インドと他国との関係|アメリカ・中国・日本・ロシアなどとの歴史とこれから

急激な人口増加と経済成長で注目を集めるインドですが、外交は平坦ではありません。多くの国と関係を築いているため、対立や争いに発展することもあるためです。

今回は、インドと他国の関係について解説します。先進国や近隣諸国との関係性を知ることで、インドの方向性が見えてくるでしょう。

なぜインドは外交で中立を保ってきたのか

国連の旗

インドは1947年の独立以来、外交で中立を保ってきました。この中立主義には、複数の重要な要因が影響しています。

インドの外交姿勢について、詳細に解説します。

インド独立直後の国際情勢

インドが独立した1940年代後半は、第2次世界大戦後でした。世界はアメリカとソ連(現ロシア)の冷戦に突入します。

この時期、多くの国々はどちらかの陣営に属して、自国の安全や経済的利益を確保しようとしました。しかし、インドは中立を選びました。

これにより、インドは東西冷戦の影響を受けず、独自の外交政策を展開します。この中立的な姿勢は、インドが他国とパートナーシップ関係を築く上で有利に働きました。

国内の多様な社会構造

インドは、文化的・宗教的・言語的に多様な国です。

ヒンドゥー教、イスラム教、キリスト教、シク教など多くの宗教が共存していて、州ごとに異なる公用語や文化も存在しているためです。

この多様性をまとめるためには、中立的な外交が必要でした。

特定の国に偏ることは、国内対立を招く可能性があります。インドの中立姿勢は国内安定に重要でした。

非同盟運動のリーダーシップ

インドは冷戦時代に非同盟運動をリードしました。非同盟運動とは、冷戦の二大陣営(アメリカとソ連)に属さない属さない国々の集まりです。

インドの初代首相ジャワハルラール・ネルーは、この運動を推進しました。非同盟運動でインドは発展途上国との連帯を深め、独自の影響力を持ちはじめました。

インドと近隣諸国との関係

インドの街

ここからはインドと他国の関係にスポットを当てていきます。まずはインドと以下の近隣諸国との関係から解説します。

  • ネパール
  • パキスタン
  • バングラデシュ
  • スリランカ

インドと近隣諸国は度々戦争があり、現在も問題が多いため、関係に注目することが大切です。

ネパールとは文化が似ていていい関係が続いている

インドとネパールは、文化的・歴史的に深い関係性を持っています。両国はヒンドゥー教や言語、風習の類似性で強固な関係を築いています。

例えば、インドのヒンドゥー教の神々や伝説はネパールでも広く信仰されてきました。

また、サンスクリット語やヒンディー語とネパール語の類似性も文化的つながりを示しています。

ネパールはインドにとって重要な友好国で、経済、貿易、安全保障で協力しています。インドはネパールの最大の貿易相手国で、インフラ整備や経済発展に重要な役割を果たしてきました。

また、両国は地理的に隣接しているため、国境を越えた人的交流や文化交流も活発です。このような相互依存の関係は、両国間の友好関係をさらに強固にしています。

インドとネパールの関係については、以下の記事を参照してください。

参照:インドとネパール隣接する2つの国の違いとそれぞれの特徴を解説

パキスタンとは分離独立して以降対立している

インドとパキスタンは1947年の分離独立以来、緊張が続いています。対立の原因は、異なる宗教観とカシミール地方を巡る領土問題です。

カシミールを巡り、インドとパキスタンは3度の戦争や多くの衝突を経験しました。特に1947年、1965年、1971年の戦争は、両国間の対立をより一層深めました。

しかし、インドとパキスタンは和平交渉を模索しています。1972年のシムラ協定や1999年のラホール宣言で平和的解決を目指しました。

また、経済や貿易の分野でも、相互利益を追求する動きが見られます。地域の安定と繁栄を目指して、両国は引き続き対話を重ねています。

インドとパキスタンの関係については、以下の記事を参照してください。

参照:インドとパキスタンの仲が悪い理由|両国が分裂した歴史と現在を解説

バングラデシュはインド帝国時代は同じ国だった

バングラデシュはかつてインド帝国の一部で、1971年にインドの支援で独立しました。インドは独立戦争で軍事・外交支援を行い、経済やインフラでも協力を続けています。

インドはバングラデシュの主要な貿易相手で、貿易額は年々増加しています。

例えば、インドは製品やサービスを輸出し、バングラデシュは繊維製品や農産物を輸出してきました。

また、文化交流の面でも、インドとバングラデシュは深いつながりがあります。両国は言語や文化、宗教的な共通点を共有し、相互理解を深めています。

インドとバングラデシュの関係については、パキスタンも密接に関わっているため複雑です。以下の記事で3国の関係性を解説しているので、参考にしてください。

参照:バングラデシュの独立を支援したインド|反インド運動とパキスタンとの溝

スリランカとは過去に戦争をしていた

インドとスリランカは歴史的に緊張と協力を続けてきました。

特に、1983年から2009年まで続いてきたスリランカ内戦では、インドが和平の仲介役を務めたことも記憶に新しいでしょう。

1987年には、インドとスリランカはスリランカ・インド平和協定成立を結び、インド平和維持軍(IPKF)がスリランカに派遣されました。

しかし、一部の介入が反発を招き、一時的に関係が悪化しました。現在は、経済協力や地域の安全保障において連携を深めています。

地域の安全保障やテロ対策においても、両国は情報共有や共同訓練を通じて協力を強化しています。

このような多面的な協力関係は、両国の安定とインド洋の平和維持に欠かせないものになりました。インドとスリランカの関係については、以下の記事を参照してください。

参照:インドとスリランカの関係|歴史的背景と中国との関係について解説

インドと先進国との関係

世界地図

インドは先進国とも積極的に関係を築いてきました。特に以下の国との関係は重要です。

  • 中国
  • アメリカ
  • ロシア
  • 日本

そのなかでも、中国との関係は複雑で、両国は牽制し合っています。

中国とは長らく不安定な関係が続いている

インドと中国の関係は、領土問題や経済競争で不安定です。特に、ヒマラヤ山脈を挟んだ国境地帯での対立が長らく続いてきました。

2020年にはガルワン渓谷での衝突が発生し、死傷者も出ました。これにより、インドと中国は互いに警戒を強めています。

しかし、経済協力や貿易においては一定の進展も見られます。両国は自国で巨大な市場を持っているため、経済的な相互依存関係が強まっているためです。

インドと中国の関係については、以下の記事を参照してください。

参照:インドと中国の関係は?どちらに進出するのがおすすめか徹底解説!

アメリカとは今後さらなる関係強化を目指している

インドとアメリカの関係は、21世紀に入り急速に強化されました。冷戦時代には距離を置いていた両国ですが、現在は経済、軍事、技術分野での協力が進んでいます。

インドはアメリカにとって重要な戦略パートナーで、特にインド太平洋地域の安全保障で連携を強化しています。

例えば、「QUAD(クアッド)」と呼ばれる日米豪印戦略対話は、自由で開かれたインド太平洋地域の実現に欠かせません。

また、両国は定期的に軍事演習を行い、情報共有や技術移転も進めています。今後も、経済的な結びつきや戦略的パートナーシップをさらに強化することが期待されています。

インドとアメリカの関係については、以下の記事を参照してください。

参照:インドとアメリカが急速に関係改善する理由|日本を含む事実上の同盟に向けて

ロシアは独立当初のインドを支えてきた重要なパートナー

インドとロシアの関係は、インドの独立初期から友好関係を維持しています。

冷戦時代、ソビエト連邦(現ロシア)はインドを軍事や経済で支援し、発展に貢献しました。この時期、インドはロシアから多くの支援と軍事装備を受け、関係は密接でした。

現在もインドとロシアは強固なパートナーです。ロシアのウクライナ侵攻時もインドは明確に反対しませんでした。

インドとロシアの関係については、以下の記事を参照してください。

参照:ウクライナ侵攻でも変わらぬインドとロシアの絆|2024年現在の関係を解説

インドと日本の関係性は良好を保っている

インドと日本の関係は、経済協力や技術交流を中心に良好です。日本はインドにとって重要な経済パートナーで、インフラ整備や開発プロジェクトで支援しています。

例えば、日本はインドの高速鉄道プロジェクトに積極的に関与し、技術や資金を提供しています。

また、両国はアジア太平洋地域の安定と繁栄を目指した協力も続けてきました。

インドと日本は「日印戦略的グローバルパートナーシップ」にもとづき、経済、政治、安全保障分野での連携を強化しています。

定期的な首脳会談や高官対話を通じて、相互理解と協力を深めています。インドと日本の関係については、以下の記事を参照してください。

参照:日本とインドの関係|新旧の経済大国の今後についても解説

インド・アメリカ・中国のトロイカ体制

ヒマラヤ山脈

インド、アメリカ、中国の三国は、世界の経済や政治で重要なトロイカ体制を形成してきました。各国は異なる立場や利害関係を持ち、牽制や協力をしています。

インドは民主主義と経済成長で、世界への影響力を強めています。

アメリカは、世界一の経済大国として、長年政治や経済をリードしてきました。

中国は、一帯一路構想を通じてアジア全体での影響力拡大を目指していて、インドと競争する場面も増えています。

このトロイカ体制は、今後の国際秩序に大きな影響を与えると考えられています。

協力と競争が複雑に絡み合う中で、インド、アメリカ、中国の関係は今後の国際情勢を左右する重要な要素となるでしょう。

まとめ:インドは他国とバランスを取りながら外交を続けている

インドにある日本の店

インドは1947年の独立以来、中立的な外交政策を採用してきました。そしてインドは冷戦時代、非同盟運動のリーダーとして独自の立場を維持しました。

その姿勢は現在も変わらず、アメリカやロシアだけではなく、近隣諸国ともバランスを維持しながら外交を続けています。

印米中のトロイカ体制は今後の世界に影響を与えるため、インドの動向に注目が必要です。