これからインドで生活しようとする人にとって、インド住宅の特徴がどうなっているか興味があるでしょう。インドの住宅は素材や間取り、住宅内部まで日本住宅とは異なります。
本記事では、インド住宅の特徴と住宅選びのポイントについて解説していきます。インドで新生活を送る予定がある人は、参考にしてみてください。
記事の監修者
インドは伝統的な中庭式住宅が多い
インドでは、地域を問わずに伝統の中庭式住宅で生活している人が多いのが特徴です。
- 中庭式住宅の特徴
- 中庭式住宅とインダス文明との関係
なぜインドで中庭式住宅が人気なのか、その理由を解説していきます。
中庭式住宅の特徴
中庭式住宅とは、建物の中央に中庭を設け、中庭を囲うように部屋が配置された住宅様式のことです。中庭は日差しや風通しを確保するだけでなく、家族団らんの場としても重要な役割を果たしています。
また、中庭には井戸や植物が置かれることが多く、自然との共生を大切にするインドの伝統的な考え方が反映されています。
中庭式住宅は外部からの視線を遮りつつ、内部に開放的な空間を作り出せる住宅です。そのため、個人のプライバシーを重視するインドの文化やインド人の生活にも適しています。
中庭式住宅とインダス文明との関係
中庭式住宅の起源は、古代インドのインダス文明まで遡るとされています。紀元前約2500年頃に栄えたインダス文明では、すでに中庭式住宅が建てられていたことが分かっています。
インダス文明時代の住宅は日干し煉瓦で作られ、中央に中庭が設けられていました。この中庭には井戸や排水設備が備えられており、高度な都市計画に基づいて建設されていたことが分かっています。
インダス文明で発展した中庭式住宅はその後のインドの住宅様式にも大きな影響を与え、現代に至るまで受け継がれています。
インドと日本の住宅は特徴が異なる
インドと日本の住宅は、文化や気候が異なることから特徴も異なっています。
- インド住宅はシーリングファンを使う
- インド住宅の窓には面格子が付いている
- カラフルな住宅が多いのもインドの特徴
- インドのトイレにはシャワーが付いている
特に、酷暑が問題になっているインドの住宅には、シーリングファンが欠かせません。
インド住宅はシーリングファンを使う
インドでは日本と異なり、住宅にシーリングファンを設置するのが一般的です。インドは高温多湿な気候が続くため、シーリングファンで風通しを良くすることで快適さを維持しています。
インドではエアコンを設置していない住宅は多いですが、シーリングファンは多くの住宅で採用されています。シーリングファンは少ない電力で部屋全体に風を送付できるので、コストパフォーマンスに優れているのが主な理由です。
日本の住宅ではシーリングファンを見かけることは稀ですが、インドでは暑さ対策としてほとんどの家庭に設置されています。
インド住宅の窓には面格子が付いている
インドの住宅を特徴づける要素として、窓に付けられた面格子も忘れてはいけません。面格子は外部からの視線を遮りつつ、風通しを確保するために設置されています。
面格子の素材には木やスチール、アルミニウムなどが使用され、様々な模様が施されているのが特徴です。インドではプライバシーを重視する文化があるため、面格子は住宅には欠かせない存在です。
また、面格子は装飾的な役割も果たしており、住宅の外観を美しく彩る役割も果たしています。プライバシーは主に室内のカーテンなどで確保する日本の住宅とは異なっています。
カラフルな住宅が多いのもインドの特徴
インドの街を散策すると、カラフルな住宅が目に留まります。黄色やピンク、青や緑など、鮮やかな色で塗装された住宅が多いのがインドの特徴です。
ヒンドゥー教ではそれぞれの色に特別な意味が込められており、ヒンドゥー教徒は目的に応じて外壁を塗装しています。青は神聖な色とされているため、司祭などが住宅を青に塗装しています。オレンジは幸福を運ぶ色とされているため、人気の色の1つです。
また、インドの伝統的な建築様式では、色彩を用いて建物の美しさを表現することが重視されてきました。カラフルな住宅は、インドの街並みに独特の雰囲気を与えています。
日本の住宅は、白や茶色など落ち着いた色が好まれる傾向にあるので、対照的といえるでしょう。
インドのトイレにはシャワーが付いている
インドの一般住宅にあるトイレは、便器の横にシャワーが設置されています。インド人はトイレで紙を使わずに、水で体を清めることを重視しているためです。
トイレットペーパーよりも水で洗浄する方が清潔だと考えられているため、トイレのシャワーは必須の設備となっています。インドでは左手は不浄とされていますが、シャワーが付いていることで、トイレを利用する際に手を清潔に保てるというメリットがあります。
日本のトイレには、温水洗浄便座など高機能な設備が備えられていることが多いですが、シャワーは基本的に付いていません。
内部リンク:インドのトイレ事情|インド式トイレの使い方や問題点を解説
インド人のリアルな住宅事情
インド人は、他国よりも住宅への思い入れが強いとされています。インド人は家庭を大切にする人が多いので、団らんの場となる住宅に特に強い憧れと思い入れを抱いています。
- 世帯収入に応じた住宅価格の差が大きい
- インド住宅は建物の劣化が早い
- スラムの存在が社会問題に
そんなインド人のリアルな住宅事情は、私たち日本人の事情と異なっていました。
世帯収入に応じた住宅価格の差が大きい
インドでは、世帯収入に応じた住宅価格の差が日本以上に広がっています。高所得者層はプール付きの邸宅やペントハウスなど、数千万円から数億円の価格帯の物件を購入して優雅に暮らしています。
一方の低所得者層は、簡易な住宅に住むことを余儀なくされているのが現状です。地方の農村部で生活している農家は収入が低いため、生活を変えることも難しいでしょう。
中間所得者層の住宅はその中間に位置し、日本の一般的な戸建てやマンションに近い物件を購入します。インドでは、所得格差が住宅事情に大きく反映されています。
インド住宅は建物の劣化が早い
インドの住宅は、日本と比べると建物の劣化が早いのが問題です。その理由は、インド特有の気候の影響です。
インドは国土の多くが高温多湿な気候で、雨季には大量の雨が降ります。このような激しい気候変動が、建物の劣化を早める要因となっています。
また、インドでは建築基準が日本ほど厳しくないことも影響しています。耐久性の低い材料が使用されていたり、屋外や屋内の施工が不十分であったりすることも珍しくありません。
さらに、インドでは住宅の管理やメンテナンスに対する意識が低い傾向にあります。外壁や水回りの定期的なメンテナンスが行われないことで、建物の劣化が進行してしまいます。
スラムの存在が社会問題に
インドの住宅事情を語る上で、スラムの存在は無視できません。インドの大都市には、数多くのスラムが存在しています。
スラムは貧困層が集まって形成された簡易な住宅街です。道路や下水設備が整備されておらず、不衛生な環境が問題視されています。
スラムには失業者や日雇い労働者など、社会的に弱い立場の人々が主に暮らしています。スラムの住人は安定した収入がないため、劣悪な住環境から離れられないのが問題です。
インドに点在するスラム問題の解決は、インドの住宅事情を改善する上で欠かせない課題です。
インドの住宅を借りる際のポイント
これからインドで生活しようと考えている人は、住宅を探さなくてはいけません。インドの住宅を借りる際は、以下のようなポイントがあります。
- 物件のタイプを決める
- 近くにオーナーがいる物件を選ぶ
- ロケーションが重要
- 道路からの距離に注意する
- 発電機の有無を確認する
契約してから後悔しないように、それぞれのポイントを詳しく解説していきます。
物件のタイプを決める
インドで住宅を借りる際は、まず物件のタイプを決める必要があります。
- アパート
- マンション
- 一軒家
上記のようなタイプの物件があるため、自分のニーズに合ったものを選びましょう。
アパートやマンションは、セキュリティが充実している点がメリットです。24時間体制の警備員が常駐していたり、監視カメラが設置されていたりするため、特に女性は安心して生活できます。
一方の一軒家は、プライバシーが確保されている点が魅力です。周囲の目を気にせず、自由に生活できるでしょう。
ただし、インドの一軒家は管理やメンテナンスが入居者の責任となるため、手間がかかることを覚悟しておく必要があります。水回りや電気などのトラブルが起きると、自分で業者を手配しなくてはいけません。
インドの業者は十分な作業をしてくれないことも多く、問題解決までに時間がかかるのも難点です。
近くにオーナーがいる物件を選ぶ
インドで住宅を借りる際は、オーナーが近くにいる物件を選ぶことをおすすめします。インドの賃貸住宅では、トラブルが発生することがよくあるためです。
例えば、水道やトイレの故障、電気のトラブルなどです。オーナーが近くにいればトラブルの度にすぐに対応してもらえます。
オーナーが遠方にいる場合はトラブルの対応が遅れたり、放置されたりすることもあるので注意しましょう。
また、オーナーが近くにいることで、定期的な管理やメンテナンスも行ってもらえる可能性があります。建物の劣化を防ぎつつ快適な生活を送るためには、オーナーとのコミュニケーションが取りやすい物件を選ぶことが大切です。
ロケーションが重要
インドで住宅を探す際は、ロケーションが重要なポイントになります。
特に、大都市では交通渋滞が深刻な問題となっているため、通勤時間を考慮する必要があります。駅や職場から遠く離れた場所に住むと、毎日長時間の通勤を強いられることになるでしょう。
また、インドの公共交通機関は日本ほど発達していないため、自家用車を利用する人が多いのが特徴です。しかし、道路事情が悪い上に事故のリスクも高いため、できるだけ通勤距離が短い物件を選ぶことを推奨します。
さらに、インドでは地域によって治安の良し悪しが大きく異なります。多少家賃が高くてもスラムの近くや犯罪率の高い地域を避け、安全に生活できる物件を選びましょう。
道路からの距離に注意する
インドの住宅を選ぶ際は、道路からの距離にも注意が必要です。インドの道路は騒音や大気汚染がひどい場所が多く、健康に悪影響を及ぼす可能性があるためです。
特に、大都市の主要道路沿いは車やバイクの騒音が昼夜問わず続くため、快適な生活を送ることが難しいでしょう。
また、インドは排気ガスによる大気汚染も深刻で、呼吸器系の疾患を引き起こすリスクが高まります。できるだけ道路から離れた場所にある物件を選ぶことで、騒音や大気汚染のストレスを軽減できます。
窓を開けて風通しを良くしたり、静かな環境で休息を取ったりすることで、健康的な生活を満喫できるでしょう。
発電機の有無を確認する
インドでは停電が頻繁に発生するため、住宅に発電機が備えられているかどうかを確認することが大切です。頻繁な停電は、日常生活に大きな影響を及ぼします。
停電すると照明や冷房が使えなくなるだけでなく、パソコンの使用や携帯電話の充電ができなくなるため、仕事にも支障をきたすかもしれません。
また、停電時は水道のポンプも停止してしまうため、断水のリスクもあります。発電機がある住宅を契約することで停電時でも一定時間電気を使うことができ、快適な生活を送れます。
ただし、発電機の騒音が大きい場合もあるため、物件の見学時に実際に発電機を稼働させてもらって騒音レベルを確認しておくことをおすすめします。
まとめ:インドの住宅は歴史を感じさせるのが特徴
インドの住宅は、多くがインダス文明から続いている中庭式住宅を採用しているのが特徴です。室内のプライバシーを守りつつ中庭で団らんできる仕組みになっているので、家庭を大切にするインド人にとって理想の間取りとなっています。
その他にも、インドの住宅には面格子やカラフルな外壁など、日本とは異なる特徴が多くあります。
これからインドで生活する予定の人は、戸建て、アパート、マンションそれぞれの特徴やメリットを把握してから契約しましょう。快適な生活には、快適な住居が必要です。