インドを訪れる際は、インドの通貨ルピー(INR)に両替する必要があります。しかし、アメリカのドルと異なり、インドの通貨ルピーは紙幣や硬貨を見たことがある人は少数でしょう。
今回はインドの通貨ルピーについてのレートや両替方法、注意点を解説していきます。
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インドの通貨ルピーの歴史
最初にインドの通貨、ルピーの歴史について解説します。ルピーの起源は古く、紀元前から始まっています。
インド通貨の歴史
インドの通貨ルピーの歴史は、紀元前まで遡ります。当時の文明で貨幣を使用していたのは、古代インド文明と現在のトルコ周辺にあったリディア国家だと記録されています。
古代インドの政治論書『アルタシャーストラ』では、金貨、銀貨、銅貨、鉛貨について記録が残っています。西暦4世紀初頭から6 世紀初頭まで存在したグプタ帝国では、大量の銀貨の製造が始まり貨幣文化が本格化しました。
16世紀になるとルピーと呼ばれる銀貨が流通し、この通貨が現在のルピー硬貨や紙幣に変わります。
参照:インドの歴史について解説!歴史を経て現在の経済政策は進出に関係ある?
イギリス統治時代も残ったルピー
ルピーという名の銀貨は、16世紀にスール帝国の創始者シェール・シャー・スーリが統治していた時代に初めて登場しました。この時代に鋳造されたルピアは、その後ムガール帝国を通じて広く使用されるようになっていきます。
1873年恐慌で銀の価格が下落し、当時銀貨だったルピーの価値も下落しました。当時インドを統治していたイギリスは、スターリング硬貨をインドで流通させようとしましたがインドはこれを拒否します。
その後、何度も暴落を経験しますが、インドの通貨は変わらずルピーのままです。
参照:インドがイギリスから独立するまでの歴史|ラーマやガンディーの活動も解説
2000ルピー紙幣の流通停止
2016年、インド政府は汚職や非公式経済を抑制するために当時の最高額だった500ルピーと1000ルピー紙幣の流通を突然停止しました。この措置はインド経済に大きな影響をもたらし、特に現金依存度が高い地域で混乱を引き起こしました。
政府は新しい2000ルピー紙幣を導入して現金流通の正常化を図りましたが、この措置は同時にデジタル決済の普及を促進するきっかけにもなります。2023年5月になると、インド中央銀行は2000ルピーの流通を停止すると発表し、再び混乱します。
現在のインドではデジタル通貨としてデジタルルピーの構想を現実化しており、順次使用できる場所を拡大していく方針です。インドの通貨ルピーは、今後も発展していくでしょう。
インド通貨の為替レートは?日本ではいくら?
インドの通貨であるルピーの為替レートは、国際的な経済要因によって日々変動しています。2024年の1月末時点では、1ルピーは約1.8円でした。
参照:三菱UFJモルガン・スタンレー証券株式会社「インドルピー/円」
1980年は現在よりも円安で、1ルピー28.8191円でした。当時の日本は、モスクワ五輪や東京ディズニーランド開園など、活気があった時代です。
1990年になると一気に円高が進みました。当時の為替レートは1ルピー8.2863円になります。
日本の1990年はバブル崩壊の前年でした。日夜仕事に励み、遊びも派手に行っていた時代です。
2000年になるとさらに円高は進みました。当時の為替レートは1ルピー2.3990円まで下がります。
日本では2000年問題というコンピューターの問題がありました。大きな混乱が予測されましたが、実際には経済や生活には大きな影響がなくミレニアムを歓迎します。
以降は緩やかな円高が進み、現在の為替レートで安定しています。
インドでの通貨の両替方法
ビジネスや観光でインドを訪れる日本人にとって、ルピーへの両替は重要です。できるだけレートの良い両替方法を選ぶことで、インドでルピーを多く使えるようになります。
ルピーの両替方法と、おすすめの両替所を紹介していきます。
空港での両替方法
多くの旅行者が最初に利用するのが空港内の両替所です。インドの主要空港ではほとんどが24時間営業しており、様々な外貨に対応しています。
現地に着いてすぐにルピーと両替ができるので、タクシーやバスでの移動やホテルの宿泊時に便利です。しかし、空港の両替所は手数料が高めに設定されていることが一般的なので、特に小額の両替の場合には不利なレートになる可能性があります。
また、デリー国際空港では余計な手数料を取られたという声もあるので、空港での両替は極力控えましょう。
街での両替方法
インドの主要都市や観光地には、銀行や公式に認可された両替所が多く存在します。銀行や公式の両替所では、有利なレートを提供してくれるのが特徴です。
デリーやムンバイの商業地区では、競争によって比較的良好なレートで両替を提供する両替所が多数あります。ただし、これらの両替所の営業時間は限られており、レートが良いために行列もできます。
街で両替する際は、時間に余裕を持って行動するようにしましょう。
また、地方では銀行でも両替に対応していない所があるので、どの街でも両替ができると油断するのは危険です。事前に信頼できる両替所の場所と営業時間を調べておいてください。
ホテルでの両替方法
多くのホテルでは、フロントデスクで24時間両替サービスを提供しています。ホテルでの両替は、時間が限られている場合や夜間など他の両替所が閉まっている時に便利です。
ホテルでの両替レートは、銀行や公式の両替所に比べてやや悪くなる傾向があります。ゲストハウスはホテルよりもレートがいいので、ゲストハウスに宿泊する人は安心して両替できるでしょう。
参照:【最新版】インドのおすすめ観光スポット15選!注意点やベストシーズンも紹介
インドでの通貨取引の注意点
インドを訪れる際には、ルピーの取り扱いに注意点があります。場合によっては罰則を受けることもあるので、それぞれの注意点について解説していきます。
インドルピーの注意点
インドでは日本のようにお釣りを用意する文化がないので、高額紙幣で買い物すると嫌な顔をされたり買い物を拒否されたりします。紙幣や硬貨をバランス良く用意して、どこでも買い物を楽しめるようにしておきましょう。
両替時に小さな紙幣を多めにもらう、ホテルなどの支払いを高額紙幣で行い、お釣りをストックしておくと買い物に不自由しません。
特に10ルピー紙幣を多めに持っておくようにしましょう。
また、紙幣の状態も重要で、破れたり汚れたりしている紙幣は受け取ってもらえません。両替やお釣りを受け取る際には紙幣の状態をよく確認し、問題がある場合はその場で交換を求めることが重要です。
インドの偽札問題
過去に500ルピー紙幣や1000ルピー紙幣の流通を突然辞めたインドですが、その理由は偽札が出回ったためです。比較的新しい2000ルピーには、色が変わるストライプや角度によって浮き出る顔などの新しい技術を使っています。
そもそも、インド人はあまり紙幣を大切にしない傾向があります。時にはメモ用紙代わりに使ったり破れていたり、日本の感覚だと驚くことがあるかもしれません。
現在では新しい500ルピー紙幣と1000ルピー紙幣が登場したこともあり、偽札の流通は減っています。心配な人は、透かしがあるか確認してみましょう。
インドルピーの罰則
インドには外貨や通貨の取引に関する法律があり、これに違反すると重い罰則が科せられます。旅行者がインドを出国する際には、未使用のルピー紙幣は自国の通貨やドルと両替が必要です。
具体的には、インド中央銀行(RBI)は外国人旅行者が25,000ルピーを超える現金の持ち出しを禁止しています。この規制は、国内経済の安定と偽札流通の防止を目的としています。
インドを訪れる際には、通貨の法的制限を十分に理解することが重要です。
インドでカードを使う方法
国際キャッシュカードを使用すると、日本の銀行口座に預けているお金を引き出せます。国際キャッシュカードのメリットは、すぐに現金が手に入る点です。
国際キャッシュカードに手数料はありませんが、ATM手数料が約4%前後かかるので使いすぎには注意しましょう。
また、インドではクレジットカードも利用可能です。クレジットカード決済とキャッシングが利用できるので、手持ちの現金が無くなった際も安心です。
キャッシングは一時的な借入になるため、手数料が発生します。1ヶ月に1.5%前後なので、困ったときは積極的に使用してみてください。
参照:インドでマストなお土産ランキングTOP10!おすすめスポットや買い物時の注意点も紹介
まとめ:インドのルピーは歴史ある通貨
インドの通貨ルピーは紀元前6世紀ころの文明がルーツになっています。ルピーは度々流通の停止や新札の発行を繰り返し、現在は500ルピーや1000ルピーが高額紙幣となっています。
インドで両替する際は、都市部の銀行やゲストハウスでの両替がおすすめです。クレジットカードや国際キャッシュカードも使用できるので、現金が足りない時はカードでの決済やキャッシングを利用してみてください。
また、インドルピーは25,000以上は持ち出し禁止になっているので、必ず円やドルに両替してから出国しましょう。万が一持ち出しが発覚してしまうと、罰則を科されてしまう可能性があります。
インドでの生活を満喫するために、ルピーの取り扱いにはくれぐれも注意が必要です。