インドは人口増加と経済成長が続いているので、世界中から多くの企業が参入しています。これからインドに進出したいと考えている日本企業も多いでしょう。
今回は、インドに強い日本企業を厳選して5社紹介します。それぞれの会社の取り組みや特徴について解説するので、進出を検討している企業は参考にしてください。
インドに強い日本企業5選
インドに強い日本企業として、今回は以下の5社を紹介します。
- スズキ
- ホンダ
- 日本製鉄
- クボタ
- ダイキン工業
それぞれの企業の特徴や取り組みについて解説します。
スズキ
スズキはインド市場で圧倒的なシェアを誇る日本の自動車メーカーです。
1981年にインド政府と合弁で設立された「マルチ・ウドヨグ(マルチ・スズキ)」は、インドの自動車市場で長年トップの地位を維持しています。
スズキの成功要因の1つは、インド市場に特化した低価格で高品質な車を提供している点です。
スズキの代表車種「アルト」や「スイフト」は燃費効率が良く、経済的な価格設定が特徴で、インドの消費者層に好評です。
また、スズキはインド国内に多数の製造拠点を設けていて、現地生産と現地調達を積極的に進めています。そのため、コスト削減ときめ細かい市場対応を実現し、競争力を強化してきました。
現在の生産能力は年間225万台ですが、2030年までにはハリヤナ州のカルコダ新工場やグジャラート州のグジャラート新工場を稼働させ、年間約400万台の生産を目指しています。
ホンダ
ホンダはインドの二輪車市場で強い存在感を持つ日本企業です。
特に「ホンダ・アクティバ」は、インドで最も売れているスクーターの1つで、その燃費効率の良さと信頼性から多くの消費者に支持されています。
インド市場におけるホンダの成功の鍵は、現地のニーズに合わせた製品開発と強固な販売ネットワークにあります。
ホンダはインド国内での生産能力を拡大し、現地の需要に応える体制を整えてきました。現地生産を強化することでコスト効率を高め、高品質な製品を低価格で提供しています。
また、ホンダはインドの安い人件費を活用し、インドで生産した自動車を日本へ逆輸入するなどの取り組みにも力を入れています。
インドで製造されたSUV「WR-V」は同型の「ヴェゼル」と比較すると、車両価格が50万円程度安いのが魅力です。
日本製鉄
日本製鉄は、インドのインフラ整備に貢献する日本企業の1つです。
インド国内での鉄鋼需要の高まりに対応するため、日本製鉄は世界的鉄鋼メーカー「アルセロール・ミタル」との合弁事業「アルセロール・ミタル日本製鉄」を展開し、現地生産を強化しています。
さらに、インドの大手鉄鋼メーカーである「タタ・スチール」とも合弁会社を設立し、自動車用冷延鋼板の製造と販売にも注力しています。
日本製鉄は持続可能な開発を目指し、環境に配慮した製造プロセスを導入してきました。
日本製鉄の高品質な鉄鋼製品は、インドのインフラプロジェクトにおいて重要な役割を果たしながらも、環境への影響を最小限に抑える取り組みが評価されています。
クボタ
クボタは農業機械と建設機械の分野で、インド市場に大きく貢献している日本企業です。インドの農業従事者にとって使いやすく、耐久性のある製品を提供することで、クボタは信頼を築いてきました。
特に、インドの気候や土壌に適したマルチパーパストラクタ「MU5501」やコンバインを提供し、現地の農業生産性向上に貢献しています。
また、クボタは2021年にインドのトラクター大手「エスコーツ」を買収し、「エスコーツクボタ」に社名を変更しました。
現地企業とパートナーシップを深めることで、アフターサービスや部品供給体制も強化しています。クボタの高品質な製品はインドの厳しい環境条件にも対応し、耐久性と信頼性の高さが評価されています。
ダイキン工業
ダイキン工業は、インドの空調市場で高いシェアを持つ日本企業です。インドの厳しい気候条件に対応するため、エネルギー効率の高い空調システムを提供してきました。
ダイキン工業のエアコンは、インドの高温多湿な気候に適した設計となっていて、消費者から高い評価を受けています。
また、ダイキン工業はインド北部のラジャスタン州やアーンドラ・プラデーシュ州に工場を設立し、インド国内の生産能力を拡大してきました。
世界170カ国以上で事業展開しているダイキン工業にとって、インドはグローバル戦略の重要拠点と位置づけています。今後もインド国内の生産能力を向上し、インド市場での持続的な成長を目指しています。
インドに強い日本企業の特徴
インドと日本は文化や環境が大きく異なるので、同じビジネスモデルでは通用しません。インドに強い日本企業には、以下のような特徴があります。
- インド市場への適応力がある
- 高品質の製品とサービスを提供している
- 積極的な投資と拡大を図っている
特に、日本以上に多様な文化とニーズを持つインド市場への適応力は必須です。
インド市場への適応力がある
インドに強い日本企業は、インド市場への高い適応力を持っているのが特徴です。
インドは多様な文化と消費者ニーズを持つ市場なので、日本企業はその特性を理解し、現地のニーズに合わせた製品やサービスを提供しなくてはいけません。
具体例として、スズキやホンダは、現地の消費者が求める低価格で高品質な車両を提供することで成功を収めています。
スズキは、インド市場に特化した「アルト」や「スイフト」などの低価格で燃費効率の良い車両を数多く提供し、多くの消費者に支持されています。
また、ホンダは低価格で高品質なスクーター「アクティバ」をはじめとする二輪車で市場シェアを拡大しています。
これらの日本企業はインド国内に製造拠点を持っているので、現地生産と現地調達を進めることでコストを削減し、市場へ適応してきました。
さらに、日本企業は現地のパートナー企業と協力し、市場調査や消費者のフィードバックを活用して製品改良や新製品開発に役立てています。
よくある事例としては、現地企業との合弁事業を設立して現地の消費者ニーズを的確に捉えた製品を提供する手法です。インド人との連携を深めることで市場理解を深めることが大切です。
高品質の製品とサービスを提供している
日本企業がインド市場で成功している理由の1つに、高品質の製品とサービスを提供している点が挙げられます。
インドの消費者は製品の品質や信頼性を重視する傾向がありますが、日本製品は信頼性があると評価を受けています。
例えば、日本製鉄は高品質な鉄鋼製品を提供し、インドのインフラプロジェクトに長年貢献してきました。
同社はインドの大手鉄鋼メーカーであるタタ・スチールとの提携によって高品質な鉄鋼を現地生産し、建設業界や自動車産業に供給しています。
また、ダイキン工業はエネルギー効率の高い空調システムを開発し、インドの厳しい気候条件下でも快適に生活できる手助けをしています。日本企業の高品質な製品とサービスは、インド市場での競争力を高める要因です。
積極的な投資と拡大を図っている
インドに強い日本企業は、インド国内で積極的な投資と拡大を進めている点も特徴です。インド市場は急速に成長しており、多くの日本企業がそのポテンシャルに注目しているためです。
ホンダやクボタはインド国内での生産能力を拡大し、現地の需要に応える体制を整えています。
インドに強い日本企業の戦略
インドで成功している日本企業は、以下のような戦略で市場を拡大しています。
- インド企業との協力体制を構築している
- インドに製造拠点を確立している
インドの市場を理解し、きめ細かく対応するためには、インド企業の協力が欠かせません。インドで成功している日本企業の戦略を紹介します。
インド企業との協力体制を構築している
インドに強い日本企業は、現地企業との協力体制を構築することで市場での地位を確立してきました。スズキはその代表的な例で、1981年にインド政府との合弁でマルチ・スズキを設立しました。
これは、現地のニーズに応えるための戦略的なパートナーシップで、低価格で高品質な車を提供することでインド市場でのトップシェアを維持しています。
スズキの成功は、現地の文化や消費者ニーズを深く理解し、それにもとづいた製品開発を行う能力にあります。
また、日本製鉄もインドの鉄鋼企業と提携し、高品質な鉄鋼製品を現地生産することでインド市場における地位を強化してきました。
インドの大手鉄鋼メーカーであるタタ・スチールとの協力によって建設業界や自動車産業への進出も容易になり、高品質な鉄鋼製品を供給しています。
こうしたインド企業との協力体制は、現地市場への深い理解ときめ細かい対応を可能にし、競争力を高める重要な要因となっています。
インドに製造拠点を確立している
インドに強い日本企業は、現地に製造拠点を確立してコスト効率を高め、市場のニーズに迅速に対応しています。
例えば、ダイキン工業はインド国内に製造工場を複数設け、エネルギー効率の高い空調システムを現地生産しています。
これにより、輸送コストの削減と供給チェーンの効率化を実現し、インド市場での競争力を強化してきました。
ダイキンは40℃を超えることもあるインドの厳しい気候条件に対応するため、現地の気候や消費者のニーズに合わせた製品開発を行っています。
ホンダもインド国内での生産能力を拡大し、現地の需要に応える体制を整えています。
ホンダは、インド国内でEV車の製造や二輪車の現地生産を強化してきました。これによってホンダは現地の消費者ニーズを的確にとらえ、市場シェアを拡大しています。
現地生産は、インド市場での競争力を強化する重要な戦略です。
インドに進出する日本企業の課題
これからインドに進出しようと考えている日本企業には、ローカライズと競争に勝ち抜く戦略、インド政府の規制への対策が必要です。それぞれの課題について解説します。
ローカライズの必要性
インドに進出する日本企業が直面する課題の1つが、ローカライズの必要性です。
インド市場は多様な文化と消費者ニーズを持っているため、日本企業はそれに対応するために製品やサービスのローカライズを進める必要があります。
例えば、食品業界では現地の味覚に合わせた商品開発が求められ、自動車業界では現地の道路事情に適した車両が必要です。
ローカライズを成功させるためには、現地の市場調査や消費者のフィードバックを行い、製品やサービスに反映させなくてはいけません。
具体例として、スズキはインド市場向けに特別に設計された低価格で燃費効率の高い車を提供し、現地消費者のニーズに応えてきました。
また、ホンダもインド市場に適した二輪車を開発し、現地での生産と販売を強化しています。
現地の消費者の嗜好や使用環境を詳細に調査し、それにもとづいて製品を改良し続けていく姿勢が重要です。
激しい競争に勝ち抜く戦略
インド市場は急速に成長しているため、多くの国内外の企業が競争を繰り広げています。日本企業がこの激しい競争に勝ち抜くためには、独自の戦略が必要です。
例えば、ホンダはインド市場において強力な販売ネットワークを構築し、アフターサービスの質を高めることで消費者の信頼を獲得しています。
また、スズキはインド政府と連携して合弁会社を設立し、インド国内での製品供給の迅速化を図ることで競争優位を保っています。
日本企業の製品は高品質で知られていますが、それだけでは競争に打ち勝てません。現地の消費者ニーズに応えることで、他の競合他社との差別化を図っています。
インド政府の規制対策
インドに進出する日本企業が直面するもう1つの課題は、インド政府の規制です。
インド政府は経済成長を促進するため、さまざまな規制や政策を導入していますが、これらが時折企業活動に影響を及ぼすことがあります。
例えば、2017年に導入されたGST(商品・サービス税)は、企業にとって大きな変革をもたらしました。具体的なGSTの税率は、以下のとおりです。
税率 | 品目 |
---|---|
免税 | 牛乳、穀物(包装されていなブランド外品)、野菜など |
5% | 食用油、紅茶、コーヒー、砂糖など |
12% | 冷凍肉、バター、電気自動車など |
18% | せっけん、歯磨き粉、ヘアオイル、資本財、工業中間材など |
28% | 自動車、テレビ、エアコン、冷蔵庫、炭酸飲料など |
引用:JETRO日本貿易振興機構|7月導入に向け、GST税率が決定
日本企業は、インドの法規制を遵守しつつ、柔軟に対応するために法務や税務の専門家を活用しています。
また、現地のビジネスパートナーとの協力を強化し、規制対応に関する情報を共有することで、迅速かつ効果的な対策を講じています。
こうした取り組みによって、日本企業はインド市場での持続的な成長を目指すことが重要です。
インドに強い日本企業は積極的にビジネス展開している
インドで活躍している日本企業は数多くありますが、多様なインド市場でシェアを獲得するのは簡単ではありません。
現地企業とパートナーシップを強化したり、新たな合弁会社を設立したりといった取り組みが必要です。
今後もインド市場は大きくなっていくことが予測されているので、ビジネス展開を狙っている企業は早めに現地調査を行い、コネクションを作っておきましょう。