インドと聞くとレイプ事件をイメージしてしまう人も少なくありません。インドでは女性や男児へのレイプ事件が後を絶たず、国内外のメディアでたびたび報じられているためです。
なぜインドでレイプ事件が多いのか知っていますか?今回は、インドでレイプ事件が多い原因と過去の事例、そしてインドでレイプ事件に巻き込まれないための5つの対策を解説します。
これからインドを訪れる予定がある女性は、本記事を参考に対策を徹底しましょう。
インドで続くレイプ事件の現状
インドにおけるレイプ事件の現状は、深刻な社会問題としてインド国内だけでなく世界中から注目されています。2020年には、分かっているだけでも28,046人(毎日約80人)がレイプ事件に巻き込まれました。
近年では多数のレイプ事件が国内外のメディアによって取り上げられ、インド=レイプ事件というイメージが定着しています。インドではレイプ事件の報道が増えていますが、依然として報告されない事件が数多く存在しているのが現状です。
2012年にデリーで発生した集団レイプ事件は、インド国内外で大きな衝撃を与え、女性の安全と性的暴力に対する法的な取り組みの改善を求める声が高まりました。この事件を契機に、レイプ罪に対する刑罰を厳罰化するなどの法改正が行われましたが、依然として事件は後を絶ちません。
また、インドでは女性に対する根強い偏見や差別、教育や雇用の機会の不平等など、多くの問題が残っています。社会的、経済的に弱い立場にある女性は、依然としてレイプや暴力などの危険にさらされていることが問題です。
インドでのレイプ事件の現状は、単に法律の改正や政策の導入だけで解決されるものではなく、根絶するためには社会全体での根本的な改革が必要です。
参照:PR TIMES「日本発の国際NGO/Gawain、インドの犯罪多発スラム街のレイプ犯罪を0件に。」
インドで女性へのレイプ事件が多い原因
インドで女性へのレイプ事件が多い原因は、以下の通りです。
- インドは女性差別が深刻になっている
- インドにはレイプを助長する習慣が残っている
- トイレ不足もレイプに関わっている
- 根強く残るカースト制度もレイプを助長している
国際社会の一員として注目を浴びているインドですが、古い習慣が国際化の足かせとなっています。
インドは女性差別が深刻になっている
インド社会における女性差別は、レイプ事件の根深い原因の一つとして指摘されています。教育、雇用、政治参加の面で女性は古くから格差を受けており、生活のためにレイプや暴力に耐えなくてはいけない人が多いためです。
世界経済フォーラム(WEF)の「グローバル・ジェンダー・ギャップ・レポート2017年版」では、インドは144ヵ国中108位でした。経済への参加では139位とさらに下位になっています。
教育水準の低い層に位置する女性が従事できる仕事が少ない点と、女性が安心して利用できる交通やトイレが少ないことが経済参加の順位を下げています。
女性が高等教育や良質な雇用機会に恵まれないことで経済的自立を困難にし、家庭内外でのレイプや暴力にさらされるリスクを高めてしまうことが問題です。
また、女性に対するレイプや暴力を非難する社会的機運が十分に育っておらず、被害者が声を上げにくい環境も問題となっています。インドでは、女性被害者の声よりも力のある男性の声を重視しやすい社会構造になっている点も女性差別を助長しています。
インドにはレイプを助長する習慣が残っている
地方や農村部では、現在でも女性に対するレイプや暴力を容認する習慣や風潮が残っています。以下、女性へのレイプにつながる習慣をまとめました。
- サティ
- ダウリー
サティは、夫に従順な妻が夫の死後に殉死する習慣です。サティは献身的な妻の象徴とされてきましたが、現在では法律で禁止されています。
しかし、このサティの考え方は現在でも残っており、男性優位な家庭では女性が男性からレイプや暴力を受ける原因になっています。
ダウリーは、女性が結婚する際に贈答する習慣です。インドでは一般的な初任給が6250円なのに対して、ダウリーでは25万円〜500万円からそれ以上の額を要求されます。
ダウリーは1961年に廃止されましたが、現在でも地方ではその習慣が残っています。そのため、女児が産まれると故意に殺してしまったりダウリーの価格を抑えるために児童婚を強制したりするのが問題です。
サティやダウリーは女性への暴力が個人的な問題や家庭内の問題と見なされ、外部の介入がしにくい文化を作っています。このような習慣はレイプ犯や暴力を振るう男性が罰を受けずに済む環境を作り出し、犯罪が繰り返される原因となっています。
参照:ジェンダー研究センター「CGSニューズレター 002号」
参照:インド女性の社会進出の現状|女性を苦しめるインドの慣習を解説
トイレ不足もレイプに関わっている
インドの多くの地域では、現在でもトイレ不足が深刻な問題となっています。トイレがないので、女性は家の外でトイレを済ませなくてはいけません。
それを知っているインドの男性は、女性がトイレのために人気のない場所へ行くのを狙ってレイプしようと考えます。夜間や早朝にトイレする際は、ヘビや動物に襲われるリスクもあります。
この問題に対処するため、政府は公共トイレの建設や家庭内トイレの普及を進めていますが、依然として改善が必要な状況です。女性がトイレを使える社会を作ることは、レイプ事件の減少にもつながります。
参照:インドのトイレ事情|インド式トイレの使い方や問題点を解説
根強く残るカースト制度もレイプを助長している
インドのカースト制度には、以下のような階級があります。
- バラモン:カーストの頂点
- クシャトリア:王族や貴族に属する民族
- ヴァイシャ:商人に属する市民階級
- シュードラ:市民階級
- ダリッド:身分階級に属していない
カースト下位の女性は、家庭や社会でレイプや暴力にさらされやすいのが問題です。2020年には、カースト最下層の19歳女性が集団レイプされて死亡する事件が発生しています。
インドでは、報復を恐れて告発できない女性や告発しても認めてもらえない女性も多く、多くの女性はリスクと隣り合わせで生活しています。このようなカースト制度に根ざした差別は、レイプ事件の解決や被害者支援の面で大きな障壁となっているのが現状です。
参照:インドのカースト制度とは?進出・経営への影響や他のメリットについても
インドのレイプ事件の事例
実際にインドで発生したレイプ事件をいくつか紹介します。
- バスの車内でレイプされた23歳の女子大生
- 400人の男にレイプされた16歳少女
- 集団レイプされた8歳女児
どれもインドの社会に大きな影響を与えた事件なので、詳しく解説していきます。
バスの車内でレイプされた23歳の女子大生
2012年、インドのニューデリーのバスで23歳の女子大生が集団レイプを受けました。実行犯はバスの運転手を含む6人で、激しい暴行の末にバスから女性と友人男性を突き落としています。
女子大生は内蔵を激しく損傷し、事件の2週間後に死亡しました。
犯人の内、1人は未成年だったので少年院に収容されて出所していますが、1人は拘置所内で死亡し残りの4人は死刑になっています。この事件をきっかけに、インドではレイプ事件への処罰が強化されています。
参照:東洋経済ONLINE「23歳女子大生「レイプ殺人」の凄惨すぎる犯行」
400人の男にレイプされた16歳少女
インド児童福祉委員会(CWC)は、2021年11月11日にマハラシュトラ州で路上生活を送っていた16歳の少女が400人からレイプされたと公表しました。400人の加害者の中には警察官が2人いたことも分かっています。
少女は13歳当時にレイプされた男性と強制結婚させられ、その父親からもレイプを受けていました。家を飛び出した少女は物乞いをしていましたが、そこで男性3人から売春を強要されます。
参照:中央日報「インドで400人の男が16歳の少女をレイプ…史上最も悲惨な事件」
集団レイプされた8歳女児
2018年1月、当時8歳だった女児が男に睡眠薬を飲まされ、3日間にわたって少なくとも3人の男からレイプされました。数日後、女児は殺害され森で発見されています。
この事件では8人の男性が逮捕されました。この事件が特殊なのは、後に宗教対立に発展したからです。
加害者はヒンドゥー教を信仰し、被害者はイスラム教を信仰していました。そのため、ヒンドゥー教とイスラム教は各地で抗議行動を起こしています。
参照:東洋経済ONLINE「インド8歳児、「集団レイプ」の酷すぎる理由」
インドで女性がレイプ被害に遭わないための5つの対策
インドで女性がレイプ被害に遭わないためには、以下のような対策が必要です。
- 女性は素足を見せない服装をする
- 勧められた飲食物を口にしない
- 夜間は絶対に1人で外出しない
- 格安のホテルを利用しない
- 見知らぬ人の話を信用しない
これからインドを訪れる予定のある女性は、それぞれの対策を参考にしてみてください。
参照:【女性必見】インド旅行はやめたほうがいい?やばい理由と治安情報を解説
女性は脚を見せない服装をする
インドでは、女性が脚を見せるのは不本意な接触やレイプ被害を招く原因となります。したがって、公共の場では足を覆う服装を選択し、注目を避けるようにしましょう。
一番理想なのは、現地の女性と同じ服装をすることです。観光地ではショーツパンツやスカートを履いている観光客もいますが、犯罪リスクが上昇するのでやめたほうが無難です。
上半身は半袖でも問題ありませんが、ボディラインを強調するものやノースリーブのような服装は避けましょう。
勧められた飲食物を口にしない
見知らぬ人から提供される飲食物には注意が必要です。これには、睡眠薬が混入されているリスクがあるためです。
自分で購入したり信頼できる人から提供されたりした飲食物のみを摂取することで、レイプ被害や窃盗から身を守れます。特に夜間のパーティーや集会では、自分の飲み物を常に自分で管理することが重要です。
夜間は絶対に1人で外出しない
夜間の1人歩きは、女性にとってレイプ事件に巻き込まれるリスクが高くなります。友人や家族と一緒に行動することで、安全を確保しましょう。
また、信頼できる交通手段を利用することも重要です。タクシーやライドシェアサービスを利用する際は車両のナンバープレートとドライバー情報を確認し、誰かに行き先や到着予定時刻を伝えておくことが良い対策となります。
格安のホテルを利用しない
インドに滞在中は、安全性を考慮して宿泊先を選ぶことが重要です。格安のホテルや宿泊施設は、安全対策が不十分な上に治安の悪いエリアに滞在する可能性が高くなるためです。
宿泊先を選ぶ際には、セキュリティシステム(24時間体制のフロントデスク、室内の施錠システム)や、以前の宿泊客のレビューを確認して安全を確保できる場所を利用しましょう。
セキュリティが万全なホテルは少し料金が高くなりますが、安全への投資だと思うことが大切です。
見知らぬ人の話を信用しない
新しい場所や慣れない環境では、見知らぬ人との交流が発生することがあります。見知らぬ人からの申し出や誘いに対しては慎重に対応し、自分の直感や判断を信じることが重要です。
必要であれば急いでその場から離れるか、信頼できる人に助けを求めましょう。インドに限らず、外国に滞在中は自分の身は自分で守らなくてはいけません。
インドでレイプ事件が比較的少ない3つの都市
インドでは、治安が悪い都市と比較的安全な都市があります。インドに旅行に行く際は、できるだけ安全な都市を観光するようにしましょう。
インドでも比較的レイプ事件が少ない都市を3選紹介していきます。
カルカッタ(コルカタ)
カルカッタは、西ベンガル州の州都です。かつてはイギリス領インド帝国の首都だったので、当時の建造物が観光客に人気になっています。
特にヴィクトリア記念堂やマザー・テレサ・ハウスが人気です。
カルカッタには多くの観光客が訪れているので、レイプ被害はあまり報告されていません。その代わり、観光客を狙ったスリが多いので、貴重品の管理は徹底しましょう。
参照:インドのカルカッタ(コルカタ)について解説!進出する際に重要な制度を利用しよう
ムンバイ
ムンバイはマハーラーシュトラ州の州都でありインド最大の都市です。経済的、文化的、金融の中心地として知られています。
ムンバイ市だけで2,300万人が住んでいると言われており、大都会という言葉が相応しい場所です。そんなムンバイでは、「暴力の被害にあった女の子を守る」プロジェクトがあり、レイプ被害や暴力から女性を守る活動を行っています。
そのため、ムンバイではレイプだけでなく系犯罪率が他の都市よりも低いのが特徴です。市民を巻き込んで犯罪予防と女性のケアに注力しているので、観光客も安心して滞在できる都市になっています。
参照:インドのムンバイ進出はおすすめ!その理由とムンバイについても解説
チェンナイ
チェンナイはタミルナードゥ州の州都で、インド南東部の海岸沿いに位置します。チェンナイはインド4大都市の1つとして有名で、伝統的な価値観と現代的なライフスタイルが融合しているのが特徴です。
安全に対する意識が比較的高いので、レイプ被害も比較的少なく安全な都市です。その代わり、交通の便が非常に悪く死亡事故が多発しているので、移動の際は注意しましょう。
参照:インドのチェンナイの過ごしやすさや観光スポットを紹介!進出面についても解説
まとめ:インドに渡航する際はレイプに十分注意が必要
インドに渡航する際は、レイプに十分注意しましょう。インドでは男性優位の考えが根付いているので、女性が狙われやすい国です。
夜間の外出を控えてなるべく集団で行動し、信頼できる店以外の飲食物は口にしないようにしましょう。インドに観光に行きたい場合、カルカッタ、ムンバイ、チェンナイはレイプ被害が少ないので比較的安全です。
インドの女性差別はカースト制度や古い習慣の影響があり、すぐに対策できないのが現状です。トイレが少なく、女性が人気のない場所でトイレするのもレイプに怯えながら行っています。
インドは魅力のある建造物や歴史が豊富なので、防犯対策を万全にして楽しんでみてください。