インドは宗教と深い関わりのある国です。そんなインドでは古くから神話が存在し、現代でも数々の神様について語り継がれています。
インドの文化に興味がある人のなかには、「インドにはどんな神様がいるんだろう?」と疑問を持っている人もいるかもしれません。そこで今回は、インドの神様の紹介と日本の神様との関係について解説していきます。
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インドの神様には3人の最高神(トリムルティ)がいる
インドには、トリムルティと呼ばれる3人の最高神が存在します。
- ブラフマー(創造神)
- ヴィシュヌ(維持神)
- シヴァ(破壊神)
それぞれの神様の特徴について解説していきます。
インドの最高神:ブラフマー(創造神)
インド神話において極めて重要なのは、ブラフマーです。ブラフマーは、「宇宙の根本原理」を意味するブラフマンが語源で、宇宙の創造者としてインドで古くから崇拝されているためです。
最高神と呼ばれながら、ブラフマーは語源通り表立った行動をしないという特徴がありました。そのため、ブラフマーに関する神話や祭事のための施設も作られず、次第に存在感を失っていきます。
近年はブラフマーの人気が衰えつつありましたが、2022年にはインドの神話をモチーフにした映画「ブマフラーストラ」が公開されたことで、再びブマフラーへの注目も集まっています。
ヴィシュヌ(維持神)
ヴィシュヌは、宇宙の維持と繁栄を司る最高神として深く尊敬されています。ブマフラーが4つの顔を持っていたのに対して、ヴィシュヌは4つの腕を持っています。
ヴィシュヌは魚や亀、人獅子など10の化身を持ち、それぞれの化身で世界や人間を守るためにさまざまな役割を果たします。ヴィシュヌを主神としている派閥では、ブマフラーやシヴァさえもヴィシュヌの化身と言い伝えられてきました。
どんな神でも取り込んでしまうので、ヴィシュヌが最高神で一番だと考える人も少なくありません。日本ではあまり馴染みのない名前ですが、ヴィシュヌの特徴でもある化身はアヴァターラと言い、インターネットでよく使われるようになったアバターの語源だと言われています。
シヴァ(破壊神)
シヴァは、インドの最高神の中で一番知名度のある神様です。ブマフラーが非活動的なので、インドではヴィシュヌとシヴァが勢力を二分しています。
シヴァは、変化と変革を司る最高神として崇拝され、その力は破壊と再生を生むことでも有名です。暴風の神という側面もあり、暴風のように破壊をおこない、そのあとには湿潤な土地を残して新たな作物を繁茂させます。
また、シヴァは日本でも非常に人気があり、現代にいたるまでにさまざまなゲームや漫画に登場しています。
インドの神様は他にも沢山いる
最高神の解説をしましたが、インドには他にもたくさんの神様がいます。数ある神様のなかで、日本でも馴染みのある以下の神様を紹介していきます。
- パールヴァティー=ドゥルガー
- ガネーシャ
- アグニ
- ラクシュミー
- サラスヴァティー
- クベーラ
初めて耳にする神様については、以下の本文を参考にしてみてください。
パールヴァティー=ドゥルガー
パールヴァティーは、最高神のシヴァの妻としてインド国内で有名な女神です。パールヴァティーは家庭の調和と優しさの女神であり、彼女の教えは人間関係の強化と調和の重要性を教えてくれます。
しかし、パールヴァティーには別の人格が隠されていました。パールヴァティーが怒ったとき、ドゥルガーになると言われています。
ドゥルガーは、腕が10本や18本あると言われ、それぞれの腕に武器を持って敵と戦った勇敢な女神として描かれました。破壊の神だったシヴァは、ドゥルガーにだけは逆らえなかったという逸話も残されています。
ガネーシャ
インドの像の顔をした神様を見たことはありませんか?その像の神様こそが、最高神シヴァとパールヴァティーの子供で、インドでも人気のガネーシャです。
ガネーシャは、現世利益の神や商業神、学問神として現在でも崇拝されています。
母のパールヴァティーが入浴する際に、自身の垢を集めて作ったガネーシャに見張りを頼みました。そこに父のシヴァが帰宅し、見知らぬガネーシャが妻の入浴の見張りをしていることに激怒し、その首をはねます。
外の異常に気づいたパールヴァティーが現場に来ると、首をはねられたガネーシャがいました。パールヴァティーはシヴァに事情を説明し、生き返らせるよう命じました。
その時、たまたま近くを通った像の首をはねてガネーシャの肉体に付け、復活させたとの伝説が残されています。このガネーシャは、シヴァの軍師として活躍したとも言われています。
アグニ
アグニは火を意味する単語からも分かるとおり、火の神様です。他の神様のように人格化されていませんが、その神話は数多く残されています。
火は力の象徴でもあるので、アグニは強い力を持った神様として認識されています。人格化されていないので、他の神様のエピソードに次第に吸収されてしまい、脇役のような位置づけになってしまったのもアグニの特徴です。
アグニも、シヴァほどではありませんが日本のゲームやアニメの中に登場します。
ラクシュミー
ラクシュミーは、富と幸運の女神です。このラクシュミーは、最高神ヴィシュヌの妻としても有名です。
富の女神と言われている通り、ラクシュミーの絵画には壺から数多くの金貨や財宝が溢れる様子が描かれてきました。その特徴から、現在でも縁起の良い神様として崇められています。
いつもヴィシュヌに寄り添い、ヴィシュヌが化身に変化する際はラクシュミーも一緒に変身していたという話も残されています。
サラスヴァティー
サラスヴァティーは水と豊穣の女神であり、聖なる川として知られるサラスヴァティー川の化身です。インドの最高神ブラフマーの妻としても広く知られています。
普段はヴィーナと呼ばれる楽器を持って穏やかな姿で描かれることが多いサラスヴァティーですが、戦闘になると8本の手で武器を操ると言われています。現在でも音楽や絵画など芸術の才能開花や、金運などのご利益があるので人気の神様の1人です。
クベーラ
クベーラは神話において豊かさと富を象徴する財宝の神として描かれています。このクベーラには、ダナパティ(財宝の主)やイッチャーヴァス(望みの財産を得る者)という別名もあります。
クベーラに関する神話は数多くありますが、前世はグンニディと呼ばれるすべての財産を失った貧民だったという話が有名です。
空腹に飢えたグンニディがシヴァの寺院に忍び込み、捧げられた供物を盗もうとしました。真っ暗な寺院で何度ランプに明かりを灯しても、風で明かりは消えてしまいます。
グンニディは自分の服を燃やして寺院を明るくし、その姿に心を打たれたシヴァが来世で財宝の神にしたと言われています。
インドの神様は日本にも影響を与えた?
インドの神様は、日本の神様にも深い影響を与えています。
- 弁天=サラスヴァティー
- 大黒天=シヴァ
- 毘沙門天=クベーラ
それぞれの神様の関係について、詳しく解説していきます。
弁天=サラスヴァティー
弁天は日本の仏教で崇拝される女神で、インドのサラスヴァティーと同じ神様だとされています。楽器を持っている姿も類似していて音楽や知恵、芸術の守護神として知られる弁天は、文化的な豊かさと知的発展の象徴です。
弁天は七福神で唯一の女神様として崇拝されており、特に音楽家や学者からの信仰が厚いのが特徴です。弁天は弁財天や弁才天とも呼ばれますが、全て同じ神様を指します。
弁天には、以下のようなご利益があると言われています。
- 財運向上
- 学問・芸術
- 美人祈願
日本には三大弁財天と呼ばれる江島神社、竹生島神社、厳島神社があることでも有名です。
大黒天=シヴァ
大黒天は日本におけるシヴァ神の表現形態の一つとされています。シヴァにはマハーカーラという別名があり、マハー=偉大、カーラ=黒という意味から大黒天の名が付けられました。
日本では打出の小槌や米俵などで有名な大黒天ですが、破壊の神シヴァが由来になっているのは意外です。
大黒天には、以下のようなご利益があると言われています。
- お金にまつわるご利益
- 出世・開運
とくに、豊臣秀吉が三面大黒天をお守りとして肌身離さず身に着けていたことが有名です。豊臣秀吉が天下を取ったことで、大黒天は出世や開運にご利益があると広く伝わりました。
大黒天の御朱印をいただけるお寺として、高野山金剛峯寺と大乗山経王寺が有名です。
毘沙門天=クベーラ
毘沙門天はインドの財宝の神クベーラがルーツで、財宝と戦勝祈願の神として位置づけられています。日本では戦国武将の上杉謙信が毘沙門天の生まれ変わりとして戦果を上げたことが有名です。
毘沙門天には、以下のようなご利益があると言われています。
- 無尽の福
- 衆人愛敬の福
- 智慧の福
- 長命の福
- 眷属衆太の福(信頼)
- 勝運の福
- 田畠能成の福(豊作)
- 蚕養如意の福(家業の成功)
- 仏果大菩提の福(悟り)
毘沙門天の御朱印をいただけるお寺として、善國寺、神峯山寺、大岩山毘沙門天が有名です。
参照:日本とインドの関係|新旧の経済大国の今後についても解説
まとめ:インドの神様は日本の神様にも影響を与えている
インドには多くの神話が残されていて、神様も多く登場します。その中でも、最高神と呼ばれるブラフマー(創造神)、ヴィシュヌ(維持神)、シヴァ(破壊神)は数多くの神話に登場し、現在でも信仰されています。
また、インドの神様は日本に仏教が伝来したタイミングで大きな影響を与え、弁天や大黒天、毘沙門天のルーツはインドの神様でした。インドと日本は、古くから文化的な影響を受けている特別な国です。
今後インドを訪れる際は、インドの神様に関する建物や地域を巡ってみるのもおすすめです。