インドとネパールは、隣接する国同士です。インドには宗教やカレー、IT産業などのイメージを持つ人がいますが、ネパールについて詳しく知る日本人は限られています。
今回は、隣接するインドとネパールの違いとそれぞれの特徴について解説していきます。
インドとネパールの歴史
インドは紀元前からの文明がありましたが、ネパールは世界中に知られるような歴史的ニュースは多くありません。インドとネパール、それぞれの歴史について解説していきます。
インドの歴史
インドにはインダス文明という古代文明がありました。紀元前2500年頃には既に都市計画、文字システム、貿易ネットワークを持つ高度です。
紀元前1500年頃からインドに来たアーリア人はバラモン教を信仰していて、紀元前300年頃に現在のヒンドゥー教のもとができたと伝えられています。ヒンドゥー教はその後も信仰が続き、4世紀のグプタ朝時代に定着しました。
12世紀から16世紀にかけては、イスラム教徒の諸王国が北インドを支配し、ムガール帝国の時代にはイスラム文化とヒンドゥー文化が融合します。その後、英国の植民地支配を経て、1947年に正式にイギリスから独立して現在のインドができました。
独立後は、多民族、多言語、多宗教が共存する複雑な社会構造をまとめつつ、急速な人口増加と経済成長を実現しています。その一方で、今も残るカースト制度や宗教的対立といった課題の解決が問題になっています。
参照:インドの歴史について解説!歴史を経て現在の経済政策は進出に関係ある?
ネパールの歴史
ネパールはチベット自治区とインドに挟まれるように位置しています。ネパールの歴史は、マウリヤ朝などいくつもの王朝に支配される時代が続きました。
1769年にシャハ王朝(グルカ王朝)が現在のネパールとほぼ同じ領土を支配したことで、領土が明確になります。
1814〜1816年にはイギリスとの間でグルカ戦争があり、ネパールは破れてしまいました。以降、イギリスはネパールを実質的に統治します。
1951年には絶対王政が終わり、ネパールは立憲君主制へと移行しました。2008年にネパールは共和制国家となり、新たな歴史が始まります。
ネパールもインド同様に多民族、多言語、多宗教の国であり、特に1979年にユネスコの世界遺産に登録されているカトマンズの谷は、ネパールの豊かな文化遺産の象徴となっています。
しかし、政治的な不安定さや経済的な課題も多く、国際社会からの継続的な支援が必要な状況です。
インドとネパールの特徴
インドとネパールは、隣接しているため類似する特徴もあります。インドとネパールの特徴について解説していきます。
インドの特徴
インドは14億人を超える人口を持つ世界1位の人口大国です。多様な民族、言語、宗教を内包しており、インド内部には22の公用語と数百の方言が存在します。
インドではヒンドゥー教が最も信仰されている宗教ですが、イスラム教、キリスト教、シク教、仏教なども信仰されています。仏教発祥の地と認識している日本人も多数いるでしょう。
経済面では、IT産業の成長が著しく、バンガロールやハイデラバードなどの都市は「インドのシリコンバレー」と呼ばれています。AmazonやGoogle、ソニーなどの企業がオフィスを構えているため、さらに多文化な都市になっています。
文化面ではインドのボリウッド映画は世界的に有名で、年間1,000本近い映画が製作されています。ボリウッドの映画製作本数は、ハリウッドの倍近い本数です。
しかしながら、インドは貧困、カースト制度、環境汚染など、多くの社会的課題にも直面しています。
参照:インドの人口が中国を抜いて世界最多に!人口の推移と少子化について解説
ネパールの特徴
ネパールはヒマラヤ山脈に位置し、世界の屋根とも称される国です。ネパールの最大の特徴は、世界最高峰のエベレストを含む壮大な自然景観です。
トレッキングや登山など、アウトドアアクティビティのメッカとなっており、観光業はネパール経済の重要な柱になっています。農業も国民経済にとって重要で、稲作が中心ですが地形的な制約により農地は限られています。
ネパールは文化的にも多様で、宗教ではヒンドゥー教と仏教の影響が強く反映されているのが特徴です。
ネパールの国土の約8割が丘陵や山岳地帯になっているため、大規模な農業や製造業ができずに世界的に見ても貧困している国と呼ばれています。インフラの発展も遅れており、電力供給や交通網の不足が経済発展の妨げとなっています。
インドとネパールの違い
インドとネパールについて知るために、以下の違いをまとめました。
- インドとネパールの言葉の違い
- インド人とネパール人の違い
- インドとネパールの宗教の違い
- インドとネパールの料理の違い
- インドとネパールのカレーの違い
上記の違いを理解して、それぞれの国の良さを知りましょう。
インドとネパールの言葉の違い
インドは世界的に見ても多様な言語を使う国です。州独自に22の公用語が認められており、インド全域で最も広く話されているのはヒンディー語です。
ヒンディー語は北インドで主に使用され、他の地域では、ベンガル語、テルグ語、マラヤーラム語など、様々な言語が使われています。インドを訪れる際は、地域によって公用語が異なることを覚えておきましょう。
参照:インドの公用語はヒンディー語?州ごとの公用語と多言語事情を解説
一方のネパールではネパール語が公用語です。ネパールには123の異なる言語や方言が存在し、多様な民族がそれぞれ独自の言語を話しています。
インドもネパールも、多言語な国という共通点を持っているので、訪れる地域によって挨拶や簡単な言葉を覚えておくとコミュニケーションを円滑に行えるでしょう。
インド人とネパール人の違い
インド人は宗教を大切にします。ヒンドゥー教徒は牛肉を食べず、イスラム教徒は豚肉を食べません。
インド人と食事する際は、信仰している宗教に合わせた料理を選ぶことが大切です。
また、インド人は明るくフレンドリーな人が多いのも特徴です。他人に寛容な反面、やや時間にルーズな人もいるので、余裕をもった待ち合わせをします。
インド北部は物事をはっきりさせる人が多いですが、南部は穏やかで頼みを断りにくい優しい人が多くなります。
ネパール人も優しく穏やかな人が多いのが特徴です。ネパールでは仲間意識が強く、助け合うのが当たり前と考える人が多数います。
インド人同様、時間にルーズだったり整理整頓が苦手だったりする人も多いでしょう。
インド人もネパール人も基本的に穏やかで優しい人が多いので、コミュニケーションを取りやすいと感じます。
インドとネパールの宗教の違い
インドではヒンドゥー教が主な宗教ですが、他にも数多くの宗教が信仰されています。イスラム教、キリスト教、シク教、仏教など、インド各地でそれぞれの宗教が信仰されています。
ネパールでは全人口の80%以上がヒンドゥー教徒として有名です。その他には、仏教、イスラム教、キラント教、キリスト教も信仰されています。
ネパールでもインドと同様にヒンドゥー教徒は牛肉を食べませんが、水牛だけは食べられます。そのため、肉料理では水牛を用いた料理があるのもネパールの特徴です。
参照:インドの宗教と進出の関係について解説!気をつけるポイントについても紹介
インドとネパールの料理の違い
インド料理は世界的に有名で、豊富なスパイスと濃厚な味付けが魅力です。インドの各地域は独自の料理スタイルを持っており、北インドではナンやタンドリーチキン、南インドではドーサ(米と豆を使ったクレープのような料理)やサンバル(豆と野菜を使ったスパイス料理)が一般的です。
インド料理は一般的に辛味が強く、ガラムマサラ、クミン、ターメリックなどのスパイスを豊富に使用します。
ネパール料理は、インド料理に比べて辛さが控えめで、穏やかな味わいが特徴です。ネパールの代表的な料理には、ダルバート(豆のスープと米)、モモ(肉の蒸し餃子)があります。
ネパールは米を主食としており、豆や野菜を多く使うので栄養バランスが良いといわれています。
参照:インドのおすすめ食べ物TOP10!食事マナーやお腹を壊さないポイントも
インドとネパールのカレーの違い
インドのカレーはその地域によって大きく異なります。北インドのカレーはクリーミーで豊かなフレーバーが特徴で、ギーバターやヨーグルトを使用します。南インドのカレーは海産物を多用し、ココナッツミルクやタマリンドで独特の酸味とコクを出します。
インドのカレーは、一般的にスパイシーで豊かな味わいを生み出しているのが特徴です。
一方、ネパールのカレーはインドのものよりもマイルドで、スパイスの風味は控えめです。ネパールのカレーは通常、ダル(豆のスープ)やバート(米)、タルカリ(野菜や肉のカレー)と一緒に提供され、これらを合わせた料理をダルバートと呼びます。
ダルバートはネパールの国民食とされ、日々の食事で広く食べられています。ネパールのカレーはさらさらしていて、豆や野菜、時には肉を使用し、穏やかな味付けが特徴です。
インドのカレーはスパイシーで刺激があり、ネパールのカレーはマイルドでさらさらしているのが違いです。
インドとネパールの政治関係
インドとネパールは地理的に隣接しており、歴史的にも文化的にも深いつながりを持っています。しかし、隣接するのは良い面ばかりではありません。
ネパールとインドの関係は常に良好とは言えず、過去には国境を封鎖した経験もあります。ネパールは資源が乏しく、インドと中国という大国に挟まれているため、その時々で一方との関係を重視する政策をとってきました。
中国に寄るとインドの反感を買い、インドに寄ると中国から反感を買うという難しい立ち位置です。現在のネパールは政府報告書で中国から侵略を受けていると報告し、関係が悪化してきています。
また、現在のインドとネパールはビザが無くても両国を行き来できるオープンボーダーを採用しているため、国民の移動は比較的自由です。行き来が自由な反面、インドから銃や武器が流れ込み、ネパールの治安が悪化しているという懸念もあります。
まとめ:インドとネパールは共通点の多い国同士
インドとネパールは、多民族、多言語、多宗教などの共通点があります。国民性も比較的穏やかで優しい人が多いので、故郷付近では国民同士の行き来も盛んです。
インドとネパールはビザがなくても自由に行き来できるオープンボーダーを採用しているため、資源の少ないネパール人はインドに働きに出る人が多数います。過去には国境を封鎖するなど、関係性が悪化した時期もありましたが、現在の関係性は比較的安定しています。
日本でインド料理店を営む人の中にはネパール人も多数いるなど、日本人から見るととても似ている国民性や文化を持った国同士ともいえるでしょう。
インドは歴史的遺産と近代的な都市、ネパールは世界遺産になっているカトマンズの谷などの豊富な自然が魅力です。機会があれば、ぜひともインドとネパールを訪れてみてください。