インドの物価は高い?インドの生活に必要な費用を家賃や食費ごとに解説

近年、世界中から注目を浴びているインドですが、仕事や生活の拠点に考える人も増加しています。特にIT産業では、世界中の技術者がインドで仕事をする機会が増えています。
インドで生活してみたいと考える人が心配なのは、インドの物価が高いのかです。今回は、インドの物価と生活費の相場を中心に解説していきます。

インドと日本の物価の違い

インドのハンバーガー

経済成長が続いているインドですが、日本から移住を考える人が気になるのは物価です。

  • インドの消費者物価上昇
  • インドのビッグマック指数は日本より低い

インドの物価の推移と、日本との物価の違いをビッグマック指数を使って解説していきます。

インドの消費者物価上昇

インド経済はここ数年で目覚ましい成長を遂げており、多くの国際企業や投資家から注目されています。公益社団法人日本経済研究センターは、インドの2023年7〜9月期の実質GDP(国内総生産)成長率は7.6%だったと解説しています。

内閣府が発表している日本の2023年の実質GDPは1.9%だったので、インドの経済成長がいかに勢いがあるか分かるでしょう。この経済成長の背景には、インド政府と中央銀行の積極的な政策があります。

特に注目すべきは、インフレ率の抑制に成功している点です。日本貿易振興機構は、インドの中央銀行にあたるインド準備銀行はインフレ率の中期目標値4%±2%に設定し、2023年5月と6月のインフレ率は4.3%と4.8%でした。

インフレ率の抑制は物価と国民の生活コストの安定につながります。2024年2月現在では、トマトや玉ねぎなどの主要な野菜が高騰している影響が出始めていますが、まだインド準備銀行の目標インフレ率6%は超えていません。

参照:公益社団法人 日本経済研究センター「インド経済、顕在化した2つの弱点」
参照:日本貿易振興機構「インド中銀、3会合連続で政策金利を6.5%に据え置き」

インドのビッグマック指数は日本より低い

ビッグマック指数というと聞くと単なるハンバーガーの価格比較のように思えますが、実はそれ以上に重要な意味があります。ビッグマック指数は、各国の物価水準や購買力平価を測る一つのバロメーターとして広く利用されているためです。

公益財団法人神奈川産業振興センターは、2023年7月時点での世界のビッグマック指数について解説しました。日本は22位で450円だったのに対して、インドは27位で351円です。

アメリカは2位で778円、中国は23位で415円だったことを比較すると、インドにおけるビッグマックの価格は低いことが分かります。この物価の低さはインド国内での食品、衣類、住居といった基本的な生活必需品にも反映されるため、インドの生活コストが日本や他の先進国に比べて低いといえます。

ビッグマック指数は単なるハンバーガーの価格比較に留まらず、インドの経済全体の物価水準と他国を比較する上で貴重な指標です。

参照:公益財団法人神奈川産業振興センター「KIP国際化支援専門員コラム Vol.3 ビッグマック指数(The Big Mac index)について」

インドで1ヶ月生活するために必要な固定費

インドの街

インドの物価が日本よりも安いことは分かっても、実際に生活費がどの程度かかるのかが分からないと移住ができません。

  • インドの家賃
  • インドの光熱費
  • インドの通信費

まずは、インドで1ヶ月にかかる固定費について解説していきます。

インドの家賃は地域によって変動する

インドでは、家賃の価格帯が地域によって大きく異なります。日本人が1人で住む一般的な1BHK(ベッドルーム+ホール+キッチン)の平均価格は約30,000ルピー(約54,000円)程度です。
※1ルピー=1.8円換算

インドの経済や政治の中心地であるデリーや金融の中心地ムンバイなどの大都市では、特に家賃が高騰しているため上記よりも高くなるでしょう。ムンバイの不動産情報によると、同じ1BHKの平均家賃は約40,000ルピー〜100,000ルピー(約72,000円〜180,000円)になっています。

デリーやムンバイの高級住宅地では、家賃が日本の東京や大阪などの都市部と同等、あるいはそれを超えるケースもあります。

一方、中小都市や郊外では家賃を大幅に抑えることが可能です。例えば、チェンナイの家賃相場は、約25,000ルピー〜40,000ルピー(約45,000円〜72,000円)です。

地域による家賃の差は、インドに限らず日本の都市部と地方でもあります。移住や長期滞在を考える際には、この地域差を理解しておくことが重要です。

インドは電力不足の地域は光熱費が高い

インドの1ヶ月の平均光熱費は、電気、ガス、水道を含めて約10,000ルピー(約18,000円)が相場です。夏は40度近い日が続くため、光熱費が2倍程度になる可能性もあります。

インドでは、特に夏の暑い時期に電力不足が深刻化する地域があります。高温による電力消費の増加と、インフラ整備の不足が原因です。

例えば、ウッタルプラデシュ州やビハール州では夏季に定期的な停電が発生し、生活に大きな影響を及ぼしています。電力を安定供給するためにディーゼル発電機を使用する家庭もありますが、その結果、光熱費が高くなります。

また、電力不足は製造業などの産業活動にも影響を与えるため、企業が自家発電を活用するケースも少なくありません。電力不足による光熱費の高騰は、家計にとって大きな負担となり、地域によっては生活の質にも差が出ることがあります。

注意点としては、インドでは不当な請求をされる可能性があります。急激に光熱費が高くなった場合、不当な請求をされているかもしれません。

インドで生活する際は、光熱費の請求書を保管しておきましょう。

インドの通信費は日本よりもかなり安い

インドの通信市場は、近年の技術革新と激しい競争によって安価な価格でサービスが提供されています。特に、携帯電話やインターネットのデータプランは、日本や欧米の先進国に比べて格安です。

カナダのVisual Capitalistの調査によると、インドの1GBあたりのモバイルデータ通信料は0.09ドルでした。2024年2月現在、1ドル=約150円なので、日本円に換算すると約15円程度です。

日本のauで1GBのデータチャージをするためには1,100円必要なので、インドの通信費は格安だといえるでしょう。このようなインドの低価格政策は、膨大な人口を持つインド市場における消費者の拡大と通信技術の普及を促進しています。

また、インド国内で競争が激化しているため、多くの通信企業が価格だけでなくサービスの質の向上にも力を入れています。消費者にとっては、インドはより良いサービスをより安価に利用できる国です。

参照:Visual Capitalist「What Does 1GB of Mobile Data Cost in Every Country?」
参照:KDDI株式会社「チャージ料金・有効期間:データチャージ」

インドで1ヶ月生活するために必要な変動費

スパイスを売るインド人男性

インドで生活するためには、固定費の他に変動費も必要です。今回は、以下の変動費を紹介していきます。

  • インドの食費
  • インドの交通費
  • インドの交際費

特に生活する上で食費は重要になるので、詳しく解説していきます。

インドの食費は日本食を食べなければ安い

インドでの生活では、地元の食材や料理を選択することで食費を抑えることが可能です。インド各地の市場では、新鮮な野菜や果物、豊富な種類のスパイスが手頃な価格で販売されています。

一般的に、インドの1ヵ月の食費は約20,000ルピー(約36,000円)程度です。外食をする際は、ローカルフードで約100ルピー〜150ルピー(約180円〜270円)、日本食や外国料理は約500ルピー〜2,000ルピー(約900円〜3,600円)ほどかかります。

インドの都市部にある日本食レストランでは、一食あたり数千ルピーが必要となることも珍しくありません。インドの豊かな食文化を楽しむことは、経済的な観点からも文化的な経験を深める観点からも、非常に価値があります。インドの多様な料理を楽しむことは、食費を抑えるだけでなく、豊かな文化に触れる絶好の機会です。

参照:インドのおすすめ食べ物TOP10!食事マナーやお腹を壊さないポイントも

インドの交通費はタクシーや配車アプリが中心

インドの都市部では、通勤の移動手段としてタクシーや配車アプリの利用が一般的です。手軽さとコストパフォーマンスの良さで、都市部の住民だけでなく海外の訪問者からも高い支持を得ています。

インドのタクシーの相場は10分あたり約75ルピー~150ルピー(約135円~270円)、ウーバー(Uber)の相場は10分あたり約50ルピー〜60ルピー(約90円〜108円)です。

バスや電車などの公共交通機関も利用価値がありますが、通勤時間帯に混雑し、予定通りに目的地に辿りつけない可能性がある点がデメリットです。

配車アプリを利用すれば目的地まで直接移動できるため、特に暑い日や荷物が多い時に便利です。しかし、交通状況によっては料金が高くなる場合もあります。

移動する際には、交通費と利便性のバランスを考慮する必要があります。

インドではさまざまな交際費がかかる

インドでの交際費は、一般的に約15,000ルピー(約27,000円)が相場です。

インドの社会生活は、家族や友人、ビジネス関係でのつながりが重要視されます。年間を通じて多くの宗教的、社会的行事があり、イベントへ参加するためには交際費が必要です。

例えば、ディワリ(光の祭典)やホーリー(色の祭典)などの祝祭日には、ご馳走を食べたり家族や友人への贈り物を交換したりすることが一般的です。ビジネスの場では、取引先や同僚との関係を築くために、食事会や小さな贈り物の交換が行われます。

また、インドで本場のヨガを体験したりサーフィンなどのレジャーを楽しんだりする人も多数います。インドでは、交際費は単なる出費としてではなく、人間関係を深めてビジネス上のネットワークを広げるための投資と考えるのが特徴です。

そのため、新しい友人を作ることやビジネス関係を発展させることに積極的な人々は、交際費を惜しまない傾向にあります。

参照:インドのカラフルな春の祭典ホーリー祭の歴史と魅力・注意点を徹底解説

インドの平均年収と最低年収

裁縫をするインド人女性

インドで生活するためには、インドの平均年収と最低年収を把握する必要があります。

  • インドの平均年収
  • インドの最低年収

上記を解説するので、インドで生活する際の参考にしてみてください。

インドの平均年収は384,000ルピー(約680,000円)

インドの経済は成長を続けていますが、その平均年収は384,000ルピー(約680,000円)と、日本の平均年収の約1/7です。インドの平均年収は、地域や産業間の経済格差が大きいのが特徴です。

例えば、IT、金融、製薬業界などの成長産業に従事する都市部の労働者は、国内平均を大きく上回る収入を得ています。これに対し、農業が中心の地域や、インフォーマルセクター(非正規雇用)に属する労働者は、低い収入に甘んじています。

インドの経済格差は経済発展において重要な課題となっており、政府や民間企業による教育機会の拡大やスキルアップトレーニングの提供が必要です。

参照:ASIA to JAPAN「インドの平均年収|中国を抜き、世界人口ランキング1位に君臨したインドの平均月収とは?」

インドの最低年収は1,625,000ルピー(約2,925,000円)以上

インドでは外国人労働者は、最低年収が1,625,000ルピー(約2,925,000円)以上ないと就労ビザを発行できません。そのため、日本人がインドで働く際は、1,625,000ルピー(約2,925,000円)以上の年収を得られます。

例えば、ソフトウェア開発、データサイエンス、エンジニアリング、医療などの分野では、インドの平均年収ではなく、国際的な基準に沿った年収が設定されています。これらの分野で活躍する専門家はインド国内だけでなく、海外の企業からも高い評価を受けているためです。

インドで高収入を得る職種は高い教育水準と専門的なスキルが必要とされるため、全ての労働者がこの恩恵を受けられるわけではありません。日本で専門職をしている人は、インドで高い年収を維持しやすいといえます。

参照:Carrer-World「【2024年最新】インドの平均年収や月収を解説!人気職業や物価、生活費もわかりやすく紹介」

インドで生活しやすい都市と物価の傾向

インドの都市

日本人がインドで生活する際に、おすすめの都市は以下のとおりです。

  • デリー
  • バンガロール
  • チェンナイ

特にチェンナイは、物価も安いので生活しやすい都市になっています。

デリー

デリーはインドの首都で、政治、歴史、文化の中心地として知られています。デリーと近郊都市には1,200以上の日系企業があり、6,000人以上の日本人が暮らしています。

インドでの生活に不安を感じる人は、日本人が一番多いデリーでの生活がおすすめです。

全国から集まる人々によって多彩な食文化や祭りが楽しめる一方で、物価が高く、特に住宅費が他のインドの都市と比較しても高額なのがデリーの特徴です。交通渋滞はありますが、メトロやバスなどの公共交通網の発達によって市内の移動は不自由しません。

参照:インドのニューデリーについて解説!|デリーの違いと進出についても

バンガロール

バンガロールは、インドのシリコンバレーと称され、テクノロジーとイノベーションの中心地として有名です。多くのIT企業が集まることから、高い技術力を持つ専門職の若者が国内外から集まっています。

物価はデリーやムンバイに比べるとやや低めですが、急速な都市成長に伴い生活費は上昇傾向にあります。都市計画が整っているため、生活費を賄える人には住みやすい都市です。

バンガロールの温暖な気候と安全な居住環境は、日本人に限らず多くの人々にとって魅力的です。

参照:【進出必見!】インドのバンガロールを解説!進出をおすすめする理由も紹介

チェンナイ

チェンナイは、自動車産業やIT産業が盛んな南インドの経済的、文化的中心地です。伝統的なタミル文化と現代的なライフスタイルが見事に融合しており、市内には古い寺院や文化遺産が多く残っています。

新しい商業施設や日本食レストランも増加し、豊富な海鮮料理を楽しめるのがチェンナイのメリットです。物価はデリーやバンガロールと比較して低めで、温暖な気候と日本人向けの食事が多いことから近年人気になっている移住地です。

参照:インドのチェンナイの過ごしやすさや観光スポットを紹介!進出面についても解説

まとめ:インドの物価は地域によって大きく異なる

インドの住宅街

インドの平均年収や物価指数を見ると日本よりも安いと感じますが、大都市では生活費が日本と同等かそれ以上になる地域もあります。インドでの生活を考える際は、ITなどの専門職で高い年収を得るか、在宅ワークで日本と仕事をすることで無理のない生活を送れるでしょう。

郊外は治安やインフラの懸念点が多いので、デリー、バンガロール、チェンナイなど比較的大きな都市で生活するのが望ましいです。現地の食材や食堂の利用など、できるだけ生活費を抑える工夫をしてみてください。

インドはこれからも経済成長と発展が期待できる国です。インドでの生活に憧れている人は、早めに転職や移住の行動を起こしてみましょう。