インドは急速な経済成長と人口増加にともない、SNSの利用が活発になっている国です。
今回は、インドで人気のSNSランキング、2024年現在のトレンド、さらにインド独自のSNSであるShareChatやSNS規制について解説します。
また、インドで活躍する日本人インフルエンサー「Mayo」さんの事例を通して、日本人にとってのインドSNS市場の魅力についても考察します。
インドで使われているSNSランキング
インドは世界最大のインターネットユーザー数を抱える国の1つで、SNSの利用も活発です。インドで特に人気のあるSNSをランキング形式で紹介し、それぞれのSNSの特徴や利用状況についても解説します。
1.YouTube
YouTubeは、インドにおける動画コンテンツの王者と言える存在です。インドはYouTubeの最大の市場で、月間アクティブユーザーは4億5000万人以上に達しています。
YouTubeがこれほどの人気を誇る理由は、無料で豊富なコンテンツが視聴できるためです。
インドでは、以下のような幅広いジャンルのコンテンツが視聴されており、特にローカル言語で提供される動画が多数存在するため、都市部だけでなく地方のユーザーにも広く浸透しています。
- エンターテインメント
- 教育
- ニュース
- 音楽
- 料理
また、多くのインド人クリエイターがYouTubeで活躍しており、その影響力は絶大です。
2.Facebook
Facebookは、かつてはインドにおけるSNSの代名詞とされていました。
現在でも3億人以上のユーザーを抱えていますが、近年は若年層の利用が減少し、InstagramやWhatsAppにユーザーが流れている傾向があります。
それでも、Facebookは依然として中高年層や地方在住者にとっては主要なSNSプラットフォームで、特に「グループ」機能や「マーケットプレイス」は、コミュニティ形成や商品売買の場として活発に利用されています。さらに、企業や政治家が広報活動を行うプラットフォームとしても根強い人気です。
3.Instagram
Instagramは、インドの若者を中心に絶大な人気を誇るSNSです。月間アクティブユーザーは2億人を超え、特に10代から20代の若年層に支持されています。
Instagramの魅力は、視覚的なコンテンツに特化している点です。
写真や短い動画を通じて、ファッションやライフスタイル、食べ物などのトレンドが発信され、インフルエンサーやクリエイターによる情報発信が非常に盛んです。
特に、Instagramの「Reels」機能はTikTokに代わる短尺動画プラットフォームとして爆発的に普及していて、急成長を続けています。
4.X(旧Twitter)
Xは、インドでの利用者数は2,360万人と他のSNSと比べて少ないものの、影響力の大きいプラットフォームです。
特に、政治や社会問題に関する議論が活発で、メディア関係者や著名人、政治家が頻繁に利用することで知られています。
Xはリアルタイムでの情報共有が可能なため、選挙期間中や社会的な出来事が起きた際にはインド国内での利用が急増します。
また、ハッシュタグを利用したキャンペーンやムーブメントが生まれやすく、SNSを通じて世論形成に大きな影響を与えることが多いのが特徴です。
そのため、Xは政治的なメッセージを広めるツールとしても重要な役割を果たしています。
WhatsAppはSNSではありませんが、インドで最も利用されているメッセージングアプリです。月間アクティブユーザー数は約4億人に達し、インド全土で広く利用されています。
このアプリが圧倒的な人気を誇る理由は、その使いやすさと多機能性にあります。WhatsAppはテキストメッセージの送受信に加え、画像や動画の共有、音声通話やビデオ通話が可能です。
さらに、インターネット接続があれば無料で利用できるため、インフラが整っていない農村部でも広く普及しています。
WhatsAppはエンドツーエンド暗号化を提供しているため、プライバシーを重視するユーザーにも支持されています。
2024年現在のインドのSNSトレンド
2024年のインドにおけるSNSのトレンドとして、新たなテクノロジーやコンテンツ形式が注目を集めています。特に、以下の要素が重要なトレンドとなっています。
メタバースの台頭
メタバースは、2024年のインドにおいて注目される新しいデジタル空間です。
メタバースは仮想空間での活動が可能なプラットフォームで、ユーザーはメタバース内のアバターを通じて他者と交流し、イベントに参加したりバーチャルマーケットで商品を購入したりできます。
インドでは、特に若年層がこの新しい体験に興味を示していて、メタバース関連のサービスやアプリが急速に普及しています。
Facebook(現在はMeta)や新興企業によるメタバースの開発が進行中で、これがSNSの次のステージとして定着していくでしょう。
短尺動画コンテンツのブーム
短尺動画コンテンツは、インドのSNS市場において急速に成長している分野の1つです。
Instagramの「Reels」やYouTubeの「Shorts」がインドの若者の間で圧倒的な人気を誇るようになりました。
これらのプラットフォームでは、15秒から60秒程度の短い動画を簡単に作成して共有できるので、視聴者の関心を引きやすいコンテンツが次々と生まれています。
「Reels」はInstagramの主力機能として成長し、ファッションやエンターテインメント、コメディなど、さまざまなジャンルで多くのインフルエンサーが活躍しています。
一方、YouTubeの「Shorts」は、YouTubeという巨大なプラットフォームの上で提供されるため、既存の長尺動画と短尺動画の両方を楽しむユーザーにリーチできる点が強みです。
また、「Shorts」は動画クリエイターにとっても、新たな収益化の手段として重要な役割を果たしています。
インドはSNS規制が厳しい
インド政府は、SNSの利用に関して厳しい規制を設けています。この規制は、国内の安全保障や社会秩序を守るための措置として実施されています。
特に、インターネット上での情報拡散が原因で、社会不安や暴力が発生するリスクを軽減するため、政府は積極的にSNSプラットフォームの監視と制限を続けているのが現状です。
インドのSNS規制の背景とその影響について、詳しく解説します。
インド政府がSNSを規制する理由
インド政府がSNSに対して厳しい規制を設ける背景には、以下のような要因があります。
- 社会的不安を引き起こす可能性がある
- 政治的な安定を維持するため
事実、インド政府はSNSに投稿された政府に関連する情報を直接確認する新たなソーシャルメディア法を導入しました。
インドは多様な文化や宗教、言語が共存する多様性のある国なので、SNSを通じて拡散される虚偽情報やヘイトスピーチが社会的不安を引き起こす可能性が高いと懸念されるためです。
このような理由から、インド政府はSNS企業に対して、コンテンツの監視と削除を義務付けています。
インドは人口が世界一多い国なので、一定割合の国民が虚偽情報やヘイトスピーチをもとに行動してしまう際のリスクが計り知れません。
インドでは、SNS上での問題が発生した際に政府が即座に介入できる仕組みが次々と整えられています。
インドではTikTokは禁止
インド政府は、2020年6月にTikTokを含む500以上の中国製アプリを禁止しました。この禁止措置は、インドと中国の国境紛争が背景にあります。
政府は、中国製アプリが国家の安全保障に対する脅威になると判断し、ユーザーデータの漏洩や不正なデータ利用のリスクを懸念して、TikTokの禁止を発表しました。
TikTokはインド国内で非常に人気があり、禁止前にはインド国内で約2億人のアクティブユーザーを抱えていました。
しかし、政府がTikTokを禁止して以降、ユーザーやクリエイターは代替プラットフォームに移行せざるを得なくなります。
国内のアプリ開発企業は、この機会を好機と捉え、TikTokの代替となる短尺動画アプリを開発・提供し始めました。
YoutubeやInstagramはユーザーを拡大
TikTokが禁止された後、その市場を補う形で、YouTubeやInstagramがインドでのユーザー基盤を拡大しました。
YouTubeの「Shorts」とInstagramの「Reels」は、TikTokに代わる短尺動画コンテンツとして適切なプラットフォームだったためです。
これらのプラットフォームは、短時間で視聴可能な動画コンテンツの提供によって、TikTokに慣れ親しんだユーザーをうまく取り込みました。
Instagramの「Reels」は、特に都市部の若者の間で爆発的な成長を見せ、ファッションやダンス、エンターテイメントに関する短尺動画が多く投稿されています。
その結果、Instagram全体のエンゲージメントが大幅に向上しました。
YouTubeの「Shorts」も、短尺動画市場での競争力を高めるために導入されました。
YouTubeはすでに広範なユーザーベースを持っているため、「Shorts」はこのプラットフォームにさらなる活気をもたらします。
クリエイターは、長尺動画と短尺動画の両方を駆使して、より多くの視聴者にリーチできるようになりました。
月間アクティブユーザー数1億8000万人:インド発のShareChat
インドにおけるSNS市場は、YoutubeやInstagramなどの世界的なプラットフォームが主導してきました。そんなインドで、近年急速に人気を集めているのが「ShareChat」です。
ShareChatは特に地方都市や農村部での利用が増加しており、インド特有の多言語社会に対応した独自の機能が評価されています。ShareChatの特性とその魅力について解説します。
ShareChatはインドのローカルSNS
ShareChatはインド国内で開発されたローカルSNSで、インドの多様な言語と文化に特化したプラットフォームです。
インドは、多様な民族と多数の言語が共存する国で、公用語だけでも22種類に及びます。
これに対応するため、ShareChatは英語に加えて、以下の言語を含む15以上の地域言語に対応しています。
- ヒンディー語
- ベンガル語
- タミル語
- テルグ語
- マラヤーラム語など
この多言語対応によって、英語が主流のグローバルSNSではカバーしきれなかった地方ユーザーにも広く受け入れられています。
ShareChatは月間アクティブユーザー数1億8000万人を抱えるSNSに成長し、特に都市部に比べてインフラが整備されていない地方で重宝されています。
これは、地方ユーザーが自分たちの言語で情報やコンテンツを発信・共有できるプラットフォームとしてShareChatが機能しているためです。
ShareChatでできること
ShareChatは、従来のSNSと同様に、写真や動画をシェアする機能を提供しています。
しかし、ShareChatは他のSNSとは異なる独自の特徴も持っています。
ShareChatの基本機能と地域コミュニティとの交流
ShareChatでは、XやInstagramで馴染みのある以下の機能があります。
- テキスト、画像、短尺動画、音声、GIF形式のコンテンツ投稿
- フォローやタグ付け
- いいね
- コメント
- リポスト
- ストーリーズ
- DM
さらに、ユーザーが地域ごとにコミュニティを形成し、交流を深められるのがメリットです。
インドでは地域や言語ごとに文化や風習が大きく異なるため、地域に特化したコミュニティ機能は重要です。
例えば、ディワリやホーリーといったインド特有の祭りに関する情報や、地域ごとの伝統的な音楽やダンスなどがシェアされています。
これにより、ユーザーはインドの多様な文化を学び、他のユーザーと共有できます。
ショートビデオの作成・共有
ShareChatでは、ショートビデオの作成や共有が盛んです。特にインドのローカル文化を反映したコンテンツが多く、ユーザー同士で面白いトレンド動画が共有されています。
その結果、都市部と比較してエンターテインメントの少ない地方のユーザーにも娯楽と情報共有の場を提供しています。
インド特有のトピックに焦点を当てたグループ機能
ShareChatのグループ機能では、農業や健康、教育などの地方特有の課題や興味に焦点を当てたトピックが多数存在します。
ユーザーは自分の関心に合った情報を検索で見つけやすく、同じ関心を持つ他のユーザーと簡単に交流できます。
インドで人気の日本人インフルエンサー「Mayo」
インドでは、日本人インフルエンサー「Mayo」さんが特に注目を集めています。
Mayoさんは、SNSを活用してインドの若者文化と日本のトレンドを融合させる活動を展開し、その独自のアプローチによって急速にフォロワーを増やしてきました。
Mayoさんの経歴やインドで人気を博した理由について解説します。
Mayoの経歴
Mayoさんは高校生までバレリーナを目指してバレエを習っていました。
その後、大学在学中にインドのデリーへ1年間の留学を経験し、帰国後は外資系コンサルティング会社に入社しています。
社会人になってからYoutuberとしての活動をはじめ、当初は日本の若者を主なターゲットとしていました。
しかし、インド市場の可能性に着目し、インドでの活動に注力していきます。
インドに移住後、Mayoさんはインド特有の文化やライフスタイルに関する投稿を増やし、現地のファッションや食文化、旅行先などをテーマにしたコンテンツを次々と発信しました。
現在は東京に本社を置く株式会社JAIアニメの共同代表として日本コンテンツの海外進出をサポートするかたわら、インフルエンサーとしてSNSの発信にも力を入れています。
Mayoがインドで人気になった理由
Mayoさんがインドで急速に人気を得た理由の1つとして、戦略的なSNS活用術があります。
MayoさんはYoutubeとInstagramを中心に、インド市場のトレンドを巧みに取り入れた以下のようなコンテンツを発信しています。
インド人は日本文化に対する関心が高く、特にアニメや漫画、J-POPなどが若者の間で人気です。Mayoさんは日本文化をインドの視点で紹介し、インドのフォロワーに新しい視点を提供しています。
Mayoさんの投稿は単なる日本文化の紹介にとどまらず、インドの文化と融合させたユニークなアプローチが特徴です。
インドではSNS市場が拡大していてチャンスが大きい
インドのSNS市場は、政府からの規制の中でも成長を続けているため、日本人にとってもビジネスチャンスがあります。
TikTok禁止以降も、YoutubeやInstagramなどのSNSがその市場をカバーしています。さらに、インド独自のSNSとして話題のShareChatも市場を拡大していくでしょう。
日本人インフルエンサーMayoさんの成功例を参考に、日本企業やインフルエンサーもインド市場に進出を検討してみてください。