インドは広大な土地と豊富な人口を有し、経済成長が著しい新興市場です。豊かな歴史と文化が根付く中、ITや製造業などの成長産業も急速に発展しています。
そんなインドでの仕事を検討している人に向けて、インドの仕事事情や主要産業、日本企業の進出状況、おすすめの進出先都市を解説します。
インドでのビジネスの魅力と注意点を押さえ、次なる進出先として検討してみませんか?
インドで仕事する際に必要な言語は?
インドは多言語が使われる国なので、地域や職業によって必要とされる言語が異なります。インドの公用語はヒンディー語ですが、ビジネス言語として英語も使われています。
特に都市部や多国籍企業での業務では英語が主流で、ビジネスシーンではヒンディー語の知識がなくても支障は少ないでしょう。
英語がインドで広く使われている背景には、インドの教育システムや歴史的な英国統治の影響があります。
さらに、都市部の若年層は英語に精通している人が多く、ITやサービス業では英語でのコミュニケーションが当たり前となっています。
ただし、地方や特定の業種ではヒンディー語や地域言語が求められる場合もあるため、現地のニーズを把握しましょう。インドの言語については、以下の記事で詳しく解説しています。
参照:インドの公用語はヒンディー語?州ごとの公用語と多言語事情を解説
インドはカースト制度によって仕事が決まる
インド社会には伝統的なカースト制度が根付いていて、職種の選択や生活に影響を与えています。
特に農村部や地方ではカーストが職業選択や結婚の制約として残っているため、家業や伝統的な仕事が世襲制のように継がれることも少なくありません。
都市部やIT・サービス業などの新興産業ではカーストによる職業選択の影響が薄れてきているので、高学歴の若者を中心にカーストを意識しない仕事選びが進んでいます。
インドのカースト制度の詳細は、以下の記事で解説しています。
参照:インドのカースト制度とは?進出・経営への影響や他のメリットについても
インドの仕事と主要産業
インド経済の中心を成す主要産業は、主にIT、農業、製造業、サービス業の4つです。これらの主要産業は急速に発展していて、異なる魅力を持っています。
IT産業
インドのIT産業は世界的に高く評価されていて、その中心地であるベンガルール(バンガロール)は「インドのシリコンバレー」とも呼ばれます。
この地域では、ソフトウェア開発、アプリケーション開発、ITサービスの提供が急成長し、インド全体の輸出額の大部分を占めるほどにまで成長しています。
米国や欧州の大手IT企業が業務をアウトソーシングするケースも多く、インドの豊富なIT人材と高い英語力は世界のIT産業に欠かせない存在です。
農業
農業は2017年のインドの国内GDPで17.3%を占め、労働人口の約半数が従事している重要な産業です。インドではさとうきび、米、麦などの生産が豊富で、農業は特に地方での生活の基盤となっています。
しかし、インドの農業はまだ近代化が進んでおらず、伝統的な方法に頼る農業が多く見られます。
このような農業分野での近代化が進めば、インドの食糧生産量はさらに増加し、経済への貢献も大きくなるでしょう。
製造業
インドの製造業は、国内経済を強化するために注力している産業です。特にモディ首相の掲げる「メイク・イン・インディア」政策によって大きな成長を遂げています。
この政策は、国内での製造拠点の拡大を目的としていて、自動車産業や電気機器の製造業が急速に発展しています。
インドの製造業の強みは、豊富な労働力と低コストで国際市場へ製品を提供しやすいことです。
また、インド政府も外資系企業の参入を促進しているため、日本企業を含めたさまざまな国の企業が生産拠点をインドに設置しています。
サービス業
サービス業は、インドのGDPにおいて重要な役割を果たしていて、観光や宿泊を含む分野が特に活発です。世界的に美容や健康志向が高まっているので、本場のヨガを体験しに来る観光客も増加しています。
また、歴史的な建造物や自然観光地が豊富なインドは、各地で多くの海外観光客を惹きつけています。サービス業を含むインドの主要産業について知りたい人は、以下の記事を参照してください。
参照:インドの主要産業はIT産業?GDP成長率と海外への主な輸出品を解説
インドで活躍している日本企業5選
インド市場には多くの日本企業が参入し、さまざまな分野で価値を提供してきました。
消費者の需要に応えるためにインドの市場特性に適応した製品やサービスを提供し、長年にわたり消費者との信頼関係を築いている企業がいくつもあります。
その中でも、インド進出で成功を収めている日本企業を5社紹介します。
スズキ
スズキはインドの自動車市場で圧倒的なシェアを誇り、「マルチ・スズキ」というブランドで消費者に愛されています。
マルチ・スズキは1981年にインド市場に参入し、インドの消費者ニーズに応じた低価格で高品質な自動車の提供で大成功を収めました。
小型で燃費の良い自動車を好むインドの消費者層に向け、現地生産と現地ニーズに合わせた改良を続けています。
都市部から地方まで広く普及し、現在では「アルト」「スイフト」「バレーノ」などのモデルが親しまれています。マルチ・スズキはインド国内で長年トップを維持している企業です。
ホンダ
ホンダはインド国内の二輪車および四輪車市場で成功を収めている日本企業のひとつです。
特に経済的で扱いやすいホンダのバイクが人気で、インドの広大な都市圏での移動手段として人気を集めています。
インドでは渋滞が激しいことから二輪車の需要が高く、ホンダはリーズナブルな価格と優れた燃費性能で、市場に定着しました。
また、ホンダの四輪車もインド市場向けにデザインされ、「シティ」や「アメイズ」などの鮮麗されたモデルが販売されています。
ホンダは高品質な製品に加え、現地に密着したサービス展開でインド市場での存在感を強めています。
日本製鉄
日本製鉄は、インドの急速に成長するインフラ市場に向けて鉄鋼製品を提供している企業です。
都市化やインフラ整備が進むインドでは鉄鋼の需要が急増していて、日本製鉄はこれに応える形で、現地パートナーと協力して高品質な鉄鋼製品の供給を行っています。
インド国内の建設プロジェクトやインフラ開発に向けた鉄鋼の需要は今後も増加が見込まれているので、日本製鉄はインドでの生産体制を強化しながらさらなるシェア拡大を目指しています。
日本製鉄は、品質へのこだわりと安定した供給体制で、現地での信頼を着実に築いている日本企業です。
クボタ
クボタはインドの農業分野で活躍する日本企業のひとつで、トラクターや収穫機などの農業機械を提供しています。
インドの農業は労働集約的である一方、機械化の遅れが課題となっているため、クボタの農機具は農家にとって生産性を上げるために欠かせません。
特に、クボタの農機具は小規模農家向けに設計されているので、扱いやすさや耐久性が評価されています。
クボタは現地のニーズに応じた製品改良を行いながら、農機具の普及を通じてインド農業の効率や収穫量向上に貢献しています。
ダイキン工業
ダイキン工業は、インドのエアコン市場で強固な地位を築いている企業です。インドでは都市部の気温が40℃を超えることもあり、冷房需要が急速に増加しています。
特に、高温多湿な気候に適応した独自のエアコンが求められています。
ダイキン工業のエアコンはエネルギー効率が高く、環境にも配慮した製品として人気があり、インド市場での販売台数が急増しています。
さらに、ダイキン工業は現地でのアフターサービスにも力を入れ、顧客からの信頼を高めてきました。
製品の品質の高さだけでなく、迅速なメンテナンスやサポート体制によってインド市場でのプレゼンスを確立しています。ダイキン工業を含む日本企業の詳細は、以下の記事で解説しています。
参照:インドに強い日本企業5選|インド進出後の戦略や課題まで解説
日本企業が進出しやすいインドの都市
インドでは急速な都市化が進み、外国企業の進出に適した都市が増えています。
各都市が異なる強みと産業構造を持っているので、進出する業種やビジネスモデルに応じて最適な場所を選ぶことが重要です。
日本企業が進出しやすいインドの主要都市として、5つの都市を紹介します。
デリー(ニューデリー)
インドの北西にあるデリーは、政治と経済の中心地です。多くの政府機関や多国籍企業が集まっていて、インド全土を統括するビジネス拠点として適しています。
首都という立地から中央政府との連携が容易で、法令に関わる情報も迅速に入手できるのがデリーのメリットです。
デリーに拠点を置くことで、インド全土に対して効果的にビジネスを展開しやすくなります。デリーの詳しい情報は以下の記事で解説しています。
参照:インドのニューデリーについて解説!|デリーの違いと進出についても
アーメダバード
アーメダバードは、インド西部グジャラート州に位置し、特に製造業が盛んな地域です。グジャラート州は他の州と比較しても外国企業への規制が少なく、進出の際の手続きがスムーズです。
日本企業も多く進出していて、産業インフラが整ったインド有数の工業団地が多数あります。
アーメダバードは製造拠点を設ける際に理想的な環境で、効率的な物流とともにコスト削減が期待できます。
また、デリーやムンバイなどの経済圏にアクセスしやすいこともアーメダバードの魅力です。アーメダバードの詳細は、以下の記事で解説しています。
参照:インドのアーメダバード進出のメリットは?基本情報や観光スポットも解説
ムンバイ
ムンバイはインド最大の商業都市で、金融の中心地としても有名です。インドの株式市場が集中し、多数の金融機関や大手企業の本社が立地しています。
そのため、金融業やサービス業の進出にとっては最適な拠点です。
ムンバイはまた、インド随一の港湾都市なので、貿易の重要拠点でもあります。
ムンバイに進出することで、国内外の多様なビジネスネットワークにアクセスしやすくなり、輸出入をともなう業務も効率的に行えます。
日本の大手商社や金融機関も数多く進出しているので、現地のビジネス環境を支えるパートナーが見つかりやすいのも特徴です。そんなムンバイの治安や進出状況は、以下の記事で解説しています。
参照:インドのムンバイ進出はおすすめ!その理由とムンバイについても解説
チェンナイ
チェンナイはインド南部に位置し、自動車産業の中心地として発展しています。特に、自動車部品の製造や組み立てが盛んで、「インドのデトロイト」とも呼ばれています。
日系の自動車メーカーや部品サプライヤーが多く集まり、製造業のハブとして欠かせない都市です。
また、港湾都市として有名なチェンナイは、物流拠点としても優れているので輸出入がしやすい環境です。
自動車産業以外にもエレクトロニクス製造やIT関連の企業も多く、製造業からIT業務まで幅広くサポートする体制が整っています。チェンナイの気候や進出状況は、以下の記事で解説しています。
参照:インドのチェンナイの過ごしやすさや観光スポットを紹介!進出面についても解説
ベンガルール(バンガロール)
インド南部に位置するベンガルールは、「インドのシリコンバレー」として知られ、インドのIT産業の中心地として注目されている都市です。
多数のスタートアップ企業やテクノロジー企業が集まっているため、技術革新や研究開発に適した環境が整っています。
また、ベンガルールは優れたIT人材が豊富で、エンジニアやプログラマーの採用をしやすい点も大きな魅力です。
近年、日本企業もR&D拠点やITサービスセンターを設立し、ベンガルールを通じてグローバルな技術ネットワークを活用する動きが加速しています。
ベンガルールへ進出を検討している企業は、より詳細な情報を解説している以下の記事を参照してください。
参照:【進出必見!】インドのバンガロールを解説!進出をおすすめする理由も紹介
インドは市場が成長しているので仕事のやりがいがある
インドの仕事事情や主要産業、日本企業の進出状況を見てきましたが、インドは急速な経済成長と豊富な労働力を持つ魅力的な市場です。
IT産業や製造業が特に成長していて、日本企業も数多くインドへ進出しています。言語や文化的な違いはありますが、インドでのビジネス展開には大きな可能性が広がっています。
インド進出を検討している企業は、まずは主要都市や進出企業の実例を参考に、最適な進出戦略を考えてみましょう。