インドを旅行する際は現地の食事やマナーが気になりますよね。インドの食文化は非常に多様で、宗教や地域によって異なる食べ物やルールがあります。
この記事ではインド旅行初心者向けに、インドの食事マナーや宗教ごとの注意点、さらに旅行中に味わいたいおすすめの食べ物を解説します。
安心して現地の食文化を楽しめるよう、ぜひ参考にしてください。
インドでの食事の特徴
インドの食文化は、地域によって大きく異なります。北インドと南インドで主食が異なるのと同様に、料理のスタイルにも地域ごとの特色があります。
インド旅行ではエリアごとに異なる食の魅力を味わえるため、食べ物を通じて文化の奥深さを感じられるでしょう。
地域によって異なるインドの食文化
インドの食文化には、地域ごとの気候や歴史が深く影響しています。北インドは寒暖差が激しいため、身体を温める目的で油やクリーム、バターが料理によく使われていて味わいも濃厚です。
また、北インドはイスラム文化の影響も強く、ムガル帝国時代に導入されたビリヤーニやケバブなど、肉料理が多いことが特徴です。
一方、南インドは温暖で降雨量が多く、食材にはココナッツやタマリンドがよく使われ、味付けはさっぱりしています。
さらに、南インドでは、豆や米を中心にした軽めのメニューが日常的に食べられています。
地域別のインドの主食
インドの主食は大きく小麦製品と米製品に分かれますが、それぞれの地域でさらにバリエーションがあります。
北インドでは主食としてチャパティやナンが主流で、スパイスの効いたカレーと一緒に手で食べるのが一般的です。
南インドでは米を中心とした料理が豊富で、炊き込みご飯であるビリヤーニが特に有名です。
また、南インドの人々はイディリやドーサなどの発酵米粉を使った料理を軽食として好みます。これらの発酵食品は消化が良く栄養も豊富です。
地域別のインドの朝食
インドの朝食は、地域ごとにその土地の食材や食文化を取り入れた独自のメニューが提供されます。
北インドではチャパティやパラタなどの小麦粉を使ったパン料理が一般的で、これにヨーグルトや漬物を添えてシンプルに楽しむのが一般的です。
特に、具材を包み込んだアールー・パラタ(ジャガイモ入りのパンケーキ)は、朝食として栄養価が高く人気のメニューです。
一方、南インドの朝食では、米粉を発酵させたイドゥリやドーサが定番で、ココナッツチャツネやサンバル(豆のスープ)と共に提供されます。インドの地域別の食文化は、以下の記事で詳しく解説しています。
参照:インドの主要文化について解説!インド進出の際に気を付けるべきビジネス習慣も
インド旅行で守るべき食事マナー
インドには独自の食事マナーがあり、事前に知っておくと現地での食事をより楽しめます。特に、手を使った食べ方や食事中の所作には注意が必要です。
インド観光で覚えておくべき基本的な食事マナーを3つ紹介します。
インドの食事は手で食べる?
インドでは食事を右手で食べるのが一般的です。インドでは左手は「不浄」と考えられているため、食事中はできるだけ左手を使わないようにします。
手で食べることによって食材の温度や質感を直接感じられ、それが料理の味をより深く体験できます。
ホテルやレストランではスプーンやフォークを提供してくれることが増えましたが、現地の人と一緒に食事する際は右手を使って食べてみましょう。
インドでは食事を残さずに食べるのがマナー
インドでは食べ物を残さず食べることが礼儀とされており、食べ物を大切にする文化が根付いています。
インドの人々は「無駄にせず食べきる」ことを大切にしていて、料理を取り分ける際には食べきれる量を盛るのが望ましいとされています。
こうした食事文化に配慮し、観光客も少しずつ取り分けるなどの工夫をして完食するよう心がけてみましょう。
その他の食事マナー
インドでの食事には他にも気をつけたいマナーがあります。たとえば、食事の際にテーブルで手肘をつくのは好ましくありません。
また、他人の食べ物には触れないようにし、食器や料理を共有する際にも注意が必要です。口に入れたものを一度皿に戻すこともマナー違反とされます。
こうした細やかな配慮を心がけることでインド文化への尊重が伝わり、現地の人々と気持ちよく食事を楽しめます。より詳細なインドの食事マナーを知りたい人は、以下の記事を参考にしてください。
参照:インドの正しい食事マナーを徹底解説|食事の際のタブーや注意点も紹介
インドは宗教によって食事が異なる
インドでは宗教が人々の日常生活に深く根付いていて、食事にも大きく影響しています。
ヒンドゥー教・イスラム教・キリスト教・シク教などの主要な宗教それぞれに、食材の選択や食事の仕方に独自のルールが定められています。
宗教ごとの食事制限を理解すると、インドの食文化をより深く知れるようになるのでおすすめです。
インドで宗教別に禁止されている食事
インドの宗教ごとに制限されている食材を紹介します。インド観光の際にどの食材が食べられるかの判断材料にしてください。
ヒンドゥー教
インド人口の79.8%を占めるヒンドゥー教徒にとって、牛は神聖な存在です。そのため、ヒンドゥー教徒は一般的に牛肉を食べません。
特に厳格な家庭では、乳製品以外の動物性食品を避けることもあります。
また、礼拝など特別な日には純菜食が推奨される場合もあります。
イスラム教
イスラム教徒は豚肉を禁止食材としています。イスラム教徒が食べる食材は「ハラール」と呼ばれるイスラム教の戒律に沿ったものでなければなりません。
インドのイスラム教徒はビリヤーニなどの肉料理も食べますが、豚肉を含む料理には注意が必要です。
キリスト教
キリスト教徒の多いインドのゴア州では植民地時代に伝わった西洋風の食文化が根付いていて、豚肉や牛肉も一般的に食されています。
ポーク・ヴィンダルーやビーフカレーなど、インド料理にポルトガル風のアレンジが加わった料理は特に人気があります。
キリスト教では禁止されている食材は特にありませんが、伝統へ配慮して交流するのが円滑なコミュニケーションのポイントです。
シク教
シク教徒の食事規制は比較的緩やかですが、一部の信者は肉を避ける傾向があって宗教行事の際には菜食を守ります。
儀式的に屠殺された肉は禁止されているので、イスラム教のハラール食は食べられません。アルコールやタバコの禁止など規制もありますが、シク教の教義に従う程度は個人差があります。
野菜はどの宗教でも食べられる
宗教ごとの食事制限があるインドでも、ほとんどの宗教において野菜は制限なく食べられます。そのため、野菜料理は宗派を問わずに安心して楽しめます。
インドのホテルやレストランにベジタリアンメニューが豊富なのは、宗教的配慮からです。
野菜とレンズ豆を煮込んだ「ダール」やスパイスで味付けしたポテト料理「アルー・ゴビ」など、野菜を主体とした料理はインドの多くの地域で親しまれています。
インドの宗教事情については、以下の記事で詳しく解説しています。
参照:インドの宗教と進出の関係について解説!気をつけるポイントについても紹介
インドでおすすめの食事メニュー
インド旅行中にぜひ試してほしい定番料理を紹介します。インド料理は多彩な香辛料が使われているので、日本料理とは異なるユニークな風味を持っているのが特徴です。
数あるインド料理からおすすめの食事メニューを10品紹介します。
ムルグマカーニ(Murgh Makhani)
「バターチキン」として世界的にも有名なこの料理は、インド料理の中でも特に人気があります。トマトベースのクリーミーなカレーソースに柔らかいチキンが絡み、濃厚な味わいが楽しめます。
バターやクリームが多く使われるため、口当たりがとてもまろやかで、ナンやライスとの相性も抜群です。日本でも馴染みがあるインド料理なので、初めてのインド旅行にもおすすめです。
タンドリーチキン(Tandoori Chicken)
タンドリーチキンは、タンドールと呼ばれる高温の窯でスパイスに漬け込んだチキンを焼き上げた料理で、外は香ばしく中はジューシーに仕上がっています。
ヨーグルトとスパイスでマリネすることで肉が柔らかくなり、奥深い風味が楽しめます。真っ赤な見た目もインパクトがあり、スパイシーな味わいが好みの方には特におすすめな料理です。
ビリヤーニ(Biryani)
ビリヤーニは、米・チキン・魚・野菜などをスパイスで炊き込んだインド版炊き込みご飯です。南インドのビリヤーニはドライフルーツやココナッツミルクを使うなど、地域特有の具材や味わいが楽しめます。
風味豊かなスパイスがたっぷりと使われていて、噛めば噛むほど異なる味が楽しめる豪華な一品です。
ナン(naan)
日本でも親しまれているナンは、ふんわりとした柔らかいパンで、カレーと一緒に食べるのが一般的です。
タンドール窯で焼くことで表面は香ばしく、内側はモチモチとした食感に仕上がります。チーズナンやガーリックナンなどアレンジも豊富で、どのナンもカレーとの相性が抜群です。
サグ・パニール(Sagh・Paneer)
サグ・パニールはほうれん草をベースに、パニールと呼ばれるインドのチーズが加えられたカレーです。
ほうれん草のペーストがスパイスと混ざり合い、マイルドでクリーミーな味わいが楽しめます。ベジタリアン向けのメニューとしても人気があり、健康的で優しい風味が特徴です。
ほうれん草は栄養価が高いので、栄養バランスを気にしている観光客にもおすすめです。
マサラ・ドーサ(Masala・Dosa)
マサラ・ドーサは南インド発祥のクレープ状の料理で、薄く伸ばして焼いた生地にスパイス風味のポテトフィリングを巻いて提供されます。
カリッとした生地の食感とスパイシーな具材の組み合わせが絶妙で、ココナッツチャツネやサンバル(豆のスープ)を添えて食べるとさらに南インドらしい味わいが楽しめます。
南インドを観光する際はぜひとも本場のマサラ・ドーサを食べてみてください。
グラブ・ジャムン(Gulab・Jamun)
グラブ・ジャムンはインドの伝統的なデザートで、ドーナツをシロップに浸した甘いスイーツです。生地がシロップをたっぷり吸い込んでいるため、しっとりとしていて濃厚な甘さが楽しめます。
スパイシーなインド料理の後のデザートにぴったりで、独特の甘味はインドらしい贅沢な風味が魅力です。
チャパティ(Chapati)
チャパティはインドの主食のひとつで、全粒粉で作られた無発酵パンです。シンプルな味わいでカレーの味を引き立ててくれます。
チャパティをちぎってカレーにつけて一緒に食べるのが一般的な食べ方です。北インドの家庭ではチャパティが主食で、ナンと異なって軽い口当たりが魅力です。
ダール・マカーニ(Dal・Makhan)
ダール・マカーニはひよこ豆をクリーミーに煮込んだカレーで、インドのベジタリアンに人気の料理です。
バターやクリームを使った濃厚な味わいが特徴で、スパイスが効きつつも優しい風味が楽しめます。ナンやチャパティと合わせて食べると、素材の豊かな味わいが堪能できます。
バルフィー(Barfi)
バルフィーはミルクベースのインド伝統のスイーツで、香ばしい風味が特徴です。
ピスタチオやアーモンドを加えてアレンジされることも多く、お祝いの場や特別な日に提供されるインド伝統のお菓子です。
香辛料を使った料理が多いインドならではの甘さを象徴する一品です。インドの屋台グルメや食あたりについては、以下の記事で詳しく解説しています。
参照:インドのおすすめ食べ物TOP10!食事マナーやお腹を壊さないポイントも
インドのお菓子に興味のある人は、以下の記事を参照してください。
参照:インドのお菓子ランキングTOP28!お土産が買えるおすすめスーパーマーケットも紹介
インドでの食事でお酒は飲める?
インドでは、飲酒が許可されている地域と禁止されている地域があります。
飲酒が許可されている地域では観光地・バー・レストランなどでアルコールが提供されているため、観光客も比較的自由にお酒を楽しめます。
しかし、一部の州では宗教的・文化的理由から飲酒が厳しく制限されている場合があるため、事前に確認しておくと安心です。インドでのお酒に関する基本情報と観光客におすすめのお酒を紹介します。
インドでは州によってお酒が禁止されている
インドには、宗教や文化的な背景からアルコールの販売や消費が禁止されている州がいくつかあります。
たとえば、グジャラート州やビハール州、ナラガント州では州法によってアルコールの販売や提供が禁じられています。
そのため、上記の州では基本的に飲酒ができないと考えたほうがいいでしょう。
その他の観光地や国際的なホテルなどでは、観光客向けにアルコールを提供している場合が多々あります。
インドで楽しめるおすすめのお酒
飲酒が許可されている州では、インドならではのお酒を試してみましょう。インドにはユニークな地酒があるので、現地のお酒を体験するのもおすすめです。
オールドモンク(Old Monk)
オールドモンクはインドを代表するラム酒で、国内外で愛されている人気のお酒です。甘く濃厚な味わいとスパイシーな風味が特徴で、ストレートでもカクテルでも楽しめます。
オールドモンクはリーズナブルな価格で高品質なため、観光客におすすめのお酒です。
キングフィッシャー(Kingfisher)
キングフィッシャーはインドの代表的なビールで、飲みやすいラガービールとして知られています。
アルコール度数が高い「キングフィッシャー・ストロング」もあり、暑いインドの気候にぴったりなさっぱりとした味わいが特徴です。ビール党の観光客は日本のビールとの違いを楽しんでみましょう。
フェニ(Feni)
フェニは南インドのゴア州で作られる地酒で、カシューナッツやココナッツを発酵させて造られます。
特にカシューフェニは地元住民にも人気で、ゴア州を訪れる際には一度は味わいたいお酒です。
お土産としても購入できるので、お酒好きな人への贈り物におすすめです。インドのお酒事情は、以下の記事にまとめているので参考にしてください。
参照:インドのお酒事情を徹底解説!有名なお酒紹介と旅行中の楽しみ方も解説
ワイン好きな人は、以下の記事でインドのワインへの知識を深めてみてください。
参照:【ワイン愛好家必見】インドの有名ワイナリーとおすすめワインを解説
インドでの食事はマナーを守って美味しく食べよう
インド観光で知っておくべき食事マナーや宗教上の注意点、そしておすすめのインド料理を紹介しました。
インドは多様な文化と食習慣が共存する国で、地域ごとに異なる食文化や宗教ごとに独自の食事ルールがあります。
インドの文化的背景を理解し、現地の習慣に敬意を払いながら食事を楽しんでみましょう。初めてのインドでも安心して現地の食事を堪能し、多彩な味わいを体験するお手伝いができましたら幸いです。