インドは歴史ある遺跡や施設、地域ごとに異なる文化が魅力的な国です。そんなインドへの旅行ですが、日本とは異なる危険があるのをご存じですか?
インド全土の危険度と、交通・犯罪・自然災害などの危険を解説します。インド旅行を計画する際には、必ず安全への配慮と対策を十分施してから行きましょう。
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インドの危険度と危険地域
多彩な文化と歴史を誇るインドは、訪れる人々を魅了する一方で安全面での注意が欠かせません。広大な国土を持つインドでは、地域ごとに治安状況や危険度が大きく異なります。
外務省の海外安全ホームページを参考に、インド各地の危険度について解説します。
インド全土が危険度レベル1
外務省の海外安全ホームページでは、インド全土が危険度レベル1に指定されています。危険度レベル1は「十分注意」に区分されています。
渡航や観光自体に問題はありませんが、注意を怠らないようにしましょう。
インドでは必要以上に声をかけてくる人もいますが、一切応じない姿勢をとることが大切です。日本とは異なり、自分の身は自分で守る意識を持ち続けてください。
危険度レベル2の地域
インドの中でも中央や東部の一部地域は、外務省の基準で危険度レベル2「不要不急の渡航中止」に指定されています。
中・東部諸州では、以下の州の高原奥地や農村地域が該当します。
- アンドラ・プラデシュ州
- テランガナ州
- オディシャ州
- チャッティースガル州
- ジャールカンド州
- ビハール州
北東部諸州では、以下の州が該当します。
- マニプール州
- アッサム州(グワハティ市を除く地域)
- ナガランド州
- メガラヤ州(東カシ・ヒルズ県、リボイ県、西ジャインティア・ヒルズ県、東ジャインティア・ヒルズ県を除く地域)
上記の地域では治安が不安定で、犯罪が発生しやすい状況です。渡航の際は現地の最新情報を確認して判断しましょう。
インドで危険度レベルが最も高い地域
インドの中でも特に危険度が高いとされるのが、ジャンム・カシミール準州およびラダック連邦直轄領です。
これらの地域は、外務省から危険度レベル3「渡航中止勧告」またはレベル4「退避勧告」に指定されています。
この地域はパキスタンとの国境に接しているため、軍事的な緊張が絶えません。両国の間では度々衝突が発生していて、観光客が巻き込まれる可能性があります。
また、ジャンム・カシミール準州およびラダック連邦直轄領ではテロ組織の活動が活発で、観光地や公共施設が攻撃対象になる可能性があります。
観光名所としても知られる地域ですが、安全を確保するのは困難です。
インド政府もこのエリアには特別な注意喚起を行っているので、旅行者は近づかない方が賢明といえます。インドで治安の悪い地域は、以下の記事で詳しく解説しています。
参照:【女性必見】インド旅行はやめたほうがいい?やばい理由と治安情報を解説
インド旅行で危険なポイント5選
インドを訪れる際には、独自の危険がともなう可能性があります。インド旅行中に注意すべき危険なポイントを5つ挙げ、それぞれの対策を解説します。
インドでの食事
インド旅行で発生しやすいトラブルのひとつが「食事に起因する体調不良」です。
まず、インドでは水道水を飲用してはいけません。水道水には細菌やウイルスが含まれるため、旅行者下痢症を引き起こす可能性が高いためです。
氷が使用されている飲み物やジュース、水で洗った生野菜も避けたほうが安全です。
また、インドの食文化は香辛料と油を多用しています。辛さや油が体に合わず胃腸を壊しやすいので食事には気をつけましょう。
インド旅行中は観光地周辺で人気のあるレストランを選び、初めて試す料理は少量から始めるのがおすすめです。
飲み水は必ずボトル入りのものを購入し、封がしっかりと閉じられているか確認してから飲用しましょう。お腹を壊さないポイントは、以下の記事で詳細に解説しています。
参照:インドのおすすめ食べ物TOP10!食事マナーやお腹を壊さないポイントも
屋台のラッシーや生水には要注意です!美味しそうでも衛生状態が異なるため、お腹を壊す原因になることがあります。
インドの危険生物
インドでは野良犬、猿、蚊などの動物に注意が必要です。特に野良犬は噛まれると狂犬病に感染する危険があります。
インドは狂犬病の発生率が世界で最も多いので、野良犬に触れたり近づいたりするのは避けましょう。
猿はインドの観光地や街中で見かけることが多く、食べ物を奪おうとして荷物を引っ張るなど、旅行者にとって危険な存在です。
徒歩での観光中は食べ物を目に見える形で持ち歩かず、猿を刺激しないよう振舞ってください。
また、蚊が媒介するデング熱やマラリアは深刻な病気のひとつです。インドを訪れる際には虫よけスプレーを常に持ち歩き、長袖や長ズボンを着用して蚊の刺咬を防ぎましょう。
特に雨季や蚊が多い地域では虫よけ対策が欠かせません。
インドの野良犬と狂犬病については、以下の記事で詳細に解説しています。
参照:インドの野良犬は狂犬病のリスクがある|予防策と現地での対応を解説
現地では、野良犬は日常の一部といった感覚で共存しているようです。気にしすぎず、必要以上に接触しないようにするのが一番かもしれませんね。
女性特有の事件
女性旅行者がインドを訪れる際、最も気をつけなければならないのは性的被害です。過去には、外国人女性観光客が巻き込まれる事件が複数報告されています。
インド滞在中は服装に細心の注意を払い、肌の露出が少ない服を選びましょう。
また、女性は一人歩きを避け、特に夜間はホテルなどの安全な場所に留まってください。公共交通機関を利用する場合も人が多い時間帯を選ぶと安全です。
インドでは周囲の状況を常に把握し、不審な動きがあれば早めにその場を離れるよう心がけましょう。女性特有の事件や被害については、以下の記事で詳しく解説しています。
参照:インドでレイプ事件が多い原因は?過去の事例と5つの対策についても解説
スリや置き引き
インドの大都市では、観光客を狙ったスリや置き引きの犯罪が頻繁に発生しています。特に混雑したマーケットや観光地で被害に遭いやすいので、移動中は警戒心を忘れないでください。
移動中はバッグを前に抱え、財布や貴重品をポケットに入れないなどの対策も欠かせません。
リュックサックやショルダーバッグは、簡単に開けられないようチャックを閉じ、身体に密着させて持ち歩くと安全です。人気のない場所では立ち止まらず、周囲を観察しながら移動しましょう。
治安の悪いエリアでの宿泊
旅行費用を抑えるために安い宿泊施設を選ぶのは魅力的ですが、安いホテルは治安の悪いエリアに位置していることが多いので危険です。
このようなエリアでは、周囲で強盗や暴力事件が発生するリスクが高まります。
宿泊施設を選ぶ際には、セキュリティがしっかりしているホテルを優先し、女性旅行者の場合は専用フロアがあるホテルを選ぶとより安心です。
事前にホテルの口コミや評判を確認し、信頼できる宿泊施設を選択しましょう。
インドは交通機関にも危険がある
インド国内の移動は、電車やタクシーなどの交通機関を利用する機会が増えます。インドの交通機関は便利な反面、危険な一面もあります。
旅行者が遭遇しやすい交通機関の危険とその対策を覚えておきましょう。
インドの電車はドアが開けっ放し
インドの電車は多くの地域で主要な移動手段となっていますが、その安全性には課題があります。
特に、混雑した電車ではドアを閉めずに走行することが一般的です。ドアを開けたままの走行は乗客が転落する危険性があるので、旅行者はドア付近に立たないようにしましょう。
また、インドの鉄道は等級によって快適さや安全性が異なります。寝台列車などでは、窃盗やスリの被害に遭うケースも多数報告されています。
寝台列車を利用する場合は、貴重品を抱えて眠ったり南京錠と鎖で荷物を柱に固定するなどの対策を取りましょう。
できるだけ上位等級のチケットを購入すると、安全に長距離移動ができます。インドの電車事情や危険性は、以下の記事で詳しく解説しています。
参照:インドの電車はドアが開けっぱなし?チケットの予約方法と注意点も解説
インドのタクシーはぼったくりが多い
インドのタクシーはぼったくり行為が多いので注意しましょう。
路上で呼び止めたタクシーは、メーターを使用せずに料金を交渉制にして、不当な金額を請求するケースが多く見られます。
また、運転手がわざと遠回りして料金を釣り上げることもあります。
このような問題を回避するためには、配車アプリを利用するのがおすすめです。インド国内ではUberやOlaが広く普及しています。
UberやOlaは事前に料金が確定するので、トラブルを防ぎやすいのがメリットです。
配車アプリを使用する際にはピックアップポイントを分かりやすい場所に設定し、到着した車のナンバープレートを確認してから乗車しましょう。
現金支払いを避け、アプリ内決済を利用すると支払いトラブルのリスクを軽減できます。UberやOlaのインストール方法や使い方は、以下の記事で詳細に解説しています。
参照:インドで安全にタクシーに乗るコツ|UberとOlaの使い方も解説
インドは危険な自然災害も多い
インド洋に面しているインドは、サイクロンの発生が多い地域として知られています。特に東海岸を中心に、毎年5月から11月にかけてサイクロンの発生率が高くなります。
この期間中、特に被害を受けやすいのがオリッサ州や西ベンガル州などの地域です。
サイクロンが発生すると、強風や高潮によって交通機関が停止するほか、停電や通信障害も発生しやすくなるので旅行者は移動や連絡が困難になります。
インドを訪れる際は天気予報を確認し、サイクロンの影響を受けやすい時期や地域を避けましょう。サイクロンの特徴や過去の被害は、以下の記事で詳細に解説しています。
参照:インドで起きたサイクロン被害の事例|サイクロンとハリケーンの違いも解説
インド特有の宗教やカースト制度にも配慮が必要
インドは多宗教国家として世界的に有名です。ヒンドゥー教・イスラム教・キリスト教・ジャイナ教シク教・仏教など、さまざまな宗教が共存していて、地域社会や人々の日常生活に深く根付いています。
旅行者としてインドを訪れる際は、現地の宗教や社会的な慣習を理解しておきましょう。
インドの宗教施設を訪れる際の注意点
インドには数多くの宗教施設が点在していて、観光スポットとしても人気があります。宗教施設には独自のルールやマナーが存在するので、訪問する際は宗教的感情と文化を尊重した行動をとりましょう。
たとえば、寺院やモスクに入る際には靴を脱ぐのが一般的です。施設の入り口に専用の棚やスペースが用意されている場合が多いので、見かけたら靴を脱いで入場しましょう。
また、宗教施設の一部では写真撮影が禁止されている場合があります。撮影が可能な場所であっても、宗教儀式や祈りの場面では控えたほうが無難です。
カースト制度の影響
インド社会にはカースト制度と呼ばれる独自の階層構造が古くから存在します。カースト制度は法的には廃止されていますが、地域や社会環境によってはいまだに強い影響を持っています。
旅行者がカースト制度に直接関わる機会は多くありませんが、身分に関する話題に触れる際は配慮しましょう。インドのカースト制度については、以下の記事で詳細に解説しています。
参照:インドのカースト制度とは?進出・経営への影響や他のメリットについても
インド旅行を安全にするためのコツ
インド旅行を安心して楽しむためには、いくつかの対策があります。旅行中の安全を確保するために押さえておきたいポイントを紹介します。
行き先を必ず告げる
旅行中に何らかのトラブルが発生した場合、すぐに対応するためには居場所が欠かせません。
日本にいる家族や友人に、インドでのスケジュールや滞在先の情報を事前に共有しておきましょう。
現地で同行者と別行動を取る場合も同様です。行き先や戻る予定時刻を伝えておくと、万が一連絡が取れなくなった場合でもすぐに捜索を始められます。
現在地を共有できるスマートフォンのアプリを活用して、リアルタイムで位置を確認できるようにするのもおすすめです。
海外保険に入る
インド旅行に行く前に、体調不良や病気に備えて海外保険への加入を済ませておきましょう。旅行中にウイルス性の腹痛や感染症にかかった場合、現地の医療機関を受診する必要が生じるためです。
インドの医療機関は都市部では設備が整っている一方で、治療費が高額になることもあります。
海外保険に加入しておくと診療費や薬代が保険でカバーできるので、金銭面の負担を軽減できます。
また、急な手術や緊急搬送が必要になった際にも保険が適用されると安心です。
保険に加入する際は、盗難やフライトキャンセルなどのトラブルにも対応したプランを選ぶと、より安心できます。インドの医療事情は、以下の記事で詳細に解説しています。
参照:インドの医療レベルは?医療制度と課題・主要都市の医療機関を紹介
インドは危険もあるので旅行前に十分な対策が必要
インドは旅行者にとって魅力的な目的地ですが、安全に対する注意が必要な場面も多々あります。食事や交通、自然災害、治安など、インド特有のリスクを理解して対策を講じましょう。
この記事で紹介したアドバイスを活用して、インド旅行をより安全で充実したものにしてください。