インドではさまざまなスポーツが盛んですが、特に、近年人気になっているのはサッカーです。インドのサッカーの歴史は意外に古く、伝統のクラブチームも存在しています。
今回は、インドのサッカーリーグの特徴と有名選手、サッカー以外に人気のあるスポーツまで解説します。
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インドサッカーの歴史
現在のインドサッカーについて解説する前に、インドサッカー界の歴史を解説します。インドでサッカーが普及したのは、植民地支配していたイギリスの影響によるものでした。
インドにサッカーが普及したのは、イギリス植民地時代です。当時、イギリス軍やインド人兵士が主にサッカーを楽しんでいました。
インドで最初にできたクラブチームは、当時のカルカッタ(現コルカタ)「カルカッタFC」です。カルカッタはインドサッカーの発祥地として知られ、現在も多くのサッカークラブが存在します。
19世紀末から20世紀初頭にかけて、インド国内でサッカーの人気は急速に高まりました。1892年に、イギリス人がインドサッカー協会(IFA)を設立したためです。
1888年に設立されたデュランド・カップ、1891年に設立されたローヴァーズ・カップに次いで、1892年に創設されたIFAシールドという大会はインド3大カップと呼ばれます。
植民地時代にはインド人チームがイギリス人チームを破ることもあり、特に1911年の「モハン・バガン」がイギリスの東ヨークシャ連隊を破った試合は、インドのスポーツ史に残る偉業として称えられています。
インドの植民地時代については、以下の記事で詳しく解説しています。
参照:インドがイギリスから独立するまでの歴史|ラーマやガンディーの活動も解説
インド独立とサッカーの発展
1947年のインド独立後、国内ではサッカーがさらに発展しました。1951年にデリーで開催された第1回アジア大会では、インドが優勝しています。
1956年のメルボルン五輪4位、1962年ジャカルタのアジア大会で再び優勝、1970年にも同大会3位となるなど、インドは国際大会でも実績を重ねていきました。
この時期はインドサッカーの黄金時代と呼ばれ、国内外から注目を集めていました。しかし、その後はインドサッカーの国際的な競争力が低下し、国際大会での予選落ちが続いていきます。
インドのFIFAランキングは2023年時点で102位
インドのFIFAランキングは、2023年時点で102位です。日本のランキングは2024年に17位になっているので、日本と比べるとインドのサッカーレベルは低いといえます。
インドは過去にはアジアの強豪としての地位を確立していましたが、現在は再びその栄光を取り戻すための努力が求められています。
インドのFIFAランキングが低い理由は、国際大会での成績です。FIFAランキングは国際試合の成績をもとに算出されるため、国際大会で勝ち進めないインドはランキング下位になってしまいます。
そのため、インドサッカー協会は国内リーグの強化や若手選手の育成に力を入れてきました。
インディアン・スーパーリーグ(ISL)の設立や、欧州のサッカークラブとの提携を通じて、技術向上や戦術の導入が進められています。
また、国際的なトレーニングプログラムやコーチングスタッフの招集によって、選手たちのレベルアップを目指しています。
インドの国内サッカーリーグの解説
現在のインドには、2つのリーグがあります。それぞれのリーグの特徴と、インド特有の問題について解説します。
インディアン・スーパーリーグ(ISL)
インディアン・スーパーリーグ(ISL)は、日本のJリーグと同じ位置にあるサッカーリーグです。2014年に設立され、インド国内の有名クラブチームやサッカー選手が参加しています。
インディアン・スーパーリーグの特徴の1つは、世界的なサッカー選手や有名な監督が参加している点です。その結果、リーグ全体の質が向上し、国内外でファンの関心も高まっています。
ISLは8つのチームから始まりましたが、2017年から10チームに拡大し、全国各地で試合が行われています。
試合はホーム&アウェイ方式で行われ、シーズン終了後にはプレーオフ形式でチャンピオンが決定されます。
Iリーグ
Iリーグは、ナショナル・フットボール・リーグに替わって2007年にインド初のプロリーグとして設立されました。
IリーグはISLとは異なり、地域密着型のクラブが多く参加しているのが特徴です。各チームは地域の伝統や歴史を背負っていて、地元のサポーターに強く支持されています。
Iリーグの試合形式もホーム&アウェイ方式で行われ、シーズン終了後にはリーグの順位に応じて昇降格が行われます。
下位チームはIリーグ2nd Divisionへの降格リスクがあるため、各チーム共に激しく競争しているのが特徴です。
インドの公式リーグ問題
インドにはインディアン・スーパーリーグとIリーグがあると解説しましたが、サッカー協会のFIFAは、原則として1国1リーグ制と規定しています。
そのため、両リーグは統合を巡り意見が対立しているのが現状です。
観客の動員数で一定の成功を収めているインディアン・スーパーリーグを1部リーグ、Iリーグを2部リーグにする方向で調整していますが、まだ解決には至っていません。
インドサッカーの主要チームと有名選手
インドには、歴史的なサッカーチームがあり、そこには国内外の有名選手が在籍しています。日本人で活躍している選手もいるので、主要チームと有名選手について解説します。
歴史的に有名なインドのサッカーチーム
インドには、歴史的に有名なサッカーチームがいくつか存在します。その中でも特に有名なのは「モハン・バガンFC」と「イースト・ベンガルFC」です。
この2つのチームは、インドサッカーの黎明期から現在に至るまで、多くのタイトルを獲得してきました。
モハン・バガンFCは、1889年8月15日に設立された、インド最古のサッカーチームの1つです。このクラブは、1911年にイギリスのチームを破り、IFAシールドを制覇したことで一躍有名になりました。
モハン・バガンの勝利は、インドの独立運動にも影響を与え、国民的な英雄として語り継がれています。
イースト・ベンガルFCは、1920年8月1日に設立され、カルカッタを本拠地とするチームです。
イースト・ベンガルFCも数多くのタイトルを獲得していて、特に「カルカッタダービー」と呼ばれるモハン・バガンFCとの対戦は、インドサッカーの中でも注目の試合となっています。
インディアン・スーパーリーグの人気チームとその実績
現在のインディアン・スーパーリーグの人気チームとしては、「ムンバイシティFC」や「FCゴア」があります。両チームはインディアン・スーパーリーグで活躍が目立ち、国内外で高い評価を受けています。
ムンバイシティFCは、2014年に設立され、短期間でインディアン・スーパーリーグの強豪チームに成長しました。
2020-2021シーズンには、リーグタイトルとプレーオフ優勝の二冠を達成し、国内のサッカーシーンを席巻しました。
インターナショナルな選手採用や有名監督の存在が、ムンバイシティFCの躍進に大きく影響しています。
FCゴアも同じく2014年に設立されました。このチームの特徴は、日本でも長年活躍したジーコが監督を務めている点です。
1年目にシーズン2位、2年目にはシーズン1位(プレーオフ準優勝)と好成績を残しました。3年目はシーズン最下位になってしまいましたが、ジーコ監督の長年の経験と知識はこれからも必要とされるでしょう。
インドで活躍するサッカーの有名選手
インドサッカー界には、以下のような世界的に有名な選手が在籍しています。
- アレッサンドロ デルピエロ(デリー ダイナモ)
- ルイス ガルシア(アトレティコ デ コルカタ)
- ニコラ アネルカ(ムンバイ シティ)
- エラーノ ブルメル(チェンナイインFC)
- フレドリック ユングベリ(ムンバイ シティ)
インド国内で注目すべき選手は、スニル・チェトリです。チェトリは、長年インド代表のキャプテンを務め、インド国内リーグでも数々のタイトルを獲得してきました。
彼の得点力とリーダーシップはFIFAからも評価されていて、インドサッカーの成長に大きく貢献しています。
チェトリは、国際的にも知られる存在で、特に2023年時点でのインド代表としての活躍は目覚ましいものがあります。
チェトリのプレースタイルはスピードとテクニックを兼ね備え、得点力も非常に高いことが特徴です。また、チェトリはインドサッカーの象徴として、多くの若い選手に影響を与えてきました。
インドで活躍する日本人サッカー選手
インドのサッカーリーグでは、以下のような日本人選手も活躍していました。
- 末岡龍二(イースト・ベンガルFC)
- 遊佐克美(モハメダンSC)
- 斉藤誠司(サルガオカーFC)
- 松ヶ枝泰介(シロン・ラジョンFC)
- 本田慎之介(デンポSC)
- 岩崎陽平(ランダジッド・ユナイテッドFC)
特に、遊佐克美氏は18歳以下の日本代表に選ばれ、キャプテンを務めるほどの選手でした。しかし、若さと過信からプレーが散漫になり、Jリーグをクビになりました。
その後、インドへ渡り自分を見つめ直したことで、本来の持ち味を再び活かすことに成功します。
インドの主要サッカースタジアム
インドには多くのサッカースタジアムが存在し、各地でサッカーの試合が行われています。
その中でも主要なスタジアムとして、「ソルトレイク・スタジアム」や「ジャワハルラール・ネルー・スタジアム」が挙げられます。
ソルトレイク・スタジアムは、コルカタに位置する世界的にも有名なサッカースタジアムです。このスタジアムは1984年に完成し、以来多くの国内外のサッカーイベントが開催されています。
収容人数は約85,000人で、世界で10番目に大きいサッカースタジアムとして有名です。当然、インド国内でも最大級のスタジアムとして、多くのサッカーファンに愛されています。
ジャワハルラール・ネルー・スタジアムはデリーに位置し、インディアン・スーパーリーグの試合やインド代表の試合が行われる施設です。
このスタジアムは、1982年に完成し、スポーツイベント以外にもコンサートや集会が開催されます。
インドでサッカー以外に人気のあるスポーツ
インドでは、サッカー以外にクリケットやホッケーも人気があります。クリケットやホッケーがインドで人気の理由について、それぞれ解説します。
クリケット
インドでサッカー以上に人気のあるスポーツなのが、クリケットです。クリケットはイギリス植民地時代にインドに伝えられ、現在では国民的なスポーツとして広く愛されています。
インドのクリケットチームは国際的な大会で数多くのタイトルを獲得していて、特に1983年と2011年のクリケットワールドカップ優勝は、国民に大きな喜びをもたらしました。
クリケットは、インド全土でプレーされていて、街角や公園、学校など至る所で試合が行われています。
インディアン・プレミアリーグ(IPL)は、国内外のトップ選手が参加する大規模なイベントです。このリーグは、テレビ放映やスポンサーシップで莫大な収益を上げ、インド経済にも大きな影響を与えています。
ホッケー
ホッケーも、インドで人気のあるスポーツの1つです。特に、フィールドホッケーは、インドの伝統的なスポーツとして長い歴史を持っています。
インドホッケーチームは、オリンピックで多くの金メダルを獲得していて、特に1928年から1956年にかけての連覇は、インドホッケーの黄金時代となりました。
現在も、インドホッケーは国内で多くのファンに支持されていて、プロリーグ「ホッケー・インディア・リーグ(HIL)」が開催されています。
ホッケー・インディア・リーグには、国内外のトップ選手が参加し、インドホッケーのレベル向上に貢献しています。
また、各地で行われるジュニア大会や地域リーグも、次世代の選手育成にとって重要です。
まとめ:インドでサッカーは人気のあるスポーツ
インドサッカーは、イギリス植民地時代からの長い歴史を持ち、現在も発展を続けています。
国内リーグの整備や国際的な選手の活躍により、インドサッカーのレベルは向上してきました。特に、インディアン・スーパーリーグ(ISL)の設立は、国内サッカー界に大きな変革をもたらしました。
また、インドには多くの歴史的なサッカーチームが存在し、地域の誇りとしてサポーターに支持されています。
現在のFIFAランキングは下位になっていますが、インドサッカーはさらなる成長を遂げることが期待されています。
FIFAランキングの向上や国際大会での活躍を通じて、インドサッカーは世界的な舞台での存在感を高めていくでしょう。