インドの人口増加は勢いが止まらず、ついに中国を抜いて世界最多の人口になりました。人口増加が続くインドでは経済成長が続く半面、雇用や社会保障の整備が急務となっています。
そんな人口増加を続けるインドの人口推移と少子化について解説していきます。
インドの人口は世界最多になった
2023年時点で、インドの人口は中国を抜き世界最多となりました。インドの急激な人口増加は、国際社会や経済界に大きな影響を及ぼしています。
人口増加によって消費市場の拡大と大量の労働力の確保ができるため、今後もインド経済の成長が期待できるでしょう。その一方で、急増した人口を支えるだけの資源や食料の確保や、社会インフラの圧迫が課題となっています。
さらに、人口増加によって、都市部では住宅不足や交通渋滞、ゴミ問題、治安の悪化が起こり対策コストが増加しています。
インド政府はこれらの複雑な問題に対処するために、教育や医療、インフラ整備といった多岐にわたる分野での政策立案と実行に努めています。
インドが成長し続け、世界最多となる人口を最大限に活用するためには、現状の問題解決が必要です。
これまでのインドの人口推移と課題
過去数十年にわたるインドの人口増加の歴史は、規模と速度の両面で注目に値します。特に1990年代以降インドは爆発的な人口増加を遂げ、その速度は中国を上回るほどでした。
2050年にはインドの人口は16億6800万人に達すると予測され、その後緩やかに減少するとみられています。
インドの人口増加の背景には、衛生環境の改善や医療技術の進歩、主食となる米や小麦の自給率の高さが関係しています。衛生環境の改善や医療技術の進歩は、乳幼児の死亡率の低下や寿命の延伸につながっていると考えられています。
しかし、雇用に関しては、若者の失業率の高さや適切な職業訓練の場の少なさが問題です。若者が技術を身につけ仕事に従事するためには、技術を習得するための訓練施設が必要です。
インドの持続可能な発展と社会的均衡を保つために、人口増加によって起こる課題への対応が求められています。
インドの人口増加は経済にどのように影響するか
人口増加が続くインドですが、当然経済にも大きな影響を与えます。
- インドで続く人口ボーナス
- インドでは雇用創出が急務
- 脱中国とインド企業
インドの人口増加と経済への影響について、詳しく解説していきます。
インドで続く人口ボーナス
インドの人口増加によって若者の労働者が増え、生産性の向上や消費市場の拡大につながっています。今後も人口増加による消費拡大が予測されているため、インド経済の発展が期待できるでしょう。
若者の労働者が増えると、IT産業やサービス業界において新たな技術やアイデアを生み出す可能性が高くなります。新たな技術やアイデアは、国内外の市場での競争を優位にする点がメリットです。
実際に、インドは人口ボーナス期に入っているため、さらなる経済成長の加速が期待されています。この人口ボーナスを最大限に活用するためには、高度や技術や専門的な知識を要する分野での労働力の育成や、教育の質の向上が求められます。
人口増加や育成によって得られた若い労働力は、経済全体の効率性と生産性を高め、長期的な経済成長の支えになるでしょう。
参照:インドの主要産業はIT産業?GDP成長率と海外への主な輸出品を解説
インドでは雇用創出が急務
インドでは急速な人口増加によって労働者が増えたため、雇用創出が急務となっています。雇用先がないと若者の失業率が高くなり、経済的に不安定になるだけでなく社会不安につながるためです。
新たな雇用創出先としては、再生可能エネルギーやIT産業、デジタル産業などの新興産業分野が有力です。また、製造業の雇用を増やすこともインドの経済成長には不可欠といえます。
人口増加を続けても労働先が確保できるよう、都市部のIT化に伴う新たな雇用創出や農村部での持続可能な雇用創出が必要です。
脱中国とインド企業
昨今、各国の企業が製造業の拠点となっている中国から離れつつある、脱中国の動きが進んでいます。脱中国によって製造の拠点をインドへ移行する企業が増えているため、インドは製造業の新たな拠点としての地位を確立しつつあります。
製造拠点としてインドが選ばれる理由は、人口増加によって若い労働力が豊富にあり、労働コストが比較的安いためです。すでに、電子機器や自動車部品の製造をインドで行っている企業が複数存在します。
しかし、インドには物流や電力供給、労働者の技術力などさまざまな課題があり、継続的なサポートが必要です。政府と企業が連携して課題に対して適切な政策を実施し続けることで、インドは各国の製造業にとって新たな拠点の1つになるでしょう。
参照:インドと中国の関係は?どちらに進出するのがおすすめか徹底解説!
インドの出生率は低下している?
人口増加が続いているインドですが、出生率は低下しています。
- 低下する出生率
- インドでも少子高齢化になる?
インドの出生率の低下と未来の高齢化について解説していきます。
低下する出生率
近年、インドでは出生率が低下してきています。出生率が低下している背景には、女性の教育水準の向上や社会進出、都市部の発展などが関連していると考えられているためです。
教育水準の向上によって、女性の進学や就業の機会が増え、社会的地位が年々向上しています。女性の社会進出が増えてくると晩婚化や高齢出産が増加し、出生率の低下につながります。
また、都市部の生活は家賃や生活費の負担が大きくなるため、子どもを産まない選択をするケースも増えています。インドの出生率低下は長期的に見ると人口成長率の減少につながり、労働力や経済成長に歯止めをかけることになりかねません。
さらに、出生率の低下は社会保障制度や年金制度の国民負担を高める可能性もあります。社会保障を守るために、少子化対策の実施が求められます。
インドでも少子高齢化になる?
インドでは、出生率の低下とともに医療技術の進歩によって寿命が伸びているため、少子高齢化が問題になりつつあります。少子高齢化が問題視されている背景には、年金や社会保障制度の維持と、医療や介護などの整備を充実させなければいけないという問題があるためです。
インドでは、高齢者施設や年金が受給できるのは一部の富裕層だけで、家族が高齢者の支援をするケースが一般的でした。しかし、都市部での核家族化が進んでいる中、これまでの体制では十分な支援を行うのは難しいでしょう。
また、インドの経済成長は若い労働力によって支えられています。そのため、少子高齢化によって労働力が不足すると、人件費の上昇や生産性の低下を引き起こし経済成長を妨げてしまう可能性もあります。
人口増加によって労働力が豊富にある今のうちに、政府や企業は少子高齢化を止めるための新たな戦略と政策の策定が必要です。
インドの貧困率の変化
長年貧困問題を抱えていたインドですが、現在は貧困率が減少傾向にあります。
- インドの貧困率は減少している
- 農村部の課題
上記の解説を通じて、インドの貧困化について理解を深めてみましょう。
インドの貧困率は減少している
インドでは経済成長に伴って貧困率が減少しています。その理由は、経済成長によって所得水準が上がり、中間所得者層の割合が増えたためです。
2013には29.17%だった貧困率は、2022年には11.28%まで改善しています。
IT産業や金融業界など新しい職業が生まれたことで、都市部の雇用機会や収入が増加したことが主な要因です。IT業界やサービス業の拡大は、都市部の労働者に高い収入を得る機会を提供し、生活水準の向上に貢献しています。
また、政府が全国的に行った無料の食料配布プログラムも一定の効果がありました。
しかし、インドはいまだに貧富の格差が激しい国のひとつです。都市部と地方などの地域格差と、カースト制が残っているためです。
都市部に住んでいる低所得者層は、人口増加に伴う家賃や物価の上昇で厳しい生活を送っているケースもあります。
参照:独立行政法人日本貿易振興機構「インドの貧困率は11%に低下、直近9年で大幅に改善」
農村部の課題
農村部では、不十分なインフラや教育機会の欠如、カースト文化が貧困を強めている要因です。農村部の貧困を解消するために、貧困層に対する教育や職業訓練の提供が重要です。
質の高い教育や職業訓練を受けると仕事の幅が広がり、生活水準の向上につながります。また、男性だけでなく女性も新たな技能を身に着けることで、女性の社会進出や社会的地位を高められるでしょう。
さらに、社会保障制度を拡充すると、高齢者や障害者、病気の人々も社会から外れることなく生活の質を保てるようになります。このような地域格差をなくす取り組みは、インド政府にとって大きな課題です。
このように農村部の発展の促進は、性別やカースト格差の縮小にもつながるでしょう。インド全体が経済発展し、生活水準を上げていくためには、貧困問題の解決は重要です。
参照:インドの農業は儲からない?農家の貧困状況と政府の政策について解説
まとめ:インドの人口増加は新たな課題を生み出している
人口が世界最多になったインドでは、2050年頃まで人口増加が続くとみられています。人口増加は潤沢な労働力の源になりますが、食糧やインフラなどの新たな課題への対策も必要です。
しかし、インドでは女性の社会進出が進んで晩婚化や都市部で子どもを作らない夫婦が増えているため、緩やかに少子化が進んでいます。このまま少子化が進むと少子高齢化が加速し、社会保障や経済成長に問題が生じる可能性があります。
経済成長によってインドの貧困率は減少傾向になっていますが、カースト下層や農村部では根本的な改善には至っていません。
人口増加の課題、少子化対策、貧困率の改善と解決すべき問題は多いですが、インドはまだまだ発展の余地を残しているともいえます。今後のインド政府の対策や問題解決については、国際社会も関心を寄せています。