広大な国土を効率的に、かつ経済的に移動するおすすめの方法です。安全かつ快適な旅のためには、以下の点に注意しましょう。

  • 防犯意識
  • ダイヤの乱れ
  • 乗り過ごし
  • 食事

防犯意識

インドの長距離列車を利用する際は、スリや窃盗に注意が必要です。長距離列車にはさまざまなクラスが用意されていて、低価格のクラスでは荷物を盗まれたりスリの被害に遭ったりする確率が高くなります。

車内で荷物を括りつけるチェーンが販売されているため、低価格のクラスを利用する際は必ずチェーンを使うようにしましょう。高いクラスにはインドの富裕層や外国人旅行客が多いので、比較的窃盗やスリのリスクは低くなります。

身を守るためにも、可能な範囲で高いクラスの座席を予約することが大切です。安全に長距離移動を楽しむためには1A、2A、3Aのクラスを利用しましょう。

ダイヤの乱れ

インドの列車は日本のように時間通りに発着しません。なかには、4時間や5時間遅れることもあります。

ダイヤの乱れは高いクラスを予約しても防ぎようがないので、余裕を持ってスケジューリングしておくと慌てずに旅行が楽しめます。

乗り過ごし

インドの長距離列車で気をつけたいのが、乗り過ごしです。インドの長距離列車は駅と駅の距離が離れているので、1駅乗り過ごしてしまうだけでも目的地から大きく離れてしまいます。

乗り過ごしを防止するためには、定期的にアプリで現在地を把握したり現地の人に目的に近づいたら声をかけてもらったりしましょう。インドの列車では日本のようなアナウンスがありません。

長時間列車に乗っていると現在地が分からなくなってしまうので、乗り過ごさないための対策が必要です。

食事

1Aと2Aクラスは食事が提供されるケースが多くなりますが、乗車する列車によって食事が出ないこともあります。長距離列車に乗車する際は、車内で食べられる物を事前に購入しておくと安心です。

3A以下は食事が提供されないケースが多いので、移動距離に応じて必要な分だけ食事を用意しておきましょう。乗車前に駅員に食事が出るかを確認しておくのも効果的です。

参照:インドのおすすめ食べ物TOP10!食事マナーやお腹を壊さないポイントも

インドの中~短距離列車編

インドで中〜短距離列車を利用する際は、混雑を避けるため非ピークタイムの利用が推奨されます。インドは人口が世界一多いので、混雑状況が日本の比ではありません。

また、ドアや通路での無用な立ち止まりは避け、他の乗客との適切な距離を保つことも大切です。乗車中は転落しないように、できるだけ車内の奥に移動しましょう。

夏場に列車を利用する際は、短距離でも水分を持参しておくと安心です。インドの夏は日本よりも暑いので、常に水分補給には気を配ってください。

インドの地下鉄編

デリー、カルカッタ、バンガロールなどのインドの主要都市では、地下鉄が利用できます。地下鉄を利用する際は、乗車前に必ず路線図を確認し、目的地までの最適なルートを把握しておくことが大切です。

インドの地下鉄を利用する際は、乗り過ごしとスリに注意しましょう。インドの地下鉄は比較的近代的ですが、アナウンスがない場合があるためです。

また、混雑時はスリが発生しやすくなるので、荷物の管理を徹底しましょう。夜になると車内だけでなく駅の治安も悪くなるので、夜間の地下鉄利用は控えた方が無難です。

インドの列車に乗車する方法

プラットフォームで話すインド人

インドの列車システムは他の国々とは異なる特徴を持っており、初めて利用する旅行者にとってはやや複雑に感じることもあります。インドでの列車の乗車方法について、具体的な手順を解説します。

電光掲示板で列車の確認

インドの主要な駅では、電光掲示板で列車の時刻、番線、遅延情報などがリアルタイムで提供されています。駅に到着したら、最初にこの電光掲示板を確認しましょう。

ここでは、自分が乗車予定の列車の最新情報が表示されており、どのプラットフォームから出発するのか、予定時刻に遅れがないかなど、重要な情報を確認できます。電光掲示板がない駅の場合は、駅員や周囲の人にプラットフォームを聞くようにしましょう。

インドは人口が多いため、駅が混雑していて目的のプラットフォームを探しにくいのが難点です。プラットフォームが見つからずに乗り過ごしてしまうリスクもあるので、早めに確認を済ませる意識を忘れないでください。

プラットフォームへ移動し列車を探す

インドの駅は広大で複数のプラットフォームがあるため、移動には十分な時間を確保しましょう。列車がプラットフォームに到着した際は、車両番号を確認して目的の列車かどうか確かめます。

目的の列車が来る前に、周囲の人に声をかけて乗車する座席のおおよその位置を確認しておくことも大切です。インドの列車は20車両以上になることもよくあるので、おおよその位置を把握しておかないと座席が見つからないという事態になりかねません。

乗車したら座席番号を探す

列車に乗車したら、チケットに記載されている座席番号を確認し、指定された座席を探します。インドの列車には、事前に指定された座席がある場合と自由席になっている場合があるので、乗車前にどちらかを確認しておくことが重要です。

指定席の場合は、他の乗客との席の取り違えがないように注意しましょう。自由席の場合は、空いている座席を見つけられたらそこに着席します。

まとめ:インドは列車事故の対策が急務となっている

インドの列車の車内

インドでは、今世紀最大の列車事故やアジア最悪の列車事故など、たびたび大きな列車事故が発生しています。安全対策や鉄道システムの近代化など、課題に対応しきれていないのが現状です。

また、インドの列車は混雑状況が酷く、ドアを開けっ放しで走行するのも長年問題視されてきました。列車事故を防ぐためには、鉄道会社だけでなく国民の安全意識の改革とインフラ整備が必要です。

インドの各地を巡るためには列車での移動が一番効率がいいので、列車を楽しむコツや列車に乗車する方法を参考にしてみてください。自分でできる安全対策を万全にして、インド旅行を満喫してみましょう。

参照:【女性必見】インド旅行はやめたほうがいい?やばい理由と治安情報を解説