インドの紅茶の歴史と主要産地3選|紅茶に含まれる成分も解説

紅茶は、食後のリラックスタイムに欠かせない飲み物の1つです。独特の香りとさっぱりした味わいは、食後の時間をより癒やしの時間にしてくれます。

そんな紅茶の主要な輸出国になっているのが、経済成長が著しいインドです。今回は、インドの紅茶に関する歴史と主要な生産地、健康にいい成分について解説します。

より美味しい紅茶を楽しみたい人は、参考にしてください。

記事の監修者

インドの植民地化と紅茶の歴史

山間の風景

まずはインドにいつ紅茶が伝来したのか、どのような背景があるのかについて解説します。インドの紅茶産業の発展は、イギリスの植民地化が大きく関係していました。

イギリス統治時代と紅茶産業の発展

イギリス統治時代、インドの紅茶産業は急速に発展しました。

1823年にロバート・ブルースがインド独自のアッサム種を発見し、その後、彼の弟チャールズ・ブルースが商業的な紅茶茶園の設立に成功しました。

1830年代後半にはアッサム地方での商業的な茶園が開設され、続いてダージリンやニルギリといった他の地域でも紅茶の栽培が始まります。

当時インドを統治していたイギリス東インド会社は、イギリス国内で紅茶の需要が多かったこともあり、インドでの紅茶生産を積極的に推進しました。

この時期に築かれたインフラや技術は、現在の紅茶産業にも大きな影響を与えています。

19世紀後半になると、インドは世界有数の紅茶生産国に成長し、インド紅茶は世界中で高く評価されるようになりました​。

インドとイギリスの統治関係については、以下の記事で詳しく解説しています。

参照:インドがイギリスから独立するまでの歴史|ラーマやガンディーの活動も解説

現代のインドと紅茶産業

現代のインド紅茶産業は、世界的なブランドとしての地位を確立しています。GLOBAL NOTEの調査によると、2022年時点でのインドの茶輸出量は5,969,000トンで世界第2位でした。

最近では、持続可能な農業やオーガニック紅茶の生産にも力を入れていて、品質向上と環境保護を両立させる取り組みが進んでいます。

また、紅茶の輸出市場も年々拡大しているので、国際競争力を高めるための努力が今後も求められています。

インドで主要な紅茶の産地3選

インドのティー

紅茶大国のインドですが、主な産地は以下の3つの地域です。

  • ダージリン
  • アッサム
  • ニルギリ

日本でも「ダージリンティー」は人気になっているので、それぞれの産地の特徴について解説します。

ダージリン

ダージリンは「紅茶のシャンパン」と称されるほど、フルーティーな香りで知られています。

インド北東部にあるヒマラヤ山脈の麓に位置するダージリンは標高が高く、気候が年間を通じて冷涼なため、茶葉の成長が緩やかで品質の高い紅茶が生産できるのが特徴です。

ダージリン紅茶の収穫は年間を通じて3回行われ、それぞれの時期で異なる特徴を持つ紅茶が生産されます。

  • ファーストフラッシュ(春摘み): 3月から4月
  • セカンドフラッシュ(夏摘み): 6月から7月
  • オータムナル(秋摘み): 10月から11月

ファーストフラッシュ(春摘み)

3月から4月に収穫されるファーストフラッシュは緑色で柔らかく、爽やかな風味とほどよい渋みを持つのが特徴です。

紅茶の色は明るい黄金色で、ストレートティーとしてそのまま楽しむのが適しています​​。このファーストフラッシュは希少性が高いので、高値で取引されています。

セカンドフラッシュ(夏摘み)

6月から7月に収穫されるセカンドフラッシュは、ファーストラッシュよりも味や香りに深みが増し、マスカットフレーバーのような爽やかな香りが特徴です。

紅茶の色は濃いオレンジ色で、コクとバランスが良く、ダージリンの中でも最高級品として評価されています​。紅茶の味わいをより楽しみたい人は、このセカンドフラッシュのダージリンを購入してみましょう。

オータムナル(秋摘み)

10月から11月に収穫されるオータムナルは、厚くしっかりとした葉、強い渋みと深い甘み、深いコクが特徴です。味わいが強いので、ミルクティーに最適な紅茶です。

渋みが強い一方で甘さも感じられるので、ストレートでも美味しく召し上がれます。

アッサム

アッサムはインド北東部のブラマプトラ川流域に広がる地域で、世界最大の紅茶生産地の1つです。

この地域は亜熱帯気候と豊富な降雨量に恵まれているので、力強い味わいと濃い色合いの紅茶が生産できます​​。

アッサムティーの特徴はその深い味わいと芳醇な香りです。特に、朝食時にミルクティーとして飲まれることが多く、その濃厚な風味がミルクとよく合います。

アッサム地方内でも地域ごとにわずかな違いがあるので、茶葉のブレンドやメーカーによってさまざまな風味が楽しめます。

優しい味わいのミルクティーが好きな人は、アッサムティーをベースに作ってみてください。

 
kana
チャイ(ミルクティ)といえばアッサムティーですね!カルディで手軽に購入できます!
インドのアッサムティー
カルディのアッサムティー

ニルギリ

ニルギリは南インドのタミル・ナードゥ州に位置し、標高1,000を超える場所に茶園があります。年間を通して過ごしやすい冷涼な気候なので、高品質な茶葉を生産できます。

この地方で栽培されているニルギリティーは、「香りの紅茶」と呼ばれるほど紅茶らしい風味を楽しめるのが特徴です。

また、軽い味わいも特徴で、ストレートティーやアイスティーとして楽しむのに適しています​​。

ダージリンやアッサムと異なり、ニルギリのピークは1〜2月の冬です。冷たく乾いた冬の風によって茶葉の成長が鈍化し、風味が凝縮されるためです。

ニルギリはスリランカに近いので、セイロンティーに似た風味があり、マイルドで飲みやすい紅茶として知られています。

初めての方でも安心!インド紅茶の楽しみ方

淹れたての紅茶

紅茶は好きだけれど、自宅で淹れるのは難しいと感じている人も少なくありません。しかし、自分好みの紅茶を楽しむ際は、自分で淹れるのが一番です。

ここでは、インド紅茶の楽しみ方を紹介します。

インド紅茶のストレートティーの楽しみ方

インド紅茶をダイレクトに楽しむためには、ストレートティーが最適です。特に、ダージリンティーやニルギリティーの繊細な風味を楽しみたい人におすすめです。

ストレートティーの美味しい淹れ方の手順を順番に解説します。

  1. お湯を100℃に沸かす
  2. 茶葉を浸す
  3. 注ぎ分け

まず、100℃に沸騰させたお湯を用意します。紅茶の種類によっては、少し冷ましたお湯を使用することがポイントです。

特に、ダージリンティーの場合は、沸騰したばかりのお湯を使うのが理想です​。

ティーポットに茶葉を入れたら、適量の熱湯を注ぎます。茶葉の量はカップ1杯分(150ml)につきティースプーン1杯(約2.5g)を目安にします。

細かい茶葉は2分、大きい茶葉は3分程度抽出時間を取りますが、茶葉の種類や個人の好みに応じて調整しましょう。

抽出が終わったら、ティーカップに紅茶を注ぎます。この時、ティーポット内の紅茶が均一になるように、軽く混ぜながら注ぎ分けるのがおすすめです。

ストレートティーの香りと味わいを楽しむために、一口一口丁寧に味わいます。紅茶の温度や香りに注意を払い、その深い風味を舌と鼻で堪能してください​。

インド式チャイの作り方と楽しみ方

インド式チャイは、スパイスと共に茶葉を煮出すことで独特の風味が楽しめる紅茶です。インド式チャイの作り方を順番に解説します。

  1. 茶葉、カルダモン、シナモン、クローブなどを用意する
  2. 鍋で茶葉、スパイス、砂糖を煮立てる
  3. 牛乳を加える
  4. 濾す

200ccの水と茶葉(大さじ1杯)、カルダモン(2〜3粒)、シナモンスティック(半欠け)、クローブ(1〜2粒)などのスパイスを用意します。スパイスの量は好みに応じて調整してください。

鍋に水を入れて沸騰させ、茶葉、スパイス、砂糖を加えます。香りを強めたい場合は、スパイスを砕いてから入れるのがおすすめです。3分程度煮立てて、スパイスの風味を引き出します。

次に、牛乳を加えて、さらに弱火で2〜3分程度煮込みます。甘さは好みに応じて調整してください​。出来上がったチャイをカップに注ぐ際、茶葉とスパイスを取り除くために濾します。

これでインド式チャイの完成です​。甘さやスパイスを調整できるので、お好みの量を試してみましょう。

インド紅茶を使ったアイスティーの作り方

暑い季節には、インド紅茶を使ったアイスティーもおすすめです。アイスティーの作り方も紹介します。

  1. 濃いめに抽出
  2. 紅茶を冷やす
  3. グラスに注ぐ

まず、濃いめに紅茶を抽出します。通常の倍量の茶葉を使用し、熱湯で3〜5分抽出します。

抽出した紅茶を十分に冷やします。急冷したい場合はアイスバスに容器を置くか、冷蔵庫で冷やしましょう。

グラスに氷をたっぷり入れ、冷やした紅茶を注ぎます。レモンやミントの葉を加えると爽やかな風味が楽しめます。

好みによって砂糖やハチミツで甘さを加えたり、炭酸水を加えてアレンジするのもおすすめです。特に、ニルギリティーはアイスティーにしてもその軽やかな味わいが活きるので、暑い夏に最適です。

毎日飲みたい!インド紅茶の健康作用

煮だした紅茶

インド紅茶には以下のような健康作用もあります。

  • 抗酸化作用
  • 脂肪燃焼作用
  • リラックス作用

毎日適量の紅茶を飲むことでどのような作用があるか、それぞれ解説します。

インド紅茶の抗酸化作用

インド紅茶には高い抗酸化作用があります。紅茶に含まれるポリフェノール、特にカテキンやフラボノイドは体内の活性酸素を除去し、細胞の老化を遅らせるのが特徴です。

この抗酸化作用によって、免疫力の強化が期待できます。
特にダージリンティーやアッサムティーは、抗酸化物質が豊富に含まれているので、健康維持に役立ちます。

インド紅茶の脂肪燃焼作用

紅茶には脂肪の分解を促進する作用があります。特に、アッサムティーはポリフェノールやカフェイン、カテキンが豊富で代謝を高める働きがあります。

その結果、脂肪の燃焼を助けてくれるので脂肪を燃焼しやすくなるでしょう。

また、紅茶はカロリーが低いので、食事の前後に飲むことで食欲を抑える働きもあります。ダイエット中の方にとって、インド紅茶は美味しくて健康的なサポートドリンクです​。

インド紅茶のリラックス作用

紅茶はリラックス作用があるので、メンタルヘルスにも良い影響を与えます。紅茶に含まれるテアニンは、脳のアルファ波を増加させてリラックス状態を促進するのが特徴です。

また、カフェインの適度な刺激には、集中力や覚醒度を高める働きがあります。ストレスが多い現代社会では紅茶を飲むことでリラックスし、心身のバランスを整えることが大切です。

ゆったりとした時間に紅茶を楽しむことで、リラックス効果が一層高まるでしょう。

インド紅茶の経済的影響

紅茶のティーパック

インドの紅茶は農村部の雇用促進にも貢献しています。ここでは、インドの紅茶と経済への影響について解説します。

インドの地域経済への紅茶産業の貢献

紅茶産業は、インドの地域経済にとって重要な役割を果たしています。特に、アッサムやダージリンなどの主要な紅茶生産地では、紅茶産業が主要な収入源です。

実際に、多くの人々が紅茶生産で生計を立てています。紅茶の栽培から製造、販売に至るまでの全ての過程に多くの人々が関わるので、地域経済の活性化に大きく貢献しています。

アッサム地方でも紅茶の生産は地元の経済活動の中心的存在で、多くの農家が紅茶の栽培に従事してきました。

ダージリン地方では、紅茶産業だけではなく観光産業も発展しているので、紅茶園を訪れる観光客が地域経済にさらなる収入をもたらしています。

観光客は紅茶園の見学やインド紅茶のテイスティングを楽しむだけでなく、地元の宿泊施設や飲食店も利用するため、地域全体の経済が潤っています​。

紅茶産業による雇用創出

紅茶産業は、インド国内で大規模な雇用を生み出しています。茶園での栽培や収穫、製茶工場での加工、さらに販売や輸出業務に至るまで、多くの工程があるためです。

特に、農村部においては紅茶産業が重要な雇用の場となっていて、生活の安定に大きく貢献しています。

紅茶産業に従事する労働者の中には女性も多く、ジェンダー平等の観点からも重要な役割を果たしています。

女性労働者の雇用は家計の収入源としてだけではなく、女性の社会的地位の向上の面でも重要です。

例えば、アッサム地方では、多くの女性が茶葉の摘み取り作業に従事していて、地域社会の中で重要な役割を担っています​。

インドで根強い女性の社会進出問題については、以下の記事で詳しく解説しています。

参照:インド女性の社会進出の現状|女性を苦しめるインドの慣習を解説

インドの紅茶は味だけではなく健康維持にも最適

自宅で紅茶を楽しむ

インドの紅茶には、ダージリンティーやアッサムティー、ニルギリティーといった種類があります。それぞれ独自の特徴を持ち、ストレートティーやチャイ、アイスティーなどさまざまな楽しみ方があります。

インドの紅茶には健康維持に役立つ成分が多く入っているので、日常的に飲むことがおすすめです。インドでは紅茶生産は主要な産業の1つなので、今後も世界的な輸出国としての地位を維持していくでしょう。