インドのボリウッドとは?インド映画の人気作品5選と有名俳優も紹介

ビジネスや留学などでインドに長期滞在する予定の人は、休日をどのように過ごしたらいいか迷ってしまいますよね。

大勢が集まる場には行きにくいし、できればあまりお金を使わずに休日を満喫したいと考えている人は少なくありません。

そんなインドの娯楽でおすすめなのが、「ボリウッド」です。今回は、ボリウッドの由来から人気映画、有名俳優まで紹介します。

インド映画を一度も観たことがない人のために魅力をたっぷりとお伝えするので、ぜひとも最後まで読み進めてください。

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インドのボリウッドとはムンバイの映画産業のこと

ボリウッドのポスター

ボリウッドとは、インドのムンバイを拠点とするヒンディー語映画産業のことです。

ボリウッドは「ボンベイ(現在のムンバイ)」と「ハリウッド」を組み合わせた造語で、インド映画界の中心地であるムンバイに由来しています。

年間約800本の映画を制作し、インド国内で約1,400万人の視聴者を獲得する世界最大の映画産業として、多くの人々に愛されています。

ボリウッドの歴史

ボリウッドの歴史は20世紀初頭に遡ります。1913年に『Raja Harischandra(ハリシュチャンドラ王)』がインド初の長編映画として公開され、ボリウッドが始まります。

その後、1940年代後半から1960年代後半にかけて黄金時代を迎え、多くの名作が生まれました。

この時期には、壮大なセットや華やかな衣装、優れた演技が特徴の映画が数多く制作され、現在でも国内外で高く評価されています。

ボリウッドの特徴

ボリウッドがハリウッドや日本の映画と異なる点はいくつかあります。

  • 音楽とダンス
  • 長い上映時間
  • 家族愛とドラマ

特に、インド映画といえば音楽とダンスを連想する人が多いかもしれません。その理由について解説します。

音楽とダンス

ボリウッドの最大の特徴は、明るい音楽とダンスシーンです。

映画の中には必ずと言っていいほど挿入歌やダンスシーンが含まれていて、これが物語の一部として機能しています。

観客は音楽やダンスシーンを楽しむことで、映画の感情やテーマをより深く理解できます。

ボリウッドの華やかなダンスと感動的な音楽は、視覚的にも聴覚的にも楽しめるよう計算されたエンターテイメントです。

長い上映時間

ボリウッドの特徴は、約2時間〜3時間の長い上映時間です。

日本では2時間前後で終わるのが一般的ですが、ボリウッドではストーリーの展開やキャラクターの成長をじっくりと描くため長編になっています。

観客は映画を通じて登場人物たちの喜びや悲しみを共に体験し、感情移入しやすいのが特徴です。

 
kana
インド映画はどの作品も長く、見ごたえがあります!ちなみにインドの映画館では、映画の中盤に”interval”(インターバル)という休憩時間が設けられています。

映画の中で描かれる人間関係やドラマの移り変わりは、インド人にとって貴重な楽しみです。

家族愛とドラマ

多くのボリウッド作品は、家族愛や友情、恋愛などの身近なテーマを中心に展開します。

インド文化において家族は非常に重要な存在になっているので、映画でもその価値観が強く反映されています。

感動的なドラマは多くの観客に共感を呼び起こし、映画を観ることで心温まる体験が得られるのもボリウッドの特徴です。

ボリウッドとトリウッドの違い

トリウッドとは、インド南部のタミル語映画産業のことです。ボリウッドがヒンディー語映画なのに対し、トリウッドはタミル語映画です。

これらの映画産業は異なる言語と文化的背景を持ち、映画の内容やスタイルにも違いがあります。例えば、トリウッドは地域の伝統や社会問題を扱うことが多く、より土着感を重視しています。

一方、ボリウッドはロマンティックコメディやファミリードラマが多く、華やかなエンターテイメント性が強調されています。

インドでボリウッドやトリウッドが人気な理由

カメラとフィルム

インドでは映画が国民的な娯楽として親しまれています。その理由は多岐にわたりますが、以下の要素が挙げられます。

お手頃なエンターテイメント

映画は、インド国内で手軽に楽しめるエンターテイメントの1つです。

日本の映画チケットが約1,800円なのに対して、インドの映画チケットは約320円と安価に設定されているため、多くの人々が週末や祝日に家族や友人と一緒に映画を観に行きます。

特に、地方都市や農村部では映画館が娯楽の中心となっていることが多く、映画観賞を楽しみにしている人が多いのも特徴です。

文化的な影響力

映画は、インドの文化や価値観を強く反映しています。

ボリウッドを通じてインドの伝統や習慣、宗教的なテーマや社会問題などが描かれ、多様な物語が観客に好評です。

ボリウッドは、インドの様々な地域の言語や文化を紹介する役割も果たしています。

例えば、ある映画がヒットすることで、その地域の言語や文化が全国的に認知されるようになります。ボリウッドは、日本のテレビや雑誌のように強い影響力を持つ媒体です。

社会的な交流の場

インドでは映画館は単なる娯楽の場ではなく、社会的な交流の場としての役割も果たしています。家族や友人と一緒に映画を観ることで共通の話題をもたらし、絆を深める機会となります。

また、映画の上映前後に行われる議論や感想の共有も、家族や友人間の重要なコミュニケーションの1つです。

 
kana
日本の映画館では、静かに映画を楽しむのが一般的ですが、インドの映画館では観客が歓声を上げたり、拍手したりと、にぎやかな雰囲気を楽しむことができます。観客のリアクションが場内を盛り上げ、映画鑑賞の一部として活気あふれる体験が味わえますよ。

ボリウッドの人気映画から厳選したおすすめ5選

インドの女優

『3 Idiots(きっとうまくいく)』(2009年公開)

上映時間172分
監督ラージクマール・ヒラニ
主演アーミル・カーン
ジャンルコメディ

3 Idiotsはインドの教育システムを風刺したコメディドラマで、アーミル・カーンが主演しています。

物語は、個性豊かな3人の友人がそれぞれの夢を追いながら大学生活を送る物語です。特に、失踪した友人を探す旅がユーモアと感動を融合させて展開されます。

映画の中で、教育のプレッシャーに立ち向かう若者たちの姿は多くの共感を呼び起こします。

特に、主人公ランチョーの「成功を追うのは間違いだ、優秀なら成功はついてくる」というメッセージが心に残りました。

 
kana
アーミル・カーンが演じる、型破りで自由奔放な天才学生ランチョは、教育システムに囚われず、好奇心と情熱を追求する姿勢が魅力的です。感動的でありながらもユーモラスなシーンが多く、最後まで楽しめる映画です。

『Mughal-E-Azam(偉大なるムガル帝国)』(1960年公開)

上映時間197分
監督アシフ・カパディア(K. アシフ)
主演プリトヴィーラージ・カプール
ジャンル歴史ドラマ/恋愛

Mughal-E-Azamは、インド映画史上最高の興行成績を15年守り続けたボリウッドの歴史超大作です。

16世紀後半の北インドを舞台に、ムガル帝国の皇太子と宮廷舞踏家との禁断の恋を描いた歴史ロマンスです。

映画はその壮大なセットと優れた演技で知られていて、ボリウッドの名作として現在も語り継がれています。

2004年には完全カラー版が公開されていて、伝説的な俳優プリトヴィーラージ・カプールと美しいマドゥバーラーの演技は必見です。

『Muthu(ムトゥ 踊るマハラジャ)』(1998年公開)

上映時間165分
監督K.S.ラヴィクマール
主演ラジニカーント
ジャンルコメディ/ミュージカル

日本にインド映画を広めるきっかけとなったのが、このMuthuです。

この映画は、インドの国民的俳優ラジニカーントのカリスマ性やインドの文化、音楽やダンスが融合した究極のエンターテインメント映画として話題になりました。

大地主の屋敷で働く主人公ムトゥのスリリングな恋の行方は必見です。美しすぎるヒロインと話題になったミーナの美貌も観客を虜にしてくれます。

Muthuはタミル語映画なので正確にはボリウッドではありませんが、ボリウッド(インド映画)を世界に認識させた王道映画なので紹介しました。

『Pad Man(パッドマン 5億人の女性を救った男)』(2018年公開)

上映時間130分
監督R・バールキ
主演アクシャイ・クマール
ジャンルヒューマンドラマ

Pad Manはインドの実話をもとに作られたヒューマンドラマです。

貧困で女性用ナプキンが買えない妻のため、主人公のラクシュミは村で笑い者になりながらも低価格で買えるナプキン開発を続けます。

その活動は村を超え、やがて5億人といわれるインド全土の女性を救うことになっていきます。

苦難に負けず、愛する妻のために突き進んだラクシュミの生涯は、多くの男性に重要なメッセージを残しました。

「アメリカにはスパイダーマンがいる、だがインドにはパッドマンがいる」というユニークなキャッチコピーも印象的です。

インドの女性が抱える問題については、以下の記事で詳しく解説しています。

参照:インド女性の社会進出の現状|女性を苦しめるインドの慣習を解説

 
kana
社会の偏見に立ち向かいながらもユーモアを忘れない主人公ラクシュミの姿勢が素晴らしく、見終わった後に元気をもらえる映画です。インドの社会問題に真摯に向き合いながらも楽しく観られる一作です

『2.0(ロボット|2.0)』(2018年公開)

上映時間147分
監督シャンカール
主演ラジニカーント
ジャンルアクション/SFコメディ

国民的俳優ラジニカーントが主人公とロボットの2役を演じたことでも話題になったのが、この2.0です。

2012年に公開されたロボットの続編で、インドの街から突如としてスマートフォンが消えたことから話は始まります。

そして携帯事業者や通信大臣がスマートフォンに殺害されるという事件が多発します。

主人公のバシー博士は助手と共に消えたスマートフォンを探しますが、やがて大きな戦いに巻き込まれていくのでした。

ラジニカーントの高い演技力が評価されている2.0は、SF好きな人におすすめの映画です。

ボリウッドの人気俳優と女優

ボリウッドの撮影シーン

ボリウッドの魅力を支えているのが、カリスマ性と演技力に優れた俳優や女優たちです。彼らの存在は、インド映画の成功と国際的な認知度を高めています。

ボリウッドを代表する人気俳優と女優を、それぞれ3人ずつ紹介します。

ボリウッドの人気俳優

ボリウッドには数多くの人気俳優がいますが、今回はその中から3人を紹介します。

  • ラジニカーント (Rajinikanth)
  • アーミターブ・バッチャン (Amitabh Bachchan)
  • アーミル・カーン (Aamir Khan)

特に、おすすめ映画で紹介したMuthuや2.0で主演を務めたラジニカーントは、インドのみならず世界的なスターです。

ラジニカーント (Rajinikanth)

ラジニカーントは1950年12月12日生まれのインドの著名な俳優で、本名はシヴァージ・ラーオ・ガイコワードです。

大工やバスの車掌として働いていましたが、1975年にタミル映画『Apoorva Raagangal(世にも奇妙なラーガ)』でデビューします。

その後『Muthu(ムトゥ 踊るマハラジャ)』や『2.0(ロボット|2.0)』などのヒット作で国際的な人気を獲得しました。

ラジニカーントの演技スタイルはカリスマ性とユーモアに富み、インド映画界のスーパースターとして広く知られています。

また、慈善活動や政治活動にも積極的に関与し、社会的にも大きな影響力を持っています。

アーミターブ・バッチャン (Amitabh Bachchan)

ボリウッドの「ビッグB」として知られるアーミターブ・バッチャンは、1942年10月11日生まれで数十年にわたるキャリアを持つレジェンド俳優です。

1975年、映画『Sholay(炎)』でデビューし、『Pad Man(パッドマン 5億人の女性を救った男)』や『Black(ブラック)』など数多くの映画に出演しています。

バッチャンの存在感と独特の声は、多くの映画ファンに強い印象を残しています。

アーミル・カーン (Aamir Khan)

アーミル・カーンは1965年3月14日生まれで「ミスター・パーフェクショニスト」として知られるベテラン俳優です。

「夢を妥協してはいけない、夢を実現するために妥協することはあっても、夢そのものを妥協してはいけない」というモットーからも分かるとおり、真面目で誠実な人柄です。

1973年『Holi(ホーリー祭)』でデビューし、俳優とプロデューサーを兼業しています。

代表作には『3 Idiots(きっとうまくいく)』、『Dangal(ダンガル きっと、つよくなる)』などです。

アーミルの映画は社会問題をテーマにすることが多く、観客に深いメッセージを伝えることでも有名です。インドのホーリー祭については、以下の記事で詳しく解説しています。

参照:インドのカラフルな春の祭典ホーリー祭の歴史と魅力・注意点を徹底解説

ボリウッドの人気女優

次にボリウッドの人気女優として、以下の3人を紹介します。

  • ディーピカー・パードゥコーン (Deepika Padukone)
  • プリヤンカー・チョープラー (Priyanka Chopra)
  • カジョール (Kajol)

全員演技だけではなく、美貌にも注目を浴びている女優たちです。

ディーピカー・パードゥコーン (Deepika Padukone)

ディーピカー・パードゥコーンは、1986年1月5日生まれの女優です。その美しさと演技力でボリウッドのトップ女優に上り詰めました。

代表作には『Padmaavat(パドマーワト 女神の誕生)』や『xXx: Return of Xander Cage(トリプルX:再起動)』などがあります。

その美貌と174cmといわれるスタイルは世界中から絶賛されていて、モデルとしても活動しています。

プリヤンカー・チョープラー (Priyanka Chopra)

プリヤンカー・チョープラーは1982年7月18日生まれの女優で、20世紀最後のミス・ワールド優勝者として世界的に有名になっています。

ボリウッドだけでなく本場のハリウッドでも活躍する国際的なスターです。日本でも絶大な人気を博している映画『マトリックス レザレクションズ』にも出演しています。

代表作は『Barfee(バルフィ!人生に笑顔を)』や『The White Tiger(ザ・ホワイトタイガー)』などです。2022年には1児のママになり、ますます女性として魅力を増しています。

カジョール (Kajol)

カジョールは1975年8月5日生まれで、本名はカジョール・デーヴガンです。1990年代から2000年代にかけてボリウッドのトップ女優として活躍しました。

彼女の代表作には『Dilwale Dulhania Le Jayenge (シャー・ルク・カーンのDDLJラブゲット大作戦)』、『Kabhi Khushi Kabhie Gham…(家族の四季 -愛すれど遠く離れて-)』などがあります。

映画監督の父と女優の母という演技一家で育った彼女の自然な演技と豊かな表現力は、多くの観客に愛されています。

まとめ:インドのボリウッドには日本ファンも多い

インドのカメラマン

ボリウッドはインドの文化や社会、価値観を映し出す重要なメディアです。音楽とダンス、カリスマ的な俳優や多様なジャンルなど、ボリウッドの魅力は多岐にわたります。

これらの要素が組み合わさることで、ボリウッドは世界中の観客に深い感動と楽しみを提供しています。

日本人にとってもボリウッドは異文化交流のきっかけとなり、インド文化の理解に一役買ってきました。インドで長期滞在を予定している人は、本場のボリウッドを通じて新たな映画体験を楽しんでみてください。