インドの正しい食事マナーを徹底解説|食事の際のタブーや注意点も紹介

インドを訪れる際、その豊かな食文化は旅の大きな魅力の1つです。多様な宗教と伝統が織りなす独特の食事マナーは、インド文化の奥深さを体験する絶好の機会となります。

しかし、日本とは大きく異なる食事マナーに戸惑う観光客も少なくありません。

本記事では、食事マナーの基本から宗教との関係性まで、インドの食事マナーを詳しく解説します。インドへの旅行やビジネス出張を控えている方は、ぜひ参考にしてください。

正しいマナーを身につけることで、インドでの食事がより豊かで思い出深いものになるでしょう。

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インドの食事マナーの基本

肉を使ったインド料理

まずは、インドの食事マナーの基本を紹介します。インドでは手で食べるイメージを持っている人もいると思いますが、食べ方には注意点があります。

これからインドを訪れる予定がある人は、食事マナーの基本をおさえておきましょう。

インド人が右手で食べる理由

インドでは、食事を手で食べることが一般的でした。

近年の都市部では観光客が増えた影響でスプーンを提供してくれる場所が増えましたが、地方に行くにつれて手で食べる機会が増えるのが現状です。

食事する際は必ず右手を使うことが重要で、左手は食事の場では使用を避けます。これは、左手がトイレなどの衛生的な用途に使われることから来ています。

インドの多くの家庭やレストランでは、手で食べる文化が根付いており、このマナーを守ることで現地の人々との交流がスムーズに進むでしょう。

また、手で食べることには、食材の質感や温度を直接感じられるというメリットもあります。手を使うことで、食事がより感覚的に楽しめます。

 
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手で食べることで、料理の温度や質感を直接感じられます。また、インドでは肉や魚を調理する場合骨付きのことが多いですが、手で食べると骨を取り除きやすいというメリットもあります。

ジューター=穢れの概念

インドには「ジューター」という不浄を意味する概念があり、一度口をつけたものを他人に渡すことや、他人の皿から食べ物を取ることはマナー違反とされているので注意が必要です​。

この考え方は、食べ物の清潔さと個人の尊重を重視するインドの文化に深く関係しています。

ジューターを避けることで食事中のトラブルを防ぎ、インド文化に敬意を示すことにつながります。さらに、ジューターの概念は健康を守るためにも重要です。

口をつけた食べ物を共有しないことで感染症のリスクを減らし、安全な食事環境を維持できます。人口が多く感染症が起きやすいインドでは、ジューターの概念が必要です。

インドでは食事を残すのがマナー?食べきるのがマナー?

インドでは、基本的に食事を残さず食べきることがマナーです。その理由は、インドでは食事や飲み水に恵まれない地域があるので、食事を残すのは失礼にあたるためです。

一部地域では、食事を少しだけ残すことがマナーとされているという情報もありますが、現地では気にせず食べきれる量を注文しましょう。

食事を残す際の礼儀

残すことがマナーとされる場合でも、ほんの少しだけ残すことがポイントです。

インドでは多くの食べ物を無駄にすることは避けるべきで、少しだけ残すことでマナーを守りながらも食材を大切にする姿勢を示せるためです。

このバランスを保つことが、観光客としての礼儀正しい行動といえるでしょう。

インドでは食事マナーと宗教の関係が深い

食事を受け取るインド人親子

インドは宗教との関わりが深い国ですが、その考えは食事にも大きな影響を与えています。インドは多宗教ですが、今回はヒンドゥー教とイスラム教で食べられない物や禁忌について解説します。

ヒンドゥー教と食事

インドの多数派であるヒンドゥー教徒は牛を神聖視するため、牛肉を食べることはタブーとされています。そのため、インドでは鶏肉や羊肉が主な肉料理として一般的です。

インドカレーでチキンやラムを使ったカレーが多いのも、牛肉を食べるのがタブーとなっているためです。

また、ヒンドゥー教には菜食主義者が多く、基本的に野菜料理を食べています。ヒンドゥー教の食事マナーを理解することで、インドでの食事選びがスムーズになります。

例えば、インドの野菜料理には豊富なスパイスや豆類が使われているので、栄養バランスの取れた食事を楽しめるでしょう。

ベジタリアンやヴィーガンの人々にとっても、インドの食文化は非常に魅力的です。

イスラム教と食事

インドにはイスラム教徒も多く住んでいて、イスラム教では豚肉を禁じています。イスラム教では、豚は不浄の動物と教えられているためです。

イスラム教徒の食事はハラール(イスラム法で許されている)食品に限定されることが多く、食材の選び方や調理方法にも厳しいルールがあります。

それぞれの宗教的な制約を理解しておくことで、インドでの食事がより円滑に進むでしょう。

イスラム教徒の多い地域では、ハラール認証を受けたレストランや食材が簡単に見つかるため、旅行者も安心して食事を楽しめます。

ヒンドゥー教やイスラム教などの宗教による考えや文化については、以下の記事で詳しく解説しています。

参照:インドの宗教と進出の関係について解説!気をつけるポイントについても紹介

インドの食事マナーに関連するタブーと注意点

インドで食事を取り分ける団体客

インドで食事する際にマナー違反にならないように、以下の点について解説します。

  • 食事は取り分けて食べる
  • インドでは音を立てないのが食事マナー
  • 食事中のアルコール提供は地域による

日本と同じ感覚で食事すると、周囲に不快感を与えてしまう可能性があります。それぞれの注意点を理解しておきましょう。

インドでは食事は取り分けて食べる

食事を取り分けてから食べるインドの習慣は、衛生面だけでなく深い文化的意味が込められています。

 
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ただし、ベジタリアンの方と食事をする際は取り分けに注意が必要です。肉に触れたスプーンで取り分けるのはNGですので、専用のスプーンを使うようにしましょう。

大皿から各自が自分の皿に取り分けることは、食事を平等に分かち合うという象徴的な行為で、同時にコミュニティの精神を強めます。

この際、右手を使うのは、左手が不浄とされる伝統文化にもとづいているためです。

これは、トイレでの使用や靴の着脱に左手を使う習慣に由来していて、食事の清潔さを保つ上で重要な役割を果たしています。インド式トイレの特徴や使い方は、以下の記事で詳しく解説しています。

参照:インドのトイレ事情|インド式トイレの使い方や問題点を解説

インドでは音を立てないのが食事マナー

インドでは、食べ物を残さないことと音を立てずに食べることが重要です。

食べ物を残さないことは、料理を作ってくれた人や食材への感謝を示すと同時に、食料不足に苦しむ人々への配慮でもあります。

静かに食事を取ることは一種の瞑想や感謝の行為とみなされ、周囲で食事する人々への配慮も含まれています。

また、音を立てずに食べることは上品さや良い育ちの象徴とされ、社会的マナーの1つとしても重要です。これらのマナーを守ることで、インドの人々との信頼関係が深まり、食事をより楽しめます。

食事中のアルコール提供は地域による

インドでの食事中のアルコール提供については、地域によって大きく異なるため、観光客は注意が必要です。多くの都市部や特に観光地では、レストランやホテルでのアルコール提供が一般的です。

ムンバイやデリー、ベンガルールなどの大都市では、さまざまな種類のアルコール飲料を楽しめます。ビールの他に、ワインやウイスキーなどが広く提供されています。

特に、キングフィッシャービールは、観光客にも好評です。

一方で、グジャラート州やビハール州など、一部の州ではアルコールの販売と消費が禁止されています。これらの州では、宗教的な理由や社会問題対策として、厳しいアルコール規制が実施されています。

観光客であっても、これらの地域ではアルコールを持ち込んだり消費したりすることは違法行為となるため、十分な注意が必要です。

また、アルコールの提供が許可されている地域でも、特定の宗教的祝日や選挙日には一時的に販売が禁止されることがあります。インドで楽しめるお酒の種類や禁酒日については、以下の記事で詳しく解説しています。

参照:インドのお酒事情を徹底解説!有名なお酒紹介と旅行中の楽しみ方も解説

インドのレストランとストリートフードの食事マナー

配膳を行うインド人スタッフ

観光でインドを訪れる際は、レストランや屋台で食事を楽しむことが多くなります。現地で失礼にならないように、それぞれの食事マナーについても解説します。

レストランでの食事

インドのレストランでの食事は、インドの食文化を体験する絶好の機会です。観光客向けのレストランでは伝統的なマナーが多少緩和されていることもありますが、基本的な食事マナーを守ることが重要です。

まず、スタッフへの感謝の気持ちを忘れずに、丁寧な態度で接することが大切です。

「ダンニャワード=ありがとう」を使うことで、レストランのスタッフと良好な関係を築けるでしょう。注文時には、料理の辛さやアレルギー成分についても確認することをおすすめします。

インド料理は一般的に香辛料が豊富に使われるため、自分の好みや体調に合わせて辛さの調整を依頼することも可能です。

また、食事中は清潔さを保つよう心がけ、テーブルマナーにも気を配りましょう。右手で食事することはもちろんのこと、食べ物を残さないようにして、基本的な食事マナーを守ることが大切です。

ストリートフードの楽しみ方

ストリートフードは、インドの生き生きとした食文化を直接体験できる方法です。屋台での食事は地元の人々と交流する絶好の機会で、新たな味覚の発見に満ちています。

パニプリやビリヤニ、サモサなどの人気メニューは、インドの多様な食文化を象徴する存在です。これらを楽しむ際には、衛生面に十分注意を払うことが重要です。

清潔そうな屋台を選び、多くの地元の人が利用しているか確認しましょう。また、食材の新鮮さや調理過程の確認も欠かせません。

水や氷を含む飲み物には特に注意が必要で、未開封のミネラルウォーターを選ぶのが安全です。ストリートフードを楽しむ際も、右手で食べるなどの基本的なマナーを守りましょう。

また、屋台の周りが混雑している場合は、他の人の邪魔にならないような場所で食事するのも大切なマナーです。

ストリートフードを通じて、インドの日常的な食文化に触れ、地元の人々との心のつながりを感じられるでしょう。

インドの魅力的な食べ物については、以下の記事で詳しく解説しているので渡航前にチェックしてください。

参照:インドのおすすめ食べ物TOP10!食事マナーやお腹を壊さないポイントも

インドの祭りと特別な食事

インドのディワリ

インドのディワリ(光の祭り)は、ヒンドゥー教徒にとって重要な祭りの1つです。家族や友人と一緒に、ヒンドゥー教の暦における新年をお祝いするための祭りです。

ラドゥ、バルフィ、ジャレビなどの伝統的なスイーツが大量に作られ、親戚や知人に配られます。

これらの甘い菓子は幸福と繁栄の象徴とされ、新年の始まりを祝福する意味が込められています。

ディワリの期間中は、家庭やレストランで特別な食事が用意され、普段食べられないインドの伝統料理を楽しめるのが魅力です。ディワリの詳しい内容は、以下の記事で解説しています。

参照:インド最大のイベント「ディワリ」って?祭りの内容や楽しみ方を紹介

ホーリー(色の祭り)は、春の訪れを祝う陽気な祭りです。この祭りでは、グジアと呼ばれる半月型のスイーツが特徴的です。

小麦粉の生地にナッツやドライフルーツを詰めて揚げたこのお菓子は、祭りの喜びを象徴しています。

また、タンダイというスパイスの効いたミルクドリンクも、この祭りには欠かせません。

ホーリーの日には、色粉や色水をかけ合って楽しむため、食事は比較的簡単なものが多く、軽食やスナックが中心となります。

多くの外国人観光客も参加するインドのホーリーについては、以下の記事で詳しく解説しています。

参照:インドのカラフルな春の祭典ホーリー祭の歴史と魅力・注意点を徹底解説

まとめ:インドの食事マナーを理解して美味しい食事を食べよう

インドで食事を楽しむ観光客

インドの食事マナーを理解することで、現地でのコミュニケーションが円滑になり、より深い文化体験ができます。

右手を使って食事する、残さず食べる、音を立てないなどの食事マナーを守って、インドでの食事を楽しんでください。

食事はその国の文化を最も身近に感じられる時間です。現地の食事マナーを守ることで、より深い交流と理解が生まれます。

インドでの食事を通じて現地の人々とのつながりを深め、楽しい思い出作りをしましょう。